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焼き肉パーティーの始まり!

「ああ、もう準備してくれていたのか。悪かったな、言ってくれればセッティングの準備くらい手伝ったのに」

「全くだな。せっかく早めに来たのにする事が無くなっちまったよ」

 案内した部屋を見るなり、ヴァイトンさんとエーベルバッハさんが苦笑いしながらそんな事を言っている。



 普段使っていないこの広い部屋には、言っていた通りに焼肉パーティーの準備が完璧に出来上がっていた。

 壁面の窓が近い位置に全部で六台の大きなコンロをセットされた焼き台が並んでいる。そのうち四台は大きな鉄板が乗せられ、残りの二台には大きな金串とスタンドが設置されている。あれはあの金串に大きな肉の塊をぶっ刺して丸焼きにするためのセットだ。いいねえ。あの肉の塊に赤ワインソースをぶっかけて焼いたら最高だと思うぞ。

 その焼き台の周りには、立ったまま食べられるように背の高いテーブルがいくつも置かれている。

 そして部屋の中央側にはこれまた大きな横長のテーブルがドドンと並べられていて、そっちには簡単に席を立てるように丸椅子がいくつも並べられている。うん、確かにパッと見ただけでも全員分の椅子が余裕で置いてあるよ。すごい、あんなにたくさんどこに置いてあったんだろうな?

 テーブルの奥側には座り心地の良さそうなソファーとローテーブルも並んでいるので、ゆっくり座りたい人はこっちで寛いでもらえるようになってもいる。

 成る程。焼きながら立ったまま食うもよし、焼いた肉をまとめて持って来てこっちのテーブルでゆっくり座って食べるもよしって事か。

 しかも、中央側のテーブルの焼き台が並んでいるのとは反対側には、俺がいつも使っているような簡易コンロの上に鉄板がセットされたのがこれまたいくつも並べられている。独り占めしたい人はここでも好きに焼いて食べてもらえる仕様になっていたのだ。

 セッティングを任せろって言った意味が分かった。もう完璧だよ。



「ああ、グラスはこれを使ってくれ。お皿とカトラリーはこれな」

 焼き台の横に並んでいたワゴンを押してきたギイが、そう言いながらワゴンに並べてあったグラスや大小のお皿を適当に机の上へ並べていく。

「ああ、手伝います!」

 呆然と見ていたアーケル君達が慌てたように駆け寄って来て、ワゴンからお皿やグラスを運んで配るのを手伝ってくれた。

「で、ワインが欲しい方はこちらから。ビールが欲しい方はこっちから。ちなみにビールと白ワインは冷やすと美味いので、冷えたのもあるぞ。ノンアルコールが欲しい方はこちらをどうぞ」

 普段飲むジュースやお茶は、俺が全部持っていたはずなんだけど、何故かハスフェルが持ってきた大きなワゴンにはジュースが三種類と麦茶らしき薄茶色のドリンクが入った巨大なジュースサーバーが並んでいた。

「ああ、もう氷の在庫が少ないんだよ。ケン、ここにいつもの飲み物用の氷をもう少し作っておいてくれるか」

 笑ったハスフェルの言葉に頷き、差し出された全部で十個の大きなアイスピッチャーに、いつものドリンク用の透明な氷を大量に作っておいた。

 それから氷と水が入った木桶にビールと白ワインが並べられていたので、そこにも追加で氷を大量に作って放り込んでおいたよ。ありがとうな。冷えた地ビールは俺がいただくよ。



