追加の武器と防具!
「じゃあ、次はこれだな」
武器職人のアンゼルムさんとホルストさんが、そう言いながら二人がかりで大小の細長い包みを机の上に並べる。
「まず、これがカメレオンビートルの角で作った槍だよ。柄の長さはこれでいいか?」
差し出されたそれは、ヘラクレスオオカブトの剣のように全体にやや黒光りのする穂を持つ長めの槍だ。今持っているミスリルの槍と柄の部分は同じくらいの長さだけど、あれよりも穂の部分は全体に少し長くて大きい。
「おお、良い感じだ。じゃあちょっと振ってみますね」
手渡されたそれを部屋の隅の広い場所へ持って行って軽く左右に振ってみる。それから腕ごと大きく振り回して一気に腰だめに構える。
「何これ、完璧なバランス」
思わずそう呟いて、柄の真ん中辺りを持ってバトンを回すみたいにクルクルと回してみる。完璧な重心と完璧なバランスで全くブレずに回せる。
振り返って無言でサムズアップすると、ホルストさんがドヤ顔になったよ。どうやらこれは、彼の作品だったみたいだ。
穂先に取り付ける革製の鞘もつけてもらい、これもそのまま引き渡してもらった。
次に取り出したのは短剣で、今持っているものとほぼ同じ大きさ。これは翼竜の鉤爪から作られた短剣で、切れ味は相当なものらしい。ううん、これからは普段使っている長剣だけじゃあなくて、片手で持つ短剣の扱いにも慣れておかないとな。
それからキラーマンティスの鎌で作ったナイフと、ディノニクスの鉤爪で作ったやや大きめの二本のナイフも受け取った。これにも見事な細工の鞘が一緒に付いていて、もう見ただけでテンション上がったよ。
よし、これもコレクションに加えておこう。もちろん使うけどね。
「あと、これは注文には無かったんだが、一通りの装備を確認させてもらって、一番怪我をした時に危険なのに、割と剥き出しになりがちな太腿から膝を守るための防具だよ。これもミスリルとオリハルコンの合金だから、薄いが防御力は相当だぞ」
防具担当のギュンターさんが、にっこりと笑って取り出したのは、さっきのミスリルの鎖帷子と同じように見える。
「ええと、これって……ああ、成る程。じゃあこれはズボンの中に履くんですね」
広げてみたそれは、言ってみれば膝下までの半ズボンみたいになっているんだけど、半ズボンと違うのは足の部分以外は完全に左右に分かれていて、お尻から前側の大事な部分は剥き出しになっているみたいだ。
「これとさっきのを一緒に着れば、普段剥き出しになっている体の部分はほぼ完璧に守られるからな。それにその形状ならトイレへ行くのも簡単だから楽で良いぞ」
笑ったギュンターさんの言葉に納得した。
確かにこれは服の下に着る防具なのに、全身一体型のツナギ仕様にしたら、トイレに行けないって。
「ありがとうございます。確かに下半身から太腿の辺りって防具が無いから無防備ですよね。俺、以前地下迷宮でトライロバイトの角に左の太腿のここの所をぶっ刺されて酷い目に遭いましたから」
うんうんと頷きながら、自分の太腿のあの怪我をした箇所を指差しながらそう言うと、職人さん達が揃って驚いたように俺を見た。
「ええ、そこはまずいだろう。大丈夫だったのか? 特に戦闘中の太腿の怪我は洒落にならんぞ」
真顔のエーベルバッハさんの言葉に、職人さんだけじゃなくリナさん一家やランドルさんまで全員揃って真顔になってる。
「ええと、俺達一応上位冒険者なんで、いわゆる最上位の万能薬を常に複数持っているんですよね。その時は、それのおかげで何とかすぐに対処出来たんです」
苦笑いした俺の説明に、あちこちから感心したような声が上がる。
「まあ、その辺りはさすがは上位冒険者ってところだな。お前さん達なら資金も豊富にありそうだしな」
ホルストさんの半ば呆れたような呟きに、俺も苦笑いしつつ大きく頷いたのだった。
「じゃあ、引き渡しはここまでだな。試着してもらった胸当ては、数日もあれば組み立てと微調整も済むからな」
「はい、よろしくお願いします!」
笑顔でそう言って、俺はフュンフさんをはじめ、職人さん達と順番にがっしりと握手を交わしたのだった。