二日酔いの怠惰な休日
「はあ、呑んだ翌朝のお粥って、どうしてこんなに美味しいんだろうなあ……まあ、もうとっくにお昼の時間も過ぎているんだけどさあ」
高級梅干しをほぐしてお粥と一緒に食べ、俺はため息と共にそう呟きながらのんびりとお粥を味わっていた。
痛んだ胃に優しい暖かさ。これに梅干しがプラスされてもう幸せしか感じません。
他の皆も、好きにトッピングしながらお粥を味わっている。
ハスフェルとギイは、肉そぼろを山盛りにしている時点で色々おかしいと思うが、まああいつらのする事だからなあ。それにしても、二日酔いであれだけ食えるってある意味すごいと思うぞ。
苦笑いしつつ、見ただけで胸焼けしそうになる肉そぼろ山盛りのお粥から目を逸らした俺は、貴重な梅干しの種を口に放り込んで転がしつつ、おかわりのお粥をたっぷりとお椀によそったのだった。
用意したタマゴサンドをカケラも残さず綺麗に完食したシャムエル様は、手を振って早々に消えてしまった。
一応、お祭り期間中は出来る限り祭壇にいて、お参りしてくれる皆をずっと眺めているんだって言ってたもんな。
まあこれは神様としての大事なお務めらしいから、しっかり頑張ってもらいましょう。
俺も明日からはまた、ちゃんとお参りしてタマゴサンドを差し入れる予定……です! まあ、予定は未定だって一応言っておこう。大丈夫だ。タマゴサンドの在庫はしっかり確保してある。
食事を終えて後片付けをした俺は、リビングでくつろいでいる皆に手を振りそのまま和室へ戻って、ニニやマックス達と一緒に、その日はもう一日中ごろ寝して怠惰に過ごしたのだった。
「たまにはこんな日があってもいいよな……」
そう呟きながらニニの鼻先に手を伸ばして顔から首の辺りを撫でてやる。
寒くなって以降のもふもふ幸せパラダイスは絶賛冬毛大増毛中で、いつにも増してもふ度がアップしている。
「これって最高に幸せなんだけど……冷静に考えて春が怖いよなあ……」
ニニのこれ以上ないくらいの腹毛の海に埋もれながら、俺は来たる換毛期の事を考えてちょっと遠い目になるのだった。
普通の猫サイズの頃でも、春先のニニの毛の抜けっぷりは半端なかったもんな。
同僚から、長毛種には絶対これだと言われて通販で購入した、なんとかネーターって未来から来たロボットみたいな名前の高級ブラシを思い出していた。あれでニニをブラシすると、軽く野球ボールくらいのサイズの抜け毛が収穫出来たんだっけ。マックスはさらに凄かったもんなあ。
それが、巨大なニニとマックスとカッツェだけでなく、もふもふ冬毛の従魔達がどれだけいるんだって。
あれをブラシするだけでも、絶対一日で終わらないぞ。打者一巡した頃には、最初の子達がまた抜け毛の嵐になっていそうだ。エンドレスブラッシング……。
「そっか、せっかくバイゼンにいるんだから、誰か職人さんを紹介してもらって、冬の抜け毛対策に従魔達用の大きなブラシとかクシなんかを作ってもらってもいいかもな。まあ最悪スライム達に頼めば抜け毛自体はなんとかなるだろうけど、あれは貴重なスキンシップの時間でもあったものなあ」
ブラシをしてやると、次はこっちだと言わんばかりに前でゴロゴロとご機嫌で右に左に転がっていた小さなニニの姿を思い出した俺は、ちょっと笑って今の巨大なニニのもふもふの腹毛に顔を埋めた。
「よし、決めた。アーケル君に聞いてみて、次のミッションは従魔達用のブラッシング用品を探すか作ってもらう事だな。だけど、今は……眠いんだって……」
そんな感じで明日からの予定を考えつつ、ニニとカッツェとタロンの三重奏で響く優しい喉の音を聴きながら目を閉じた俺は、胸元に潜り込んで来てくれたフランマのもふもふな尻尾を撫でさすりつつ、眠りの海へ気持ち良く垂直落下していったのだった。
はあ、時間を気にせずもふもふに埋もれて一日何もせずに怠惰を貪る。
なんと幸せな事よ……。