表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1160/2068

今日もミッションコンプリート!

「ありがとうございました! またお越しをお待ちしております!」

 満面の笑みのスタッフ総出で見送られて、俺達は家畜用の道具屋さんを後にした。

「さて、そろそろいい時間になってきたし、昼食はおすすめの店があるんでそこへ行きましょう」

 店を出たアーケル君の言葉に、頷きかけて慌てて手を挙げる。

「悪いけど、それなら先に神殿へお参りに行かせてもらえないかな。ここからなら近いだろう?」

 周りを見回しながらそうお願いする。

 先に俺達だけ食事に行ったら、神殿でずっとお仕事中のシャムエル様は絶対に拗ねていそうだもんな。

「ああ、了解です。それならこっちですね」

 俺がお祭り期間中は熱心にお参りすると言っていたのを覚えてくれているアーケル君は、笑顔で頷き、神殿への道を案内してくれた。

 途中で見つけた新しいパン屋さんへさりげなく立ち寄り、置いてあったタマゴサンドを全種類まとめ買いさせてもらった。

 だって、通りがかりに偶然見つけたお店だったんだけど、雑穀パンやハード系のちょっと変わったパンが色々と並んだ、見るからに店主こだわりのお店って感じがするなかなか好感の持てるお店だったんだよ。

 入ってみたら予想以上で、潰したマヨ玉子がこぼれそうなくらいに入った分厚いタマゴサンドは、もう見るなりシャムエル様の喜ぶ顔が見えたし、それ以外にも、すごく薄切りパンの間に潰したマヨ玉子を全部で五層に塗り重ねたミルフィーユタマゴサンドなんかもあって、これもめっちゃ美味しそうだった。

 ってかあのアイデアはいい、是非今度真似て作ってみよう。

 もちろん、まとめ買い分以外に、ちゃんと差し入れ用のタマゴサンド全種網羅の包みはしっかり用意してある。

「お待たせ」

 店の外で待っていてくれた皆にお礼を言ってそのまま神殿へ向かった。



 到着した創造神様の神殿は、初日ほどの大行列こそ無いが、ひっきりなしに参拝に訪れる人は大勢いたので、それなりに行列が出来ている。

 なので俺は従魔達を皆に預けて一人で神殿へ向かった。せっかくだから皆も一緒に来てくれるって言ってくれたんだけど、今日の俺達は従魔を全員引き連れているから、周りの参拝者さん達の迷惑になるといけないからね。

 って事で、俺の肩と腕に留まっているお空部隊、それからモモンガのアヴィと鞄に入っているハリネズミのエリーとスライム達だけを連れて、俺は一人で神殿へ参拝に向かった。



「おや、今日も来てくださったんですね」

 初日に参拝に来た時にお供え物の受付をしてくれたまだ若い神官様が、俺に気付いて声をかけてくれた。

「いや、普段は全然不信心なんですけど、お祭りの期間中くらいはせめて毎日お参りさせてもらおうかなあ。なんて思いまして」

 誤魔化すみたいにそう言って笑うと、わかりやすくその神官様は笑顔になった。

「それは素晴らしいお考えですね。どうぞ無理のない範囲でお参りください。あなたに創造神様の祝福がありますように」

 笑って小さな石を手にしたその神官様は、俺の頭上でその石を軽く振ってから小さな声でお祈りを唱えてくれた。

 へえ、やっぱりお祈りの言葉とかあるんだ。俺は全然知らないけど。

 密かに感心しつつ、どうしていいのか分からなくてとりあえず大人しく頭を下げておく。

「祝福をありがとうございます」

 なんて言ったらいいのか分からなかったので、何となくそう言ってみたら、その神官様はすごく嬉しそうに笑って一礼してから下がっていった。

 どうやら、今日はもうお供えのチェックはしていないみたいだ。

 なので順番が来たらこっそり花瓶の後ろへタマゴサンドの入った包みを開いて置いておいた。

 当然、瞬時にシャムエル様がすっ飛んでくる。

「お疲れ様、今日もまた別の店のタマゴサンドだよ。めっちゃ美味しそうだったから、きっと喜んでもらえると思います!」

 一応手を合わせてお祈りする振りをしながら、早速一つ目のタマゴサンドを齧り始めたシャムエル様にそう言っておく。

「この! この重なった薄切りのタマゴサンドすっごく美味しい! 何これ〜〜〜! 最高〜〜〜〜!」

 歓喜の雄叫びと共に、ものすごい勢いでミルフィーユタマゴサンドを齧り始めるシャムエル様。

 まあ、それくらい喜んでくれたら、わざわざ持って来た甲斐があるってもんだよ。

「じゃあ、午後からも頑張ってな。俺達は先に城へ戻ってるからさ」

 歓喜のあまりいつもの三倍サイズに膨らんだもふもふ尻尾をこっそりと突っついてから、そう言って笑った俺はそのまま神殿を後にしたのだった。



 しかし、神殿を出ようとしたまさにその時、さっきの神官様が俺を見ていたのでちょっと慌てた。

 も、もしかして、タマゴサンドを置いてきたのを見られたか?

 それはまずい!

 初日にしっかり持って帰れって聞いていたんだから、置いていったのを見てもしも何か言われたら反論出来ない。

 大いに焦ったんだけど、そのまま何事もなかったかのように神殿の奥へ下がるその神官様の後ろ姿を見て、密かに安堵した俺だったよ。

 だって、もしも知らずに俺が置いていったタマゴサンドをあの神官様が勝手に回収でもしようものなら、食事の邪魔をされたシャムエル様の怒りの雷が、あの神官様に落ちてたかも知れないもんな。

 小さく笑って神殿に向かって軽く一礼しておいた。

 そして、今日も参拝という名のタマゴサンド差し入れミッションコンプリートだ。よし!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