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歓喜のメイン料理と大吟醸のドワーフ潰し

 次に出てきたのは、どうやらメインの料理らしくお皿が大きい。

 ちょっと期待しつつ置かれたお皿の中身を見て、もう声を上げそうになるのを必死で我慢したよ。

 大きなお皿の真ん中に置かれていたのは、何と西京漬け。

 そう、白味噌を使って作られた味噌床に魚の切り身を漬け込んだ一品だ。しかも鯛っぽい白身の魚で皮がピンク色、かなり肉厚なので相当大きい魚と見た。

 実は西京漬けって、魚料理の中でも俺の大好きな一品なんだよなあ。会社員時代には、たまに百貨店とかまで行ってわざわざ買ったりもしていたくらいだ。

 バイトしていた定食屋の西京漬けは、漬ける味噌床を一から店長が作っていて、これがまたやや甘めでめっちゃ美味かったんだよ。

 しかも普通の焼き魚とほぼ同じ値段で日替わり定食にも出されていたから、実は学生達の間でも密かな人気だったんだよな。

 こっちの世界でもこれが食べられるなんて大感激だよ。冗談抜きで通いそうだ。

 嬉々として食べようとして我に返り、まずは敷布の上にお皿ごと乗せてから手を合わせる。

「これ、俺の大好物なんですよね。こっちでは何て言うのか分かりませんが、俺のいた世界では西京漬けって呼んでいました。ちょっと焦げてる味噌が最高に美味いです。少しですがどうぞ」

 小さくそう呟き、待ち構えていた収めの手が嬉しそうに西京漬けを撫でるのを見ていた。

「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜っじみ! じゃじゃん!」

 久々の味見ダンスを踊っていたシャムエル様には、西京漬の三分の一くらいを切り分けてお皿に乗せてやる。

「ごめん、これで勘弁してくれ! これは俺の大好物なんだよ!」

 何か言われる前に謝っておく。これ半分取られたら、俺は泣くよ。

「あはは、そこまで言われてぶん取るほど食い意地は、張って……ない、よ!」

 なにやら最後はすっごく我慢してくれている気がするけど、見なかった事にしておく。いやマジで。



「では、いただきます!」

 小さく宣言して、端っこの脂の乗った腹側を先にいただく。

「うおお、予想通りにめっちゃ美味い。ああ、これ持ち帰りで売ってくれないかなあ。これなら幾らでも出すのになあ」

 しみじみとそう呟き、もう一口食べる。

 もう感動のあまり、体がプルプルと震えているよ。

 落ち着かせるために一つ深呼吸をしてから、俺は久しぶりの一品を味わっていただいたのだった。



「へえ、変わった魚料理だと思ったが、案外美味いな」

「確かに、これは酒が欲しくなるぞ」

 ハスフェルとギイが顔を見合わせてそう言って笑っている。ちなみに彼らは、この西京漬けはナイフとフォークで食べていたよ。

「それなら、少し早いですがおすすめの吟醸酒を持って来てもらいましょう。これも美味しいのでお楽しみに」

 笑ったアーケル君が、自信有り気にそう言ってスタッフさんに声を掛けると、一礼したその人は、しばらくして陶器製の大きな徳利を持って来てくれた。

 こっちの世界では何て呼ぶのか知らないけど、誰が何と言おうとあれは徳利だよ。

 伏せて置いてあった小さめの盃をひっくり返す。これだと一口で飲めるな。

「大吟醸のドワーフ潰しです。少し酒精がきついので少しづつどうぞ」

 笑顔でそう言って栓を抜くスタッフさん。

 おお、これまたすごい名前のお酒が出てきたよ。それほどお酒に強くない俺は若干ビビりつつ、用意された盃に注いでもらった。

「愉快な仲間達に乾杯!」

 俺の言葉に、皆も笑顔で揃って乾杯した。

 恐る恐る口に含んでみて、これまた大感動。するっと飲めてめちゃめちゃ美味しい。確かに酒精はかなりキツめだけど、別に飲めないってほどじゃあない。

 一杯目をすぐに飲み干し、二杯目を美味しく頂いていて我に返る。

「そうか。これって、この美味しいのが危険なんだな。案外酒精が強いのに美味しくてぐいぐい飲めちゃうから、気がついたらガッツリ酔い潰れてるパターンのやつだ。で、結果として酒豪で知られるドワーフ族でも酔いつぶしてしまう、と。うん、気をつけよう。ああ、すみませんがお水っていただけますか?」

「はい、ただいまお持ちします」

 近くにいたスタッフさんに、水を持って来てもらうようにお願いする。酔い潰れ防止に水も飲んでおこう。こんな美味しい料理があるのに、酔っ払うのは勿体無さすぎるもんな。

 大きな水差しに氷入りで持って来てくれた水も間に飲みつつ、俺は西京漬けと吟醸酒のコンボを思いっきり楽しんだのだった。



 おお、次はガッツリ肉料理が出て来たよ。

 ここまでやや物足りなそうな顔をしていた肉大好きチーム用なんだろう。ちょっとした辞書くらいありそうな、分厚い赤身の熟成肉の網焼きが出てきた。串に刺して炭火焼きしたらしく、それなりにしっかり焼いてくれてある香ばしい香りが何とも美味しそうだ。

 醤油ベースのソースが小皿に用意されているから、これをつけて食べろって事だろう。

 だけど、さすがにこの量の肉を全部食べたら残りが食べられなくなりそうだったので、祭壇にお供えしたあとでこれはガッツリ半分シャムエル様に進呈したよ。

「ふおお〜〜これまためっちゃ美味しい〜〜〜!」

 醤油ソースまみれになりながら、一口サイズに切った赤身肉をシャムエル様は大はしゃぎしながら齧ってたよ。



 次に出て来たのは、いわゆる炊き合わせ。

 野菜や根菜を別々に炊いて味付けしてから彩り良く一皿に盛り合わせた一品だ。

 これはもう本物のプロのお仕事。適当煮物しか作れない俺なんて、到底足元にも及びません。

 これは全部シャムエル様と半分こして美味しくいただいたよ。先にシャムエル様に半分食べてもらって、残りを俺が頂いたよ。

 その次に出て来たのが天ぷらの盛り合わせ!

 いくつかの野菜と一緒に彩り良く盛り付けられたそれを見て、また俺のテンションが上がる。

 海老があるよ! と思ったけど、どうやら手長海老みたいでかなり小さい。って事は川海老だな。

 その横にあったのは、10センチくらいの小さめの魚の天ぷらと、めっちゃ小さな桜海老みたいなのと玉ねぎのかき揚げだった。多分、この桜海老は干物っぽい、

「そうか、バイゼンは海からも大きな川からも遠いから、必然的に肉がメインになって、魚料理は保存が効く味噌漬けとか干物しか無くて、あとは小さな川でも獲れる小魚や川海老がメインになるわけか。なるほどなあ。お刺身が無いはずだ」

 天ぷらも敷物の上に置いて手を合わせてから、感心したみたいにそう呟いた俺だったよ。

 どの天ぷらもかき揚げも、サクサクでめっちゃ美味しかったです! また吟醸酒との相性もバッチリだったよ。

 だけどどれも半分こするのは難しかったので、また先にシャムエル様に食べてもらって、残りを俺が全部美味しくいただきました。

 神様の残り物なら、別に気にならないしね。



 さあ、後は何が出てくるのかな? 

 そろそろ終盤に差し掛かっているであろうメニューを考えて、吟醸酒を飲みながら期待に胸を膨らませて待っている俺だったよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] するっと飲める日本酒は駄目なやつ (美味しいから飲み過ぎる為)
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