まずはお試し準備!
「ええ、待ってくれよ。何そのスライムトランポリンって?」
俺達が揃って嬉々として相談を始めたのを見て、オリゴー君とカルン君が揃って不思議そうにしている。
「あはは、さすがにこの噂は、まだここまでは届いていないか」
笑った俺の言葉に、アーケル君がこれ以上ないくらいの笑顔で立ち上がる。
「ねえ、今からちょっとだけ外へ出てやってみませんか? ええと、お前らは寒くても大丈夫か?」
アーケル君の肩の上にいたスライムに、そう尋ねる。
「猛吹雪でも大丈夫だよ〜!」
得意げなその返事に、逆に俺達の方が吹き出す。
「いくらなんでも、そんな猛吹雪の中ではしないって。まあ、このところ夜に降ってる事が多いみたいだから大丈夫だとは思うが、確かにイベント当日が猛吹雪だったら、それはさすがにちょっと無理だよな」
「そうですね。まあその辺りの事は、多分ヴァイトンさん達の方が詳しいでしょうから、スライムトランポリンを提案した際に聞けばいいと思いますね。じゃあ是非ともやってみましょう!」
嬉々としたアーケル君の言葉に、俺達も笑って立ち上がった。
「従魔達も一緒に遊ぶかもな。じゃあ一応全員連れて行くか」
他の皆も、今朝は従魔達を部屋に置いてきていたのでそれぞれの部屋へ戻って従魔達を引き連れて外へ出る。
俺も大急ぎで自分の部屋に戻った。
「ええと、今からスライムトランポリンを外でするから、寒さが平気な子達は一緒に出て来てくれるか」
俺の呼びかけに、マックスを先頭に犬族軍団と猫族軍団が揃って起き上がる。
しかも、ニニが産室から出てくるのを見て俺は慌てて止めた。
いくら運動神経が良いニニであっても、身重な妊婦にスライムトランポリンは絶対に駄目な気がする。
「ええ、私は平気なんだけどなあ」
「いやいや、俺が怖いから、お願いだからニニは部屋に戻って休んでいてくれよ」
苦笑いしながら、モフモフの首に抱きついてやる。
「心配性のご主人。でもいいわ、じゃあ私は留守番役の子達と一緒にここで寝ている事にするわね」
笑ったニニが産室へ戻ると、イグアナコンビとハリネズミのエリーとモモンガのアヴィ、それからファルコ以外のお空部隊の子達がニニの後について産室の中へ入っていった。
「じゃあ、寒がりチームはニニと一緒にあったかくしててくれよな」
暖房器具のジェムを確認した俺は、それ以外の子達を引き連れて部屋を後にした。
「うわあ、また夜の間に降ったみたいで、一面の雪景色になってるじゃんか!」
正面玄関の大きな扉を開けたところで、思わずそう叫ぶ。
正面玄関部分は、大きく張り出した大屋根があって雪が積もらないようになっている。しかも玄関部分は少し高くなっているので、周囲に雪が積もっても大丈夫な仕様になっているんだよな。
契約した時に玄関部分が妙に高くなっているのは、単に偉そうに見えるためかと思っていたんだけど、ちゃんとそうするだけの理由があったわけだね。
この高くなっている玄関のおかげで、雪がどれだけ降っても玄関扉が開かなくなるような事は無い。雪国の工夫、すげえな。
密かに感心しつつ、俺はスライム達が入っている鞄の中に向かって話しかける。
「じゃあ、まずはここの庭にスライムトランポリンが出来るだけの場所を作ってくれるか?」
「はあい、じゃあ雪を押し固めま〜〜す!」
元気な返事が聞こえた直後に、俺の鞄の中からバラけたスライム達がまるで手品の如く流れるように飛び出してくる。それを見て、他の皆が連れているスライム達も一斉に跳ね飛んで集まってきた。
「じゃあ、お庭の雪を固めま〜〜〜す!」
ご機嫌なアクアの掛け声の元、直径2メートルくらいに巨大化したスライム達が、庭に広がって一斉に跳ね飛び始めた。
ポヨンポヨンと跳ね飛ぶたびに地面に降り積もった新雪が圧縮されて凹んでいく。
「おお、これまた新技登場じゃんか。お見事お見事」
笑った俺の言葉に、まだまだスライム達の事を詳しく知らないらしいオリゴー君とカルン君が揃ってポカンと口を開けて放心してるし、それ以外の全員はまさかのスライム達の新技に揃って吹き出し大爆笑になっていたのだった。
「ええ〜〜! スライム達が料理を手伝ってるだけでもびっくりだったのに、なんだよこいつら!」
「しかもケンさんのスライム達だけじゃなくて、全員のスライム達がやってるよ!」
ようやく我に返ったらしい二人の叫びに、これまた笑顔のアーケル君が背後から飛びついて二人の首をがっちりと両手でホールドして、得意げにスライム達の事を説明し始めたよ。何度も歓声を上げる二人を見て、一仕事終えたスライム達が一斉にこっちへ跳ね飛んで来て二人の前に整列する。
俺には分かるよ。あれは全員揃ってドヤ顔になってる。
「うわあ、これはすごい。なあアーケル! 騎獣用の従魔だけじゃあなくて、俺達にもスライムをテイムしてくれよ!」
「だよな。これは絶対に欲しい! 頼むよ!」
「任せろ!」
そしてこちらもドヤ顔になるアーケル君を見て、俺達はまたしても揃って吹き出したのだった。
「さてと、それじゃあスライム達が場所を作ってくれた事だし、とりあえずやってみるか」
ひとしきり笑い合った後、笑い過ぎて出た涙を拭いつつ俺がそう提案する。
「じゃあ、大きいトランポリンを三つくらいと、あとは大小いくつかバラけたのもやってみればいいですよね!」
アーケル君の提案に、俺はまた笑いが止まらない。
全員合わせても十人に満たないこの人数で、そんなにスライムトランポリンを作ってどうするんだよ。って突っ込みをぐっと飲み込む。
まあ、従魔達と一緒に遊ぶならそれくらいは欲しいよな。
準備万端整った庭を見てキラッキラに目を輝かせているリナさんに気付いてもう一回吹き出した俺は、尻尾扇風機状態になってるマックスに両手を広げて抱きついた。
「じゃあ、準備が出来たみたいだから、今から一緒にスライムトランポリンタイムだぞ。よろしくな!」