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ただいまとおやすみ

「はあ〜〜無事にお城へ到着〜〜〜!」

 街灯のついた貴族達の別荘地を抜けてアッカー城壁を超えた後、真っ暗な中を巨大化したセーブルを先頭にして来た時と同じ雪中行軍で走破した俺達は、ようやく見えてきた白亜の城を前にして揃って安堵のため息を吐いた。

「うう寒い! とにかく早く中へ入ろう!」

 大急ぎで氷みたいに冷え切った手で正面玄関の扉を開いて、雪まみれのままとにかく中へ入る。

 そして玄関横に並べて置いてあった暖房器具のスイッチを即座にオンにしていく。

 これはいわばファンヒーターみたいに暖かい風が吹き出す装置だ。

 まあ、ジェムはそれなりに高級なのを入れる必要がある上に消耗も激しいので、一般家庭ではあまり普及してない贅沢品らしいが、ここのお城にはほぼ全部の部屋に置いてある。なので、当然俺達の部屋にもあるしリビングやキッチンにも置いてあるよ。

 って事で勿体無いから使っていない部屋の分を、廊下や玄関などにも持ってきて配置してある。

 まあ、そのおかげで普通ならとんでもなく底冷えするであろう石造りのこのお城も、室内にいればなんとか普段着で過ごせるくらいにはなってるよ。

 素晴らしき文明の利器、万歳。



 吹き出して来る温風に当たって冷え切った指を温めつつ、鞄から出てきたサクラにとにかくまずは雪でびしょ濡れになった服と足元を綺麗にしてもらう。

 それからマックスやニニをはじめとする従魔達もびしょ濡れになっているので、順番にスライム達に綺麗にしてもらう。

 このお城の玄関が無駄に広いのは何故かと思っていたけど、要するにこういう事なんだよな。

 冬の外出から帰ったらここでひとまず雪を落として濡れた服や靴をなんとかしないと、このまま部屋へ戻ったら廊下がびしょ濡れになるって事なんだよな。

 ちなみ俺達は使っていないけど、玄関から入ってすぐのところに小さな部屋があって、そこはウォークインクローゼットになっているらしい。

 成る程。主人がびしょ濡れで帰ってきたら、ここでとりあえず着替えられるようになっているわけか。



「お疲れさん。ええと、明日はどうする?」

「今日はあんまり店を見て回れなかったから、明日は朝はまあゆっくりして、また街へ行きましょうよ。それで日中はまた買い物したりして、夕食食べてから戻って来れば良いんじゃあないですかね?」

 アーケル君の提案に、俺も笑顔で頷く。

「そうだな。それに出来れば一度、注文している武器や防具の仕上がり具合も聞いてみたいんだよな」

「ああ、確かにそれは気になりますよね。良いんじゃあないですか?」

「ああそうそう。それからギルドマスター達に声を掛けて、近いうちにまた皆で岩豚焼き肉パーティーにしてもいいかもな」

「ええ、また食わせてくれるんですか!」

 俺の提案に目を輝かせた草原エルフ三兄弟が綺麗に揃った声で叫び、リナさんとアルデアさんだけでなく、ランドルさんまでが揃って拍手をしながら目を輝かせている。ハスフェルとギイは、揃って満面の笑みでサムズアップ状態だ。

「あはは、もちろんだよ。まだどれだけ大量の岩豚の肉の在庫がある事か」

 俺が笑ってそう言うと、全員から拍手が起こった。

 皆、どれだけ岩豚食いたいんだよ。

 まあ、確かにあのジューシートロトロな肉は美味かったもんな。あれでトンカツとか角煮とか作ったら、絶対美味いと思うよ。

「じゃあ、明日は午前中のうちに街へ出て、俺達もちょっと行きたいところがあるので一旦解散しましょうか。夕食は、またおすすめの居酒屋があるので案内しますよ」

「そうだな。じゃあ俺はドワーフギルドへ顔を出して、職人さん達の様子を聞いて焼肉パーティーの件も知らせておくよ。今回は冒険者ギルドのガンスさんも誘おうと思ってるから、夕方に冒険者ギルドへ集合で良いんじゃないか」

「ですね、それじゃあそれで行きましょう」

 笑ったアーケル君とサムズアップを交わして一旦解散となり、とりあえず各自の部屋へ戻る。

 もちろん従魔達も全員一緒だ。ちなみに鱗チームはお城の中へ戻った途端に鞄から出て来て、ソッコー暖房器具の前に陣取っていたよ。

 寒い思いさせてごめんよ、明日は留守番しててくれても構わないからな。



「はあ、なんだか疲れた一日だったよ」

 部屋に戻った俺は、和室の段差に腰掛けてまずは剣帯と防具を外して、跳ね飛んできたサクラに全部綺麗にしてもらう。

 そして当然のようにベッドで待ち構えているマックスとニニの間へ潜り込んだ。

「ふああ、このふかふかが最高なんだよな……」

 ニニの腹毛の海に顔を埋めつつ、擦り寄ってくるマックスの大きな頭も撫でてやる。

 俺の背中側には、いつものように巨大化したラパンとコニーが収まり、足元にはカッツェが丸くなってくっついてくる。そして今夜はフラッフィーが一瞬早く俺の腕の中へ収まり、出遅れたタロンは俺の顔の横で丸くなり、いつの間にか戻っていたフランマはベリーや猫族軍団の所へ行ったみたいだ。

 最近では、あっちの方が猫団子の数で言えば多くなっているんだよな。

 もふもふに埋もれて絶対に笑み崩れているであろうベリーを思って、ちょっと笑っちゃった俺だったよ。

「はあ、あったかい……」

 ふかふか尻尾のフラッフィーを抱きしめて目を閉じた俺は、それはもうあっという間に気持ちよく眠りの海へ墜落していったのだった。

 ううん、相変わらずもふもふの癒し効果は抜群だね。

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