雪像の人気投票!
「おお、こっちはすごい人出だなあ」
雪像を飾っている広場へ続く道は相当の人が出ているようで、見渡す限り一面の人、人、人。
しかし、ここでも俺達はいつもとは違う意味で大注目だったよ。
そう、従魔達がいないとハスフェル達やリナさん一家のイケメンアンド美人アンド美少年一行様状態になるからだ。
屋台を冷やかしていた時は、ある意味散らばっていたし他の人達も自分が買ったものや屋台に目がいっていたのでそれほどの騒ぎにはならなかったんだけど、ここへ来た途端に大注目を集める事態になってしまった。
「あはは、イケメンオーラすげえなあ」
「ですよねえ。ちょっと離れて歩くことにしましょう」
ランドルさんと二人揃って乾いた笑いをこぼした俺達は、さりげなくハスフェル達から少し離れて知らん顔をして歩き始めた。
でもまあ俺だって一応有名人だからさ。あちこちからハンプールの英雄だとか、魔獣使いなのに今日は誰も連れていないとか、好き勝手に噂する声があちこちから聞こえて、どうにも落ち着かなかったよ。
ランドルさんだって、あちこちからあの大きなカメレオンオーストリッチに乗っていた人だ。とか、彼も早駆け祭りに参加したのよ! 格好良い! なんて噂する声が聞こえて、俺達はお互いの顔を見合っては相手の背中や脇腹を突っつきあって笑い合ったりしていた。
ああ、今ほどランドルさんがいてくれてありがたいと思った日はないよ。平凡万歳! モブ仲間万歳!
すっかり見慣れて気にならなくなっていたけど、ハスフェルもギイもめっちゃ格好良いイケオジだし、リナさん一家は言うに及ばず……。
俺はモブでいいです。そんな、注目の人にはなりたくありません。
若干遠い目になりつつ、ハスフェル達のあとを歩いて行ったのだった。
「へえ、あんなところに大きな掲示板が出来ているぞ。じゃああれが、その人気投票の中間発表なのかな?」
到着した雪像が飾ってある広場は、とにかくものすごい人の出だったよ。もみくちゃになりつつなんとか進んでいくと正面に何やら大きな看板が立てられていて、そこに張り紙がしてあるのに気づいたので先にそっちへ行ってみる。
「うわあ、見て見て、なあ、ほらあそこ!」
予想通りに人気投票の中間発表が張り出されていたんだけど、それを見た俺達は手を取り合って大喜びした。
何しろ、俺達の「チーム愉快な仲間達パート2」と「チーム草原エルフ一家」の両方が、人気投票のベストテン入りしていたのだ。
愉快な仲間達が五位で、草原エルフ一家が四位。ぐぬぬ、負けてるじゃないか!
密かに悔しい思いをしつつ、鞄から投票券を一枚だけ取り出したよ。
「で、この投票券ってどこに入れるんだ?」
思わずそう言って周りを見回すと、チーム名の書かれた看板の横に、何やら大きな賽銭箱みたいな木箱が置かれていた。蓋の部分には鍵がしてある。
「もしかして、これ?」
「ああ、そうだよ。だけど俺達が持っているのを全部入れたら、箱が満杯になるなあ」
「いや、絶対全部は入らないだろう、これ」
もらった大量の投票券を思い出して困っていると、誰かに肩を叩かれて驚いて飛び上がった。
「うわあ、誰! ってああ、ヴァイトンさん、エーベルバッハさんも!」
そこにいたのはギルドマスター二人で、何やら満面の笑みになっている。
「すごいじゃないか。初参加でいきなりベストテン入り! 後半は、人気投票の順位が反映されやすくなるから、もっと票が集まる可能性が高いぞ。是非とも賞を取ってくれよな!」
「そうだぞ。せっかく俺達が教えたんだから、頑張ってもらわないとな」
笑った二人にそう言われて、バシバシと背中を叩かれる。痛いって!
「あはは、まあ人気投票なので今更俺達に出来る事ってありませんけどねえ」
ごまかすように笑いながらも、ちょうど持っていた投票券を見せる。
「俺達が、自分のチームに投票するのはありなんですよね?」
「もちろん、皆やっとるぞ。なんだお前さん達、まさか他の奴らに投票していたのか?」
エーヴェルバッハさんが、呆れたみたいにそう言って投票券を指で弾く。
「いや、初めてなんですけど、色々あってめっちゃ投票券があるんですよね。それで全部入れたら、この箱には入らないなあって話していたところなんです」
俺の言葉に二人がそろって吹き出す。
「それなら本部へどうぞ。大量の投票券の一括投票はそっちで受け付けているからさ」
「多額の寄付や、別注なんかでまとめて投票券をもらうとそっちで投票してもらうんだよ」
成る程、大量の券を持ってる人もいる訳か。それなら安心だな。
苦笑いした俺達は、ヴァイトンさん達に案内してもらい、本部へ言ってそれぞれ持っていた大量の投票券を、それぞれ自分のチームに投票したのだった。
まあ、お互いなんとなく相手のチームにも投票したんだけどね。積み上がった大量の投票券を前に、スタッフさん達は手慣れた様子でさっさと数えて集計していたよ。
その手際の良さは、数えるの慣れてます。いえプロなんです! って感じで、なかなか迫力があったよ。
最終結果がどうなるのか楽しみにしつつ、俺達は雪祭りの本部を後にしたのだった。