「って事で、あとはメインの食材だけだぞ」

 にんまりと笑ったハスフェルの言葉に俺もにんまりと笑って頷き、まずは最初の一つ目のバットをもったいをつけながらゆっくりと取り出した。

「ふふふ、では順番に出しますので、皆様とくとご覧あれ!」

 いつもよりも若干もったいをつけながらゆっくりと岩豚の肉が山盛りになったバットを机の上に取り出して行く。

 もう一つ出すごとに拍手大喝采。

 もちろんタレにつけてある肉や、ハイランドチキンとグラスランドチキンも説明しながら取り出して並べると、これまた拍手大喝采になった。

 野菜も一通り出したんだけど、まあこれはお付き合いって感じの拍手だったよ。お前ら、肉もいいけど野菜も食え。

 更に金串の前で巨大な肉の塊を取り出してハスフェルに渡し、皆が見ている目の前で金串をブッ刺して火をつけたコンロの上にセットまでした。ここでもやっぱり拍手大喝采。

 なんだか面白くなってきたので、ここであの赤ワインソースの入った瓶を取り出して解説してから、表面が焼け始めたお肉にジャバジャバと振りかけてやる。

 香ばしい香りが一気に立ち、大歓声と何故かブーイングが起こる。早く食わせろって事らしい。

 笑って顔を見合わせた俺達は、まずは乾杯のドリンクを用意する。肉の脂がパチパチと爆ぜる音を聞きつつ、ゆっくりとグラスに冷えたビールを注ぐと、またしても起こるブーイングと笑い声。



「ええ、では僭越ながら主催者としてご挨拶をさせていただきま〜〜す。皆様、足元がお悪い中をようこそ狭い我が家へお越しくださいました〜〜」

 わざとらしくゆっくりと喋ると、どっと起こる笑い声と何故かブーイング。

「お肉も野菜もまだまだ大量にありますので、どうぞ遠慮せずに心置きなく食ってください! では、バイゼン最高〜〜〜! 乾杯!」

「乾杯!」

 全員が乾杯の声を上げ、また拍手が沸き起こる。

「では、スタート!」

 俺の号令で、あちこちの焼き台へ皆が駆け寄って行き、早速岩豚の肉を焼き始める賑やかな音が響き始めたのだった。



「じゃあ俺は、ここでゆっくり一人焼肉と洒落込もうじゃあありませんか」

 テーブルの端に座った俺は、目の前に置いてあったコンロに乗せられた鉄板の上へ、自分で取り出した岩豚の肉の盛り合わせと、ハイランドチキンとグラスランドチキンのぶつ切り肉を順番に火をつけた鉄板の上へ並べていったのだった。

 塊肉の周りでは、自分でナイフを取り出したアーケル君達が嬉々としてお肉の焼けたところを削っては赤ワインソースをぶっかけているし、焼き台の周りでは賑やかに取り合いっこをしながらこれまた楽しそうにお肉を焼いている。

 皆、とても良い笑顔ですごく楽しそうだ。

「いいねえ、賑やかで皆とっても楽しそうだね」

 いつの間にかコンロの横に現れたシャムエル様が、楽しそうに肉の取り合いをしている職人さん達やアーケル君達を見て、嬉しそうに頬を膨らませながらしみじみとそう呟く。

「俺も賑やかで嬉しいよ。それでそろそろ最初の肉が焼けるんだけど、どれがいるんだ?」

 笑ってふわふわの尻尾を突っつきながらそう尋ねてやる。

「色々お任せでください! ああ、冷えたビールはここにお願いね!」

 振り返ったシャムエル様はすっかりいつも通りで、一瞬で取り出したお皿とグラスを差し出しつつ高速ステップを踏み始めた。

 当然のようにカリディアが隣へすっ飛んできて、全く同じステップを踏み始める。相変わらずすごい技術だ。

「お見事〜〜〜!」

 笑って拍手をした俺は、カリディアにはいつもの激うま葡萄を一粒だけ渡してやり、シャムエル様のお皿には焼けた岩豚の大きめのお肉をいくつも並べてやった。

「乾杯!」

 いつもの敷布の上へ最初に焼けたお肉と冷えたビールを並べてシルヴァ達にお供えして手を合わせた俺は、シャムエル様とグラスを合わせて改めて乾杯してからのんびりと岩豚焼き肉を楽しんだのだった。

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