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ようやくの帰宅と〇〇った話……。

「いやあ、本当にどの料理もお酒も素晴らしかったよ。本当にご馳走様でした!」

 笑顔の店員さん達に見送られて表へ出て来た俺達は、預けているマックス達を引き取りに冒険者ギルドへ向かっていた。

 もうかなり遅い時間だと思うんだけど街にはまだまだそれなりに人が出ていて、居酒屋からは賑やかな乾杯の声も聞こえている。

「ううん、この寒い外を歩いていて居酒屋の暖かそうな明かりを見たら、うっかり吸い込まれそうになるな」

 笑ったハスフェルの言葉に、ギイとランドルさんがものすごい勢いで頷いている。

 いやいや、あれだけ食って飲んだのに、まだどこかの店へ行く気か?

 それに、大丈夫だと思っていたけどやっぱりそれなりに酔っていたみたいで、実を言うと歩きながらちょっと世界が回っている。

「ふああ、何だか眠くなって来たよ」

 深呼吸をするみたいに大きな欠伸をしながらそう言い、ようやく見えて来た冒険者ギルドの建物を見上げた。

「平和でいいよな……春まで、こんな感じで過ごすのかねえ」

 オーダーしていた武器や防具が一通り出来上がったら、一応近くにあるのだという地下洞窟へ行く事になっている……らしい。

 まあ、確かにハスフェル達と出会った最初の頃に、そんな話をした記憶がある。

 だけど、俺にとって地下洞窟って碌な思い出がないんだよなあ。水路に落ちたり、怪我をしたり、野営していてテントに尻尾突っ込まれたりさ!

 まあ確かに、行けば身入りも大きいんだけど、出来れば平穏無事が一番な俺にとっては、地下洞窟って怖さ倍増空間でしかないんだよなあ。

 ぼんやりとそんな事を考えながら中へ入り、スタッフさんに声を掛けて裏にある厩舎へ向かう。



「マックス〜〜〜〜! お待たせ〜〜〜〜!!」

 両手を広げてマックスに飛びつく。

「お帰りなさいご主人!」

 尻尾扇風機状態のマックスが嬉しそうにそう言って、飛びついた俺をぺろぺろと舌先で舐める。

「あはは、くすぐったいって!」

 首に抱きつき笑い転げる。うん、やっぱりかなり酔ってるみたいだ。

 しかし、他の皆も実はかなり酔っ払っていたみたいで、ゲラゲラと笑いながらそれぞれの従魔達に抱きついたりもたれかかったりしている。

 しばし、それぞれの従魔達とのスキンシップを楽しんだ俺達は、街の中では従魔の手綱を引いて歩き、人通りが少なくなる街の外れまで来てから従魔に飛び乗った。



「それじゃあお城へ戻って休むとするか。明日はどうする?」

 まだ街の中なので、ゆっくりとマックスを歩かせつつ、振り返った俺はちょうど隣にいたアーケル君達に話しかけた。

「せっかくだから、もう少し買い物しましょうよ。まだまだオススメの店が一杯ありますから案内しますよ!」

 ドヤ顔で胸を張る草原エルフ三兄弟の言葉に、俺は笑って拍手をした。

「それじゃあ言っていたみたいに、祭りの期間中は俺は何にもしないからさ。食事も含めて案内よろしく!」

「お任せくださ〜〜い! もしも何か探し物とか、欲しい物があれば何でも言ってくださいね! バイゼンの事なら隅から隅まで知ってる俺達が、ばっちり案内しますからね!」

 またしてもドヤ顔になる草原エルフ三兄弟を見て、俺は声を上げて笑って大きく拍手をしたのだった。



「ううん、アッカー城壁が遠いぞ〜〜〜」

 マックスの上で、若干フラフラしながら俺はそう呟き、大きな欠伸をする。

「ご主人、お酒の匂いがしますよ。大丈夫ですか?」

 ゆっくりと歩いているマックスが、ちょっと心配そうに振り返りながらそんな事を言ってる。

「あはは、うん、確かに、ちょっと酔ってるかなあ。お店で出た吟醸酒がね、すっごく美味しかったんだよ。しかもその店、何と和食の懐石料理の店だったんだよ。もう懐かしくてさあ、俺、マジでちょっと泣いたかも」

「それはよかったですね。でも、飲み過ぎは駄目ですよ」

 笑ったマックスの優しい言葉に、俺はまた込み上げてくるものを必死になって飲み込んでいたのだった。

「はあ、眠い……うわあ!」

 途中でうっかり寝落ちしかけてバランスを崩した俺は、咄嗟に悲鳴を上げて手綱に縋りついた。

「ご主人を確保〜〜〜!」

 即座に鞄からスライム達が飛び出して来て、落ちかけていた俺を確保して鞍上まで引き上げてくれた。

「お前は何をしてる。酔っ払って落っこちて、怪我でもしたらどうするんだ」

 呆れたようなハスフェルの言葉に、とりあえず笑って誤魔化しておく。

「あはは、気をつけます」

 だけど割と本気で怖かった俺は、冷や汗をかきつつ大きく深呼吸をして、それからあとはしっかりと踏ん張って背筋を伸ばしていたのだった。

 アッカー城壁を通り越せば、もう建物の敷地内だから遠慮なく思いっきり走らせてやれる。

 スライム達にしっかりと確保してもらった俺は、マックスを思い切り走らせてやった。

 シリウスをはじめとした皆の騎獣達も一斉に走り出し、真っ暗闇の中を俺達は遠慮なく歓声を上げてお城までの駆けっこを楽しんだのだった。



 ちなみにその結果、全員揃って思い切り酔いが回ってしまい、揃って庭先でゲロったのは……まあ笑い話って事にしておこう。

 そして、ゲロったブツを見て、ああ勿体無い! って割と本気で思った自分に、マジで呆れたのは内緒にしておこう。あはは……はあ、美味しい水が美味〜〜〜〜。

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