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チョコバナナトッピング!

「あはは、何だかものすごい量の投票券をもらっちゃったなあ。よかったのかな?」

 若干後ろめたい気分がして、誤魔化すようにそう言ったんだけど俺以外の全員は当然とばかりに平然としている。

「どうしてだよ。別に悪い事をして得た訳じゃあないんだから、遠慮する必要は無いさ。堂々ともらっておけばいい。それで当然、全部自分のところへ投票だな」

 笑ったハスフェルにそう言われて、苦笑いした俺も無理矢理納得して頷き、気分を変えるように大きく深呼吸をした。

 ちなみに今の俺達は、従魔達はギルドの厩舎へ預けてある。

 投票券は収納しているし、リナさん達やランドルさんも、それぞれ持っている収納袋に大量の投票券をしまっているから、とりあえず手ぶらに近い。



「ああ、ちょっと待ってください! あれは美味しそうだ!」

 慌てたようなアーケル君の叫ぶ声に、何事かと驚いて振り返ると、草原エルフ三兄弟が揃ってとある屋台に突撃していくところだった。

「あれは懐かしのチョコバナナじゃんか。へえ、それなら俺も食べたい!」

 その屋台は、いわゆる棒に突き刺したバナナにチョコレートをコーディングしてあるチョコバナナの店みたいだ。上に振りかけるトッピングが色々あって、見た目もなかなかにカラフルだ。しかも注文を聞いてその通りにトッピングしてくれるらしく、可愛らしいメニューに似合わないマッチョなおっさんが手際よく作ってくれるチョコバナナに、大人も子供も視線は釘付けになっている。

「へえ、確かに美味しそうじゃんか。あ! これはシャムエル様も好きそうだから、どれか一つ買って行ってやるか」

 笑って小さくそう呟き、オリゴー君の後ろに並んだ俺はメニューの書かれた看板を見ながら、トッピングをどれにしようか考えていた。

「よし、俺は酸味のあるクラッシュドライイチゴってのと、オレンジピールにしよう。シャムエル様はどれがいいかねえ。多分あの……」

『クラッシュチョコと胡桃とアーモンドとオレンジピールとクラッシュドライイチゴと栗の甘露煮とドライリンゴと最後の追いキャラメルソースはダブルトッピングでお願いします!』

 唐突に頭の中に響いたシャムエル様の大声に、堪える間も無く吹き出す俺。一応横向いて前に並んでいるオリゴー君には当たらないようにしたぞ。

 誤魔化すように何度か咳払いをしてから、一つため息を吐く。

『今何て言った? 全然覚えられなかったんだけど。ってか、よくあれを一息で言ったな』

 わざとらしくため息を吐きつつトークルーム全開の念話でそう言ってやると、シャムエル様の笑った声が聞こえた。

『だって、何だか美味しそうな気配がしたからさ。だからちょっとだけケンの視界を借りて覗いてみたんだよ。そうしたら、その看板と作っているところがバッチリ見えちゃったからさ。って事で、今のでお願いしま〜す!』

 悪びれる様子もなくそう言われてしまい、諦めのため息を吐いた俺はちょっと遠い目になる。

『だから今なんて言ったの? 俺、全然覚えられないんだけど』

 あれを記憶するなんて俺には無理だ。どう聞いても、あれは某女神のマークのコーヒーショップのカスタマイズの呪文だろう。

『あはは、じゃあケンが注文する時にもう一度ゆっくり言うから、それで注文してください!』

『了解、じゃあそれを復唱すればいいんだな』

『はい、それでよろしくです!』

 絶対に今、満面の笑みでサムズアップしてるだろう。ってツッコミを我慢して、前の三人が作っているのを見ていた。

 うん、シャムエル様に負けず劣らずのすごいのを作っていたぞ。何故だか毎回、外野から歓声と拍手が聞こえているぞ……。



 そして超ゴージャスな三人のオーダーが終わり、俺の順番になる。

「ええと、二つ作って欲しいんですが、まず一つ目はクラッシュドライイチゴとオレンジピールでお願いします」

「はいよ、お待ち〜〜」

 何やら独特の節回しで返事をしたマッチョなおっさんは、手早くバナナをチョコレートコーティングして俺のオーダーを作ってくれた。

「ええと、それで二個目はですね…… ダブルコーティングにクラッシュチョコと、胡桃と、アーモンドと、オレンジピールと、クラッシュドライイチゴと、ドライブルーベリー、クラッシュココナッツ、栗の甘露煮と、ドライリンゴ、スプレーシュガーに、クラッシュクッキー、それから最後の追いキャラメルソースダブルトッピングでお願いします。あの、そっちは差し入れなんで別に包んでください!」

 手早く俺が言った具材を手にして並べていたおっさんが、最後のダブルトッピングでものすごく驚いた顔でこっちを見たもんだから、俺は慌てて首を振りながら言い訳をした。

 しかも今の注文って、最初に聞いたよりも長くなってないか?

 まあ別に誰が食べようが作る側には関係ないんだろうけど、頷いたおっさんは並んだトッピングを見てこれ以上ないくらいの満面の笑みになってサムズアップした。

「はいよ、少々お待ちを〜〜〜!」

 これまた独特の歌うみたいな節回しでそう言ったおっさんは、何やら大きめのバナナを取り出してチョコレートをコーティングして、手をかざした後にもう一回チョコレートコーティングをした。

 今、あのおっさんバナナを凍らせて二回コーティングをしたぞ。へえ、あのおっさんも氷の術者だったんだ。

 なんだか親近感がわいてきて、俺も笑顔になっておっさんが手早く作る超豪華スペシャルチョコバナナを見ていた。

 まあ、最後の二本のキャラメルソースが入ったボトルを左右に持ってものすごい勢いで振りかけ始めたのを見た時には、俺は本気で気が遠くなったよ。どれだけ甘いんだよ……。

 そして周囲からはまたしても拍手喝采が沸き起こっていたんだけどね。


 まあ、これはアレだな。作る事自体が既に一つのパフォーマンスなわけだ。

 そして差し入れだなんて言ったからなのか、なにやらおしゃれな模様の入った薄い紙で綺麗に包んでくれた上にリボンまでかけられてしまい、俺はもう気絶しそうになるのを必死で堪えていたのだった。

 あれ、絶対に女性が渡す相手だと思われているよなあ……。

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