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ギルドマスター達の悩みと昼食

「それより、これだけ寒いと外での興行はちょっときつそうだなあ」

「確かにそうだな。この時期は、朝は晴れていても途中から天候が急変したりする可能性もあるしなあ」

「だが、天気が良ければ気持ち良いのは確かだぞ」

 とにかく暖かいリビングまで揃って戻った俺達だったけど、部屋に入るなり何やら真剣な様子でギルドマスター達三人が、顔を突き合わせて相談を始めている。



 でもまあ、とりあえず昼食だよ。

「ええと、いつもの揚げ物や肉類中心に、シチューとかスープ、味噌汁なんかのあったかメニューを色々出して好きに食べて貰えばいいか。岩豚のトンカツもまだあるからこれも並べておいてやるか」

 手持ちの作り置きを思い出しつつ、暖まりそうなメニューを中心に色々と出して並べ始める。ハスフェル達は揚げ物とか肉類が欲しいだろうから、もちろんその辺りのガッツリメニューもしっかり出しておくよ。

 俺はご飯が食べたかったので、少し考えておにぎりを色々と取り出して並べ、わかめと豆腐の味噌汁も取り出しておいた。

 それから、これも自分が食べたかったのでだし巻き卵と鶏ハムとおからサラダも出しておく。

 机に並んだ料理を見たランドルさんが、自分の収納袋から香辛料がたっぷりとかかった一口サイズの串焼き肉を大量に取り出して並べてくれたよ。

 良いねえ。あれはまた、ビール泥棒になるメニューだな。



「スライムトランポリンが、興行的には間違いない事が分かったんだから、これをやらない手は無かろう?」

「それは同感だが、地元民ならば天候が少々急変しても慣れているから大丈夫だろうが、観光客はそうはいくまい?」

「確かにそうだな。それに観光客なら寒い中をじっと立っていると場合によっては凍傷の危険もあるし、寒さで凝り固まった体でいきなりあの運動をすると、それこそ怪我の恐れがあるぞ」

「特に運動不足な大人が危険だなあ」

「となると、これはやはり室内でするのが良いのでは?」

「そうなるな。だとしたら問題はどこでするかだなあ」

「ある程度の広さがあり天井までの高さもかなり必要だ。街の中にある冒険者ギルドの建物ではどこも無理だぞ」

「商人ギルドの会議場なら広さは充分にあるが、あそこは天井が低いからなあ」

「無茶を言うな。あんなところでやれば、天井にぶつかって怪我人が続出するぞ」

「だよなあ。となると……」

 無言で考え込んでしまったギルドマスター達を見て苦笑いした俺は、そっと手を伸ばして肩を叩く。

「考え事は後にしてまずは飯にしましょうよ。腹が減っている時に考え事をしても、良い考えは浮かびませんって」

 俺の呼びかけに揃って我に返ったように顔を上げた三人が、笑顔になる。

「確かにその通りだな。何だか申し訳ないなあ。昼飯をたかりに来たみたいだ」

「お気になさらず。食事は大勢で食べた方が美味しいですからね」

 申し訳なさそうなヴァイトンさんの言葉に、俺は笑って机に並べられた料理を示す。

「って事で、お好きにどうぞ。一応ルールがあって、自分の分は自分で準備する事。それからお皿に取ったものは残さず食べる事ですから、ご注意くださいね」

「了解だよ。残すなんてとんでもない」

「了解した。おお、これは美味そうだ」

「了解した。おお、どれを取るか迷うなあ」

 嬉しそうなギルドマスター達の言葉に、俺はにんまりと笑って岩豚のトンカツが山盛りになっている大皿を指差した。

「ちなみに、今度焼肉パーティーをする予定のあの肉を使ったトンカツなんかもありますよ。トンカツなどの揚げ物におすすめはこちらのソースです。二度漬け禁止ですからね」

 俺の言葉に揃って歓喜の雄叫びを上げるギルドマスター達を見て、俺だけじゃあなくてハスフェル達やリナさん達、ランドルさんまでが揃って吹き出し大爆笑になったよ。

「って事で、あとは好きに食ってください! どうぞ!」

 笑って大声でそう言うと、皆が一斉に岩豚のトンカツに殺到する。

 俺は自分用の岩豚のトンカツを速攻で二枚重ねてお箸で掴んでソースの海へドボン。それをお皿に取ってまずはメインを確保しておき、それから自分の好きな物を色々としっかりと確保したよ。

 ランドルさんが出してくれた、香辛料たっぷりのちょっと辛そうな串焼きもしっかりと確保しておく。

「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜〜っじみ! ジャジャン!」

 久々の味見ダンスを両手に持ったお皿を振り回しつつ、もの凄い速さでステップを踏んで踊るシャムエル様。そして即座に隣へすっ飛んで来て、シャムエル様のダンスを完コピして見事なまでに全く同じステップを踏み始めるカリディア。二人は時おり立ち位置を変えたりジャンプしたりしながらご機嫌で踊っている。

 ええと、何だか二人のダンスがより複雑化している気がするんだけど、詳しい変化はダンス音痴の俺にはよく分からないよ。

 最後は見事揃ったキメのポーズだ。

「あはは、お見事お見事。で、どれがいるんだ?」

「岩豚のトンカツは一枚ください! あとはおにぎりとだし巻き卵! お味噌汁はここにお願い! ああ、その串焼きも欲しいです!」

「どれだけ食うんだよ」

 予想通りの答えに苦笑いしつつ、まずは取り出した敷布の上に料理を並べて手を合わせてシルヴァ達に届けてから、言われた通りに岩豚のトンカツを丸ごと一枚と、おにぎりや出し巻き卵を差し出されたダンスをしていた時よりも巨大化したお皿に並べてやる。

「串焼きは一本しか取っていないけど、どうする?」

「そのお肉は一つだけください!」

 味噌汁用のお椀を出しながらの答えに、俺は黙ってお箸の先で串焼きの一番最初の肉を外してトンカツの上に乗せてやった。それから味噌汁を俺のお椀からたっぷりと入れてやり、半分以下になった味噌汁を見ておかわりを取りに行ったよ。

「わあい、ありがとうね。では、いっただっきま〜〜〜〜す!」

 お皿に山盛りになった料理を見て嬉々としてそう叫んだシャムエル様は、早速岩豚のトンカツを両手で引っ掴んで豪快に齧り始めた。

「ああ、カリディアにはこれをどうぞ」

 一緒にダンスをしたカリディアには、大粒の飛び地の激うま葡萄を一粒取り出して渡してやる。

「ありがとうございます。これ、本当に美味しいですよね」

 そう言って両手で葡萄を受け取ったカリディアは、嬉しそうに目を細めて早速葡萄を齧り始める。

 ううん、こっちはいかにもリスって感じだ。

 それに比べてシャムエル様は……。

「相変わらずの肉食リスだな」

 半分近くになった岩豚のトンカツにまだ豪快に齧り付いているシャムエル様を見て小さく笑った俺は、取り出したナイフで自分の分の岩豚のトンカツを切り分け、真ん中の部分をお箸で摘んで口に放り込んだのだった。

 ううん、やっぱり自分で作って言うのもなんだが、岩豚のトンカツは美味しいねえ。

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