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午前中の予定は張り切ってダラダラする事!

「それじゃあ行ってきま〜〜す!」

「早めに帰るようにしますからね」

「お留守番の従魔達の事、よろしくお願いします!」

 朝食を食べ終えて少し休憩したところで、立ち上がった草原エルフ三兄弟の元気な言葉に留守番組の俺達も笑顔で頷く。

 結局、ランドルさんとリナさんとアルデアさんもアーケル君達と一緒に街へ行く事にしたらしく、玄関を出たところでそれぞれの騎獣に飛び乗り、オリゴー君とカルン君は、いつものように俺の従魔のオーロラグレイウルフのテンペストとファインを貸してあげたのでそれぞれに乗って、揃って笑顔で手を振ってから雪の中を一気に飛び出していった。

 いつもよりも少し大きくなったテンペストとファインが、先頭を切って張り切って雪を蹴散らしながら駆け出していくのを見送り、俺達は一旦リビングへ戻る。

 今日も見事な快晴なので、どうやら焼肉パーティーの時も雪や吹雪の心配は無いみたいだ。



「さて、それじゃあ休日のお楽しみ。昼からのんびりワインかな?」

 笑ったハスフェルがそう言いながらワインのボトルを取り出して、ギイとシャムエル様は大喜びしている。ええと、シャムエル様は、いつものお勤めに行かなくても良いんでしょうか?

「飲むか?」

 ボトルの栓を軽々と抜いたハスフェルの言葉に、俺は笑って首を振る。

「俺は遠慮しておく。お酒は夕食の時で良いよ」

「そうか?じゃあ、欲しくなったらいつでも言ってくれよな」

 そう言って取り出したワイングラスに並々と注いだハスフェルは、ギイやベリーと乾杯して早速飲み始めた。

「へえ、ベリーもお酒は飲むんだ。飲んでいるのは初めて見たかも」

 驚いてそう呟くと、聞こえたのかベリーがグラスを持ったまま振り返る。

「ああ、そういえばあまりケンの前では飲んでいませんでしたかね。ハスフェルが出してくれるお酒はどれも美味しいですよ」

 すっごく良い笑顔でそう言って笑いながらワインの入ったグラスを掲げる。

「お酒にも、実はマナが多く含まれているんですよね。元の材料は果物や穀物ですし、それを更に時間をかけて熟成するわけですから、マナが多く含まれるのは当然です」

「ああ、確かに言われてみればそうだな。じゃあケンタウロスって自分でお酒も作るの?」

 すると、ワインを飲みかけていたベリーは手を止めて俺を振り返った。

「そうですね。森の葡萄や木の実を使ってワインや果実酒程度は作りますよ。ですがあまり酒精の強いものは流石に作りません。ウイスキーやブランデーなどは外の世界へ出てから初めて飲みましたよ。知識としては知っていても、郷にいれば口にする機会はそうはありませんから、これは貴重な体験になりましたね。こればかりは、外の世界へ出てよかったと思いますよ。さまざまな実体験が得られた事で、私の持つ知識にも厚みが出た気がします」

 嬉しそうにそう言ってワインを飲みながら笑うベリーを見て、何となく納得したよ。

 そりゃあ確かに知識として知っているだけのものと、実体験が伴う知識は絶対に違うと思う。

 貴重な知識の精霊なんだから、ベリーには是非とも実体験を伴う分厚い知識を得てもらいたいよ。

「あはは、じゃあ是非とも色々と体験してもらえるように、俺も頑張っていろんな所へ行っちゃおうかなあ」

 からかうみたいにそう言うと、目を輝かせたベリーが嬉しそうに頷く。

「それは素晴らしいですね。そうですよね。せっかく新しい装備を手に入れたんですから、使わないと勿体ないですからね! 実を言うと、まだ知られていない地下洞窟は他にもありますし、ここの庭の地下のダンジョンも出来れば冬の間にもう少しゆっくりと見てみたいんですよね。落ち着いたらここにも入りましょう!」

 何やら嬉々として怖い事を言い出したベリーを見て、俺は話をそらす為に慌ててニニ達のいる方を振り返った。



「ええと、夕食準備は午後からでいいな。よし、それじゃあそれまで俺は従魔達と張り切ってダラダラする事にしよう」

 リビングの隅に集まって巨大猫団子状態になっている従魔達の中へ、話を戻される前にそう宣言して急いで潜り込んで行く。

「ご主人確保〜〜!」

 しかし俺がいつものようにニニのお腹へ潜り込もうとすると、巨大化したヤミーとティグが張り切ってそう言いながら俺を挟んでくっついてきて行く手を阻む。

「ええ、どうしようかなあ〜〜」

 二匹に挟まれていつもとはちょっと違うもふもふを堪能しながらそう言うと、待ちきれなくなったらしいニニが俺の胸元に頭を突っ込んで飛び込んで来た。

 当然、踏ん張りきれずに仰向けに押し倒される。

「ご主人捕まえた〜〜!」

 まるで初めてこの世界へ来た時にされたみたいに、仰向けになった俺の上へニニが覆い被さるみたいになって俺を腹毛の海へ沈めた。

「わふう! ああ、やっぱりニニの腹毛は最高〜〜!」

 床に転がってもふもふの海に埋もれながら俺が歓喜の叫びを上げると、ハスフェルとギイ、それからシャムエル様とベリーの吹き出す音と笑う声が聞こえた。フランマとカリディアも揃って笑っている。

「成る程。張り切ってダラダラするってのは、ああいう状態を指すわけだな」

 笑ったギイの言葉に、ハスフェルやベリー達がまた吹き出して大笑いしている。

「ええ、良いじゃんか。もふもふは俺の癒しなんだからさあ」

 そう言いながら腕を伸ばしてニニの下顎の辺りを掻いてやると、地響きかと思うくらいの物凄い音のゴロゴロが始まったよ。

 しかも喉を鳴らしすぎているからなのか、ニニの体全体がマッサージ機みたいに小さくブルブルと振動しているぞ。完全に押さえ込まれて、伸し掛かられているおかげで、今の俺は全身マッサージ機ブルブル状態だ。

「あはは、なんかめっちゃ気持ち良い〜〜」

 思わずそう叫ぶとまた全員同時の吹き出す音が聞こえて、俺も何だかおかしくなって一緒になって声を上げて笑った。



「楽しそうで結構な事だな」

「そうだな。まあ本人が幸せなら良いんじゃあないか?」

 呆れたようなハスフェルとギイの声に、俺は聞こえていたけど知らん顔をする。

「良いじゃあありませんか。では、愉快な仲間達に乾杯!」

 笑ったベリーがそう言ってワイングラスを高々と掲げる。

「愉快な仲間達に乾杯!」

 笑ったハスフェルとギイ、それからシャムエル様の声がそれに唱和する。

「愉快な仲間達万歳!」

 ニニの腹毛に埋もれたまま、俺も笑いながらそう言って腕を伸ばしてサムズアップをしてやった。

 一層ニニのゴロゴロが大きくなり、俺は気持ちよく眠りの海へ沈没していったのだった。

 ああ、幸せ……。

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