スライムトランポリンの打ち合わせとのんびり昼寝タイム
「ああ、そうだ。一つ気になったのでちょっといいですか?」
緑茶を飲んでいた俺は、さっきの三人の会話を思い出してそう声をかける。
「おう、何でも言ってくれ」
ヴァイトンさんが驚いたようにそう言ってくれたので、俺は完全に観客状態で見学しているハスフェル達を振り返った。
「ハンプールでスライムトランポリンをした時って、結構な頻度でトラブルが起きていたし、確かチケットはスライムトランポリンに乗る度に回収していたよな?」
「ああ、確かに色々あったなあ」
主に警備を担当してくれていたハスフェルとギイが苦笑いしつつ頷く。
そこから俺達は、ハンプールの収穫祭の時のスライムトランポリンをどんな風にしてやったか、覚えている限りの詳しい説明をした。
「そうか。貴重品や武器の管理の問題があるのか。確かに冒険者達なら普段から武器を持っているし、防具に鋲が打ってあるようなものだってあるからなあ」
「あの時は、冒険者ギルドが持っている保管箱に、冒険者達が持っているギルドカードと連携させて鍵にして武器を預かっていましたよ」
「ああ、それならうちにもあるから提供するよ。確かに日常的に武器を持っている奴なんて冒険者や護衛の連中くらいだからな。ギルドカードと連携させて預かれば、間違いも無かろう」
冒険者ギルドのギルドマスターのガンスさんが納得したようにそう言い、とりあえず問題が一つ片付いた。
「聞く限り、そのハンプールでやったやり方が一番楽な気はするなあ。となると、会場内にチケット売り場を作るか」
商人ギルドのギルドマスターのヴァイトンさんの呟きに、ドワーフギルドのギルドマスターのエーベルバッハさんも考え込みながら頷いている。
「それなら、さっき言ったようにこっちで乗合馬車に乗る際に、運賃と一緒にまずはスライムトランポリンのチケットセットみたいなのを買ってもらって、もしもチケットを使い切っても、まだまだもっと遊びたい人がいれば、会場で追加で買うようにして貰えばいいんじゃあないか?」
「ああ、それが一番混乱がなさそうだな。いいと思うぞ。その辺りはうちの専門スタッフに丸投げしてくれていい」
エーベルバッハさんの言葉にヴァイトンさんがニンマリと笑って請け負ってくれる。
なるほど、商人ギルドには催し物専門のいわばイベンターみたいな人達がいるんだろう。それなら頼りになりそうだ。
「よろしくお願いします。俺達は一切お金には触らないようにしたので、その分スライム達の面倒を見るのに集中出来ましたからね」
「そうだな。その辺りのお金の管理ややり取りはこっちに任せてくれればいい。あとは何がいる?」
真顔のヴァイトンさんの言葉に、俺はハスフェルと顔を見合わせる。
「チケットの準備と、各スライムトランポリンの前に、チケットを回収するスタッフさんを配置していただくくらいかなあ。警備に関しては、ハスフェル達と、冒険者ギルドから強面の冒険者達を回して貰えば解決するような気がするけど……?」
俺の答えにヴァイトンさんが大きく頷く。
「了解だ。貴重な経験談を聞かせてくれて感謝するよ。それじゃ色々と下準備をして早急に連絡するから、一度試しに関係者を集めて一からやってみればいいな。上手くいきそうなら、祭りの後半の数日を使ってやってみるとしよう。さて、昼飯までご馳走になって悪かったな。それじゃあ準備もある事だし戻らせてもらうよ」
「ご馳走様、本当に美味しかったよ」
「ご馳走様、それじゃあ失礼させてもらうとするか」
笑って立ち上がったヴァイトンさんに続き、エーベルバッハさんとガンスさんも立ち上がる。
厩舎まで一緒に行って、馬に乗って笑顔で帰って行く三人を見送ってからリビングへ戻る。
「じゃあもう、今日はこのままお休みにしよう。俺は部屋に戻って従魔達と昼寝するよ」
何だか眠くなって来た俺は、リビングにいる皆にそう言って手を振ると自分の部屋へ戻って行った。
「ニニ〜〜入れてくれ〜〜〜!」
つけっぱなしにしていた和室の炬燵に半分潜り込んでいるニニのお腹の中へ、手早く防具を脱いで身軽になった俺はいそいそと潜り込んでいった。
「うわあ、ニニふかふかになってる……」
胸の辺りに顔を埋めてふわふわの暖かな毛を堪能する。
「寝るならご一緒しますよ!」
今にも寝そうになっている俺を見て、半ば強引にマックスが隣にくっついてきて俺をサンドする。
それを見て、ラパンとコニーをはじめとした従魔達もいつものサイズになって俺の周りに集まってくっつく。
「ふああ、やっぱりお前らといるのが一番幸せ……だよ……」
欠伸をしながらそう呟き、ニニのお腹へ潜り込んで目を閉じる。
静かに鳴らされるニニをはじめとする猫族軍団の喉の音を聞きつつ、俺はあっという間に眠りの海へ沈没していったのだった。
いやあ、相変わらずニニ達の鳴らす喉の音の癒し効果はすごいねえ……。