街へ行くぞ!
「さてと、それじゃあ皆は今日は留守番しててくれよな。ニニ、良い子で大人しくしているんだぞ」
スライムとマックス以外の子達は、今日はお城で留守番していてもらう事にする。
聞けば、マックスとシリウスがいればこれくらいの雪なら余裕で走って街まで行けるらしいので、今日の所はそれぞれ連れて行くのは、スライム達以外は自分の乗る騎獣だけだ。
「いってらっしゃ〜〜い!」
ご機嫌な従魔達に見送られて、俺達はそれぞれの従魔に乗って街まで一気に真っ白な雪の中を走って行った。
マックスとシリウスはご機嫌で雪を掻き分けて走り、その後ろをランドルさんの乗るオーロラオーストリッチのビスケットとギイの乗るブラックラプトルのデネブが斜め後ろの位置でさらに雪をかき分けて走る。その後ろをリナさんとアルデアさんとアーケル君の乗るグリーンフォックスのララとビリジアンとコッティーが続き、しんがりをオリゴー君とカルン君の乗る俺の従魔のオーロラグレイウルフのテンペストとファインがついて走って来ている。
最初の頃は、いろんな従魔達に乗っていた二人だけど、雪がガッツリ積もり始めて以降はほぼ狼コンビが二人を乗せる役目を担当している。
まあ、これは彼らにも従魔をテイムしてやればお役御免になるんだろうけどな。
二匹も楽しそうにしているので、俺は別にずっと乗せてやっても構わないんだけどさ。
ちらりと後ろを振り返った俺は、すっかり大所帯になった今の状況を考えて小さく笑った。
「まあ、とは言えいずれは彼らとは別行動する事になるんだろうから、確かに彼らにも従魔が欲しいってのは当然だよな」
今の所はリナさん一家やランドルさんとはずっと一緒に行動しているけど、今後はどうなるかは分からない。恐らくどこかのタイミングで別行動になるだろう。
ちょっと寂しい気もするけど、二度と会えなくなる訳じゃあないよ。ハンプールの早駆け祭りでは絶対に会えるだろうからさ。
ここへ来た時には、人間は俺だけでマックスとニニ、それからシャムエル様だけだったんだよ。
それが今では従魔達だけでもすごい数になったし、神様仲間だけじゃあなくてクーヘンやランドルさんをはじめ人の仲間も大勢出来た。各街には知り合いも何人もいるし、おかえりなさいって言ってくれる街もある。
「家だって買ったんだもんな。考えてみたら以前の自分と比べたらすごい変化だよなあ」
サラリーマン時代のオンボロアパートを思い出して、ちょっと遠い目になった俺だったよ。
雪中行軍を終えてアッカー城壁を越えると貴族の別荘地に入るので、ここからは綺麗に雪かきをしてくれているから一気に道が広くなって楽になる。
俺の乗るマックスを先頭で一列になって進みながら、マックスの背の上からのんびりと周りの建物を眺めて楽しんでいた。
「じゃあ、このままドワーフギルドへ行けばいいな。で、エーベルバッハさんに焼肉パーティにギルドマスター達を招待したいから予定の確認をして欲しいってのを知らせて、それから俺の別注品の出来具合を聞くだな。商人ギルドへも行って、スライムトランポリンの相談もする。っと」
一応本日の予定を頭の中で確認しながら、まずはここから一番近い位置にあるドワーフギルドへ向かう。
「おや、お揃いだな」
「いやあ、それにしてもお前さん達はどこにいても目立つなあ」
考え事をしながらのんびりと一列になって進んでいると、聞き覚えのある声が聞こえて驚いて周りを見回す。
「こっちこっち。おはようさん」
笑った声に振り返ると、屋台がいくつか並んでるところに商人ギルドのギルドマスターのヴァイトンさんと、今から会いに行く予定だったドワーフギルドのギルドマスターのエーベルバッハさん、それから冒険者ギルドのギルドマスターのガンスさんまでがお揃いで、可愛らしいピンク色の屋台の前に並んだテーブルで、揃ってパンケーキを食べている真っ最中だったのだ。
「おはようございます。あれれ、これまた可愛らしいのを食べてますねえ」
止まったマックスの背から降りながら、からかうみたいにそう言ってやる。
何しろ三人の前にあった大きなお皿には、三段になった大きなパンケーキとたっぷりの生クリーム、そしてジャムやチョコがこれまたこぼれんばかりにたっぷりとかけられていたのだ。
シャムエル様が見たら、狂喜乱舞しながら頭から飛び込んで行くのは間違いなさそうなメニューだよな。
『あれ食べたいから、今すぐ注文してください! 今から食べに行きま〜〜〜〜す!』
そんな事を考えた瞬間、突然頭の中に響いたシャムエル様の叫びに俺は堪える間も無く吹き出したよ。
『何しているんだよシャムエル様。お祈りの時間だからって神殿へ帰ったんじゃあなかったのかよ』
『ちゃんとお祈りを見てるよ〜〜でもそろそろ終わるから、もう行っても大丈夫で〜〜す!』
ドヤ顔だと分かるシャムエル様の答えに、どうやら声が聞こえていたらしいハスフェル達と顔を見合わせてもう一回吹き出し、とりあえず俺達もその屋台のパンケーキ屋さんへ向かったのだった。