鎖帷子と盾で防御力アップ!
「じゃあ、後はこれだな」
次に笑って取り出されたのは、なんと鎖帷子。良いねえ、これはRPGお約束の装備の一つだね。
だけど、これが驚くくらいにすごく薄くて繊細な細工で、パッと見た感じ全然防具って感じがしない。銀色の薄いニットのハイネックのセーターみたいに見えるくらいだ。
「ええ、すごく薄いんですね」
渡されたそれは予想以上にすごく軽くて驚いていると、ギュンターさんがこれ以上ないくらいの笑顔になった。
「俺の工房の職人総出で作って組み上げたんだぞ。それは預かっていたミスリルとオリハルコンの合金で作った鎖帷子だよ。防御力で言えば俺の知る限り、鎖帷子の中ではこれ以上のものは無いと思うぞ」
軽いシャラシャラと音がするそれを驚きに言葉も無く見た俺は、少し考えてから自分の服を見る。
「ええと、これはこの上に着ればいいんですか?」
ニットとは違って伸縮性は無さそうなので、これだとあまり中には着込まない方が良い気がする。
「それは服の中、つまり下着の上に着るのがおすすめだよ。長さもあるから首や手首、大事な男の急所もしっかり守ってくれるぞ」
ギュンターさんの笑ったその言葉に、俺だけじゃあなくて後ろで聞いていたハスフェル達まで一緒になって吹き出した。
うん、確かにそれは重要だよな。
「じゃあ私は向こうを向いていますね」
笑ったリナさんがそう言って後ろを向いてくれたので、俺も笑ってお礼を言ってから豪快に今着ている服を脱いでいく。
言われた通りにシャツとパンツだけになったところで、改めて渡された鎖帷子に袖を通す。確かに裾の部分は太ももの付け根の辺りまであるので、このままズボンを履けば、言われたみたいに急所もバッチリ守ってくれるよ。
細くなっている首の部分はこのままだと頭が通らないのでどうするのかと思ってよく見ると、何とファスナーみたいに胸元に付いた小さな金具を上下すれば開いたり閉じたりする仕様になっている。これで前側が大きく開いて頭が通るようになっている。
これはマジで驚いたよ。このファスナーの噛み合う小さな部分を一つずつ作ったのなら、それだけでもすごい技術だよ。
「どうだ、窮屈なところがあれば言ってくれ」
真顔のギュンターさんの言葉に頷きしっかりと首元までファスナーを上げた俺は、一番上にある留め具をしっかりと留めてから、さっきと同じように肩や腕を振り回したり、首をゆっくりと回してみたり、武器を構える格好をしたりしてみる。
大丈夫な事を確認してから、さっき着ていた服を鎖帷子の上から元の通りに着てみる。
「ええ、全然窮屈じゃあないし、それどころか着ている感じも殆どしないよ。着た最初はちょっと冷たかったけど、今はもう全然冷たくも無い」
思わず体を叩きながら、驚いてそう呟く。
なんて言うんだろう。体温と同じになると体に馴染んで皮膚の一部になったみたいだ。
「ああ、それなら大丈夫そうだな。じゃあこれはそのまま引き渡すから、もう着ていてくれていいよ」
鎖帷子の入った袋を畳んだギュンターさんの嬉しそうな言葉に、俺はもう満面の笑みになって何度もお礼を言ったよ。
ううん、これで俺の防御力が格段に上がった気がする。よし、ちょっとはこれで安心して地下洞窟でも戦えそうだ。
拍手をしてくれたハスフェル達やリナさん達も、口々に感心している。
聞けば、どうやらここまで繊細なのに丈夫な鎖帷子を作れる人は、本当に珍しいみたいで、相当金属の扱いに長けていないと出来ないらしい。これにはハスフェル達も驚いていたよ。
「じゃあ次は盾だな」
「他に武器もあるぞ」
「確かにまだまだあるな」
満面の笑みのディートヘルムさんとホルストさん、それからアンゼルムさんの言葉に、俺もまた笑顔になる。そうそう、他にも色々とお願いしていたんだよ。
まず渡されたのは、やや小さめの丸い盾。それからいかにもって感じの大きめの盾だ。
あまり重いのは困るなあと思いつつ、まずは小さい方の盾を手にして見て驚いた。軽い。とにかく軽い。
思わず右手で拳を作って軽く表面を叩いてみたけど、当然だけどめっちゃ硬い。やや黒光するそれには円の周囲と縦と横に十字になるように小さな鋲が打ち込まれている。ううん、これまた防御力が上がった気がする。
丸盾の裏側部分には、手首を通す革製の輪っかと、金属製の取っ手みたいな握る部分が付いている。
成る程。これは腕に通してから握って持つ仕様になっているわけか。
「まあ、日常的に持つ必要は無いが、例えば地下洞窟や危険地帯へ行く時などは腕に通した状態で持つようにして、いざとなったらこのままここを握って盾として使うんだよ。扱いには少しだけ慣れが必要だが、是非使ってくれ。特に大量のジェムモンスターと戦う時や、対人戦では大きな防御力になるからな」
「分かりました。頑張って使うようにします」
うんうんと頷きながら、腕に通した状態で持ったり、言われたように軽く振って手元へ降りて来た盾の持ち手を握って構えをしたりしてみる。
「これは良いのを作ってもらったな。後で扱い方は教えてやるから、頑張って訓練してくれ」
笑ったハスフェルの言葉に、俺は振り返って頷いた。
「よろしくお願いします!」
「おう、まかせろ!」
笑ってハイタッチをしてから、改めて振り返る。
「こっちの大楯はまあ、持ってみると分かる通りに丸盾とは違ってそれなりの重さがある。日常的にはほぼ必要無いが、いざって時には絶対に頼りになるんだぞ。まあ、ケンさんは収納の能力持ちだから大丈夫だろう。せっかくだからこれも頑張って扱い慣れてくれよな」
苦笑いするディートヘルムさんの言葉に、俺は真剣な顔で大きく頷いた。
確かにこのサイズの盾を日常的に持ち歩くのはかなり無理そうだけど、収納しておいていざって時だけ取り出して使えばなんとかなりそうだ。
これも完成品なので、持ち手の位置を確認しただけでこのまま引き渡しになった。
ううん、ミスリルとオリハルコンの合金で作った鎖帷子に、この丸盾。これだけでもめっちゃ防御力上がってるよね。
よしよし、今後の俺の安全の為にもこれは是非とも頑張って使いこなしていく事にしよう!