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おやすみ前の嬉しい話

「ご馳走様でした。いやあ、自分で作っていうのもなんだけど、岩豚のトンカツめちゃめちゃ美味かったな」

 かけらも残さず綺麗に平らげたソースカツ丼が入っていたお椀を置き、お箸も置いた俺は手を合わせてしみじみとそう呟く。

「確かに美味しかったです! ご馳走様でした!」

 満面の笑みのアーケル君の言葉に、全員が一斉に大きく頷きご馳走様の後に拍手喝采になったよ。

「岩豚のお肉は在庫がまだまだ大量にあるから、次からはこれも作り置きメニューに入れておくよ。ちなみにこの岩豚のバラ肉で、今度は角煮を作ってみようと思ってさ」

 また別のお酒の瓶を取り出したハスフェルが、俺の言葉に笑顔で頷く。

「ああ、あれをこの岩豚で作ったら、そりゃあ美味しいのが出来るだろうさ。じゃあ期待しているから、是非とも作ってくれよな」

 角煮と聞いてもピンと来なかったらしいけど、それも美味しいのだと聞いてアーケル君達の目も期待に輝いてるよ。

「でもその前に、もう一回ギルドマスター達を招待して焼肉パーティだな」

「それも是非お願いします!」

 またしても目を輝かせてそう叫ぶアーケル君と拍手喝采になる一同。

「おう、楽しみにしててくれよな! じゃあ、明日街へ行ったらギルドマスター達の予定を聞いておかないとな」

「岩豚をご馳走するんだと言えば、全員、何があろうとも絶対すっ飛んでくるからそっちの心配はしなくていいぞ」

 笑ったハスフェルの言葉に思わず吹き出し、皆で大爆笑になったのだった。

 そりゃあそうだよな。確かに何があろうとも絶対に来ると俺も思うよ。

 その後はまたダラダラと地ビールを飲みながら、リナさんが嬉々として話してくれるリンクスの子供がどれだけ可愛らしいかという話で思い切り盛り上がり、もう俺の頬は話を聞いている間中緩みっぱなしだったよ。

 はあ、子猫が生まれるっていう二ヶ月後が待ち遠しいよ。待っているから早く生まれておいで。

 などと、まるで自分の子供が生まれてくる新米パパみたいな気分になっている俺だったよ。

 でも、ニニの子供だぞ。そんなの俺が可愛く思わないわけがないじゃないか。と、もういっそ途中からは開き直ってひたすらニマニマしながらビールを飲んでいたよ。

 多分、横から見たら絶対変な奴だったと思うけどさ。




「じゃあ、そろそろ眠くなってきたんで、俺はもう休ませてもらうよ」

 懐かしい銀色の缶みたいなドライビールの味がする地ビールを飲み干した俺は、不意に出た大きな欠伸を噛み殺しつつ、そう言ってハスフェル達を見た。

「ああ、確かにもう今日はかなり飲んでいるからな。それじゃあそろそろお開きにするか」

 笑ったハスフェルもそう言って、飲みかけていたストレートのウイスキーをグイッと飲み干した。

 ええ、それ一口で飲んじゃうんだ。割と高くて良いお酒だって言ってなかったか?

 内心で密かに突っ込みつつ、隣で同じく一息に残っていたウイスキーを飲み干すギイ。ううん、あいつらにガバガバ飲まれるお酒が、ちょっとかわいそうな気がしてきたよ。

「確かに、もうかなり飲みましたから、それじゃあ今日はもうお開きですね」

 リナさんまでもが笑いながらそう言って、同じく残っていたグラスのウイスキーをグイッと飲み干している。

 俺がいつもこんな感じで飲み会になった後、今日はもうお開き、って終了宣言をしていたら、いつの間にかハスフェル達だけでなくリナさん一家やランドルさんまでが飲み会の終わりを、お開き、と言うようになってる。

 それ以外にも、いただきますやご馳走様だってそうだし、ジェムモンスターの出現が終わるまで倒したら一面クリアーとかさ。俺がこの世界に持ち込んで定着させた言葉って、もしかしたらこれから先、この世界にずっと残るのかもしれないなあ。なんてのんびりと考えつつ立ち上がった俺は、少し凝り固まってる体を伸ばしてから立ち上がった。

 もう机の上には、俺が飲んでいたグラスも地ビールの空き瓶も残っていない。

 いやあ、相変わらずうちのスライム達は仕事が早いねえ。

 跳ね飛んできたサクラとアクアを撫でてやり、従魔達を引き連れて自分の部屋に戻ったのだった。




「ええと、今まで通りにニニのお腹にもたれても大丈夫か?」

 いつものように大きなベッドにマックスとニニが並んで横になるのを見て、不意に思いついて慌ててベリーを振り返る。

「まあ、臨月の頃にはさすがに遠慮したほうがいいでしょうけれど、今はまだそれほど心配はいりませんよ」

「そうなのか? 本当に大丈夫か?」

 ニニの側へ行って、顔を覗き込みながらそう尋ねる。

「もちろん大丈夫よ。駄目な時にはちゃんと言うから、それからしばらくは、申し訳ないけど他の子達と一緒に寝てもらえるかな?」

 喉を鳴らしながらニニが、申し訳なさそうにそう言って俺の頬をそっと舐める。

「痛いって。そっか、ニニには大丈夫かどうかがちゃんと分かるんだな。じゃあそれまでは遠慮なくいつも通りにさせてもらうよ。その後は、産まれた後もしばらくニニのお腹は子猫達のものだもんな」

 当然そうだろうと思って俺が笑いながらそう言うと、ニニは驚いたみたいに目を瞬いて俺に頬擦りしてきた。

「ええ、子猫達と一緒にくっついて寝るのだとばかり思っていたのに。一緒に寝てくれないの?」

「是非お願いします!」

 ニニの首に抱きついて即答した俺だったよ。

 うああ、子猫と一緒にくっついて寝られるなんて、何その夢の世界!

 ああ、子猫達! お願いだから早く産まれておいで! シャムエル様! それから向こうの世界にいるシルヴァ達! どうぞニニのお産が安産で済むようにお守りください!

 ニニのもふもふな頬毛に顔を埋めて、心の中で神様達に目を閉じて割と真剣にお祈りした俺だったよ。

 ええと、これはお祈りの相手としては間違っていない……よな?

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