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お客さんの到着!

『おおい。そろそろ到着するようだぞ』

 のんびりと厨房でハスフェルと赤ワイン談義に花を咲かせていると、笑ったギイの念話が届いた。

「ああ、もうそんな時間か。それじゃあお出迎えに行くとするか」

「そうだな。じゃあ俺も一緒に行くか」

 スライム達が、一斉に集まって俺の鞄の中へ飛び込んでいく。

 準備の時には出て来ていたクロッシェの事を思い出して、鞄に手を入れてアクアゴールドをそっと撫でてやる。

「クロッシェは、もうここからは出て来ちゃ駄目だぞ」

「はあい、心得てま〜〜す!」

 元気な声が聞こえて、俺はハスフェルと顔を見合わせて笑い合った。

 そのまま二人並んで玄関へ向かう。

「外はかなり寒くなっているみたいだから、マントは羽織っておけよ」

 ボア付きの大きなマントを羽織ったハスフェルにそう言われて、俺も慌てて冬用のボア付きのマントを取り出して羽織った。

 うう、暖かいよ。



 玄関ホールに置いてあった暖房器具はつけっぱなしにしてあったので、ここは部屋と変わらないくらいに暖かい。

 そのまま進み出て玄関の鍵を開けてとりあえず外に出てみる。

 もうほとんど日は暮れていて、西側が少し赤い程度でもうほぼ真っ暗に近い。

 そろそろ来るとは聞いたけど、今現在どこにいるのかは聞いていないもんな。まだアッカー城壁の辺りとかだったら、まだしばらくかかりそうだから、一旦中に戻らないとこっちが凍えちゃうって。

 そんな事を考えつつちょっと伸び上がって周りを見ていると、庭の向こうから白い雪煙がもうもうと上がってこっちへ向かって来ているのが見えた。

「うおお、何だあれ?」

 驚いて玄関横にある柱の段差に飛び乗って高いところから見てみると、雪煙の合間に馬の頭らしい茶色が見えた。

「おお、もしかしてあれが噂の雪の中でも走れる馬車?」

「ああ、来たな。少し下がっておいた方が良いぞ」

 笑ったハスフェルにそう言われて、首を傾げつつも言われた通りに扉の前まで下がる。

 黙って見ていると、ザッカザッカと賑やかな音を立てながら大きな馬車が雪の中を豪快に進み出てくる。

 もう、ここにいても大きな二頭の馬の後ろに大型の馬車が見えたよ。あれならかなりの人数が乗れそうだ。

 しかし、巨大な馬車は止まる事なくこちらへ向かって突っ込んで来る。

「おいおい、危ないぞ」

 何やら嫌な予感がして、ハスフェルの後ろへこっそり隠れる。

 玄関ホールのごく近くまで来た巨大な馬車は、そこで右に急カーブして一気に止まった。

 雪の山が崩れて玄関が一気に雪まみれになる。

 成る程、さっき俺がいた場所が豪快に雪まみれになっていたけど、扉の前は安全地帯だった模様だ。そしてこうやって豪快に止まった事で、周りの雪を崩して乗り降りがしやすいようにしたわけか。

 密かに感心していると、馬車の扉がギシギシと音を立てて開き始める。

「いやあ、なかなか豪快な雪だったなあ」

 開いた扉から、笑ったギルドマスターのヴァイトンさんとエーベルバッハさんが飛び出して来る。

「いらっしゃい。何だかすごい登場の仕方でしたね。それに馬が大きい!」

 からかうようにそう言ってやると、笑ったヴァイトンさんがいつも乗っているよりもはるかに大きな馬の首元を叩いた。

「おう。こいつはギルドで一番大型の馬車だからな。引く馬も大型種だよ。すまんが馬達は厩舎に入らせてやってくれるか」

 玄関から厩舎までは雪除けのひさしがあるので一応雪が積もっていない。屋敷沿いに作られた厩舎への道を、馬車から外した二頭の馬をヴァイトンさんとエーベルバッハさんが当然のように引いて行った。

「お邪魔するよ。厚かましくも大勢で押しかけて来たから、よろしく頼む」

 笑顔のガンスさんの言葉に、俺は笑顔になる。

「寒い雪の中をようこそ。さあ、どうぞ中へ入ってください」

「お邪魔します!」

「厚かましくも押しかけてまいりました!」

「お邪魔します、どうぞよろしく!」

 馬車の中に声をかけると、嬉しそうな返事が聞こえて次々に人が出てくる。数えてみると全部で二十人。なんだ、もっといるのかと思っていたけど案外少なかったよ。

 とにかく中へ入ってもらい、厩舎から戻って来たギルドマスター達と一緒に部屋へ戻ろうとしたところでまた玄関が開いた。

「ああ、ナイスタイミングだな!」

 出かけていたリナさん一家とランドルさんが揃って戻って来たみたいで、一気に賑やかになる。

「お疲れさん。とりあえずもうパーティーの準備は出来ているからこのまま部屋へ行きましょう。挨拶はそっちでね」

 初めて見る顔も多いけど、この大人数と玄関で挨拶するのも何なので、とにかく全員揃ってハスフェル達が用意してくれた部屋へ向かおうとしたら、慌てたようにギルドマスター達がまだ開いていた扉から外へ出ていく。忘れ物かな?

 そう思ってあとをついて行くと玄関前に止めた馬車から大きな木箱を取り出している。

「まあ、タダで押しかけるのも何なので、一応気持ちだけ持って来た。受け取ってくれるか?」

 大きな木箱は全部で十個。下ろす時にガチャガチャと音を立てていたから、中身の予想は簡単についた。

「これってもしかして……?」

 にっこり笑って頷かれたので俺も笑顔で大きく頷き、お礼を言ってから一旦収納しておく。ありがたや、これは早速食事の時に飲ませていただこう。



「ええとかなりの人数になったけど、椅子の数とか足りてる?」

 若干心配になってこっそり前を歩くハスフェルにそう尋ねたんだけど、笑顔でサムズアップされたから大丈夫みたいだ。

「そっちこそ、大人数になったけど仕込みは大丈夫か?」

 笑ったギイにそう聞かれて、俺もドヤ顔でサムズアップしたよ。

「任せろ。全員がお前らくらい食っても大丈夫なくらい肉も野菜もたっぷりと仕込んであるよ」

 俺の答えにハスフェルとギイが揃って吹き出し、何事かと振り返ったお客さん達全員の大注目を集めていたのだった。

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