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ムービングログと広告宣伝?

「はあ、無事に投票も終わった事だし、あとはどうするかねえ」

 本部の受付を後にした俺達は、時折屋台を冷やかしては気にいったものがあればまとめ買いなどもしつつ、のんびりと大通りを歩いていた。

「だけどそろそろ寒くなってきたぞ。日も暮れてきたし、何処かの店へ入るか?」

 まあ、我慢出来ないってほどではないが、日が傾き始めた途端にまた気温がグッと下がってきた気がする。

 足元は冬用のゴツいブーツを履いているんだけど、それでも足元から寒さが上がってきているんだよな。

 今日はほぼずっと外にいるし、それほど寒さに強くない俺的にはそろそろ限界に近いっす。

「じゃあ、ケンさんが凍えてしまわないうちに目的の店へ行きましょうか」

 笑ったアーケル君が、笑顔でそう言ってムービングログを取り出す。

 まあ、確かにちょっと人通りも減ってきているから、今ならこれを出しても迷惑にはならないみたいだ。

「おお、これに乗っていけるなら有り難いよ。で、何処へ行くんだ?」

「それは行ってのお楽しみですよ」

 自信有り気に胸を張ってそう言われたら、楽しみにしてるって言う以外ないよな。

 まあ、今までだってアーケル君が案内してくれた店にハズレはなかったから、きっと今回もすごい店を紹介してくれるんだろう。

 ちょっとワクワクしながら、俺達は取り出したムービングログに乗ってアーケル君達を先頭にしてゆっくりと進んで行った。



 ちなみに、このムービングログに乗っていると、いつもの従魔達を連れている時みたいに結構な大注目を浴びる。

 特に今の時期は観光客が多いみたいで、あれは何だって声と、周りが嬉々として説明している声も聞こえてくるんだよな。

 中には、あれはどこへ行けば買えるのかなんて言っている人もいるから、もしかして乗っているだけでもそれなりに広告宣伝効果もあるのかもな。

「これって、商人ギルドへ教えてやればいいんだよな。空いているムービングログがあったら、ご用命は商人ギルドまで! ご注文(うけたまわ)ります! って書いたポスターを本体に貼るとか、乗っている人の服とかに描いて定期的に街の中を巡回させてやればいいじゃん。絶対、観光客の中にも欲しがる人とかいると思うんだけどなあ」

「お前、すごい事考えるな。だけど確かにそれは良さそうな考えだな。それなら、丁度この道の先に商人ギルドがあるから、ギルドへ教えてやれ。絶対張り切って巡回すると思うぞ」

「ギルドマスターは、さっき雪像の広場の本部にいたからまだギルドの方へは戻っていないんじゃないか?」

「皆、お前の事は知っているんだから、ギルドマスターへの伝言だと言ってそのまま伝えておけばいいさ。まあ、それを聞いたら間違いなくヴァイトンのところへ誰か走って伝えに行くだろうけどな」

 面白がるようなハスフェルの言葉に、隣でギイも笑って頷いている。

 そうか。この世界では、あんまり広告宣伝とかの概念そのものがないみたいだ。街中で品物の宣伝看板とかもほとんど見かけないもんなあ。

 この中世みたいな石造りの建物が並ぶ立派な街がゴテゴテした広告宣伝の看板だらけになるのは、ちょっと悲しい気もする。

 だけど、建物の繊細でおしゃれな細工や装飾を見ていて思ったよ。

 きっとここのドワーフ達なら、ただ文字を書いただけの無味乾燥な看板じゃあなくて、装飾とか文字そのものにも凝りまくったおしゃれな看板とか絶対作ってくれそうだ。

 何だっけ、アールムーボーのミーシャみたいな感じ。あれ? ちょっと違うな。アールヌーボーのミシャだったっけ?

 うろ覚えなのではっきり名前が思い出せないけど、あんな感じのデザインとかのポスターや看板なら、貼ってあってもこの世界にも合いそうな気がする。

「じゃあ、ついでだし伝えておいてやるか。なあアーケル君、ちょっと商人ギルドへ寄ってもらえるか」

 笑って頷いた俺が前を行くアーケル君にそう声をかける。

「はあい、了解です」

 振り返ったアーケル君がそう言って、手を上げてくれたよ。



「って事なんで、きっと特に祭り期間中は効果があると思うんですよね。ヴァイトンさんに伝えておいてください」

 受付のスタッフさんに、俺達がムービングログに乗っていて見た観光客らしき人達の反応と、俺の広告宣伝の考えを話すと、最初は怪訝そうにしていたスタッフさんの目が輝き始めた。いや、ギラギラし始めたって言った方がいいかも。なんだかめちゃくちゃやる気になったみたいで何度も頷いたスタッフさんが、ものすごい勢いでメモを取り始めた。

「貴重なご意見ありがとうございました! 是非とも活用させていただきます!」

 建物の外まで見送りに来てくれたスタッフさんに見送られて、俺達は商人ギルドを後にしたのだった。

 だけどあのスタッフさん、絶対に見送るついでに、俺達がムービングログに乗っている時の他の人の反応を見ていた。に、千点賭けるよ。



「じゃあ、用事も済んだみたいですからおすすめの店へ行きましょうか。きっと喜んでもらえると思いますよ」

 何やら嬉しそうなアーケル君の言葉に、俺達は期待に胸を膨らませつつ彼らのあとについて進んでいったのだった。

 いや、まさかさあ……このバイゼンまで来て、あんな展開になるなんて誰が思うよ……。

 俺はなんて言うか、もっと地味に平穏に異世界生活を楽しみたかっただけなんだけどなあ……。

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