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ハスフェルとの手合わせ

「ええ、だけど俺が硬鞭でハスフェルが木剣って……大丈夫か?」

 相手をしてくれるのは嬉しいけど、硬鞭で力一杯打ち込んだら木剣が折れる気がする。

「大丈夫だよ。こういうのはコツがあってな。受けてやるから遠慮せずに打ち込んで来い」

 しかし俺の心配をよそににんまりと笑ったハスフェルはそう言って自信有りげにニンマリと笑う。それをみた俺は、小さく笑って手にしていた硬鞭を構えた。

「へえ、良いのか? それじゃあ遠慮なくいかせてもらうぞ」

「おう、遠慮なく来い!」

「それじゃあ、お願いします!」

 そう言って構えてくれたので、お言葉通りに遠慮なく打ち込みに行った。

 ちなみに、振りかぶった時のしなり具合も反動も良い感じだ。

 しかし俺の全力の打ち込みを軽々と受けたハスフェルの木剣に弾き返されてしまい、情けない悲鳴を上げた俺は勢い余って吹っ飛ばされてしまう。

「げふう!」

 砂場へ仰向けに倒れ込んだ所へ、今度は嬉々としたハスフェルが打ち込んで来たのが見えて、咄嗟に起き上がりながら硬鞭を正面で交差するように構えてそれを受ける。

 鈍い音がして、両手に痺れるほどの衝撃が走った。

 だけど、たわんだ硬鞭が案外衝撃を吸収してくれたみたいで、武器を取り落とすほどではなさそうだ。

 それにしたって、ちょっと軽く打ち合うってレベルじゃ無いぞ。これ!

「どわあ! ちょっと待ってくれってば! なんでいきなりこんな本気の打ち合いになってるんだよ! これって武器の確認だろうが〜〜〜!」

「何を言ってる。やるからには、俺は常に全力だ!」

 目を輝かせたハスフェルの言葉に、吹き出した俺も転がりながら立ち上がって力一杯打ち返した。

「それなら俺も全力でやるもんね〜〜〜!」

 本気の打ち合いとは言っても、命のやり取りをするわけじゃあない。となればここは対人戦闘の経験を積む意味でも全力でお相手願うべきだろう。

 って事で、そこからは本当に本気の打ち合いになった。



 強度の面では絶対に俺が持つ硬鞭の方が上のはずなのに、ハスフェルが持つ木剣はそれを軽々と受けて流す。

 一瞬魔法で何かしているのかとも思ったが、どうやらそうじゃあ無いみたいだ。



「ほう、案外やるなあ」

「そりゃあ、それなりに頑張ってるからな!」

 何度目かの打ち合いの後、いっそのんびりとも取れるハスフェルの呟きに俺は苦笑いしつつもそう叫んで両手をそろえて上段から力一杯叩き込んだ。

「だが脇が甘い!」

 それを受けて大声でそう叫んだハスフェルは、力一杯押し返した直後に横殴りに切り込んできた。

 押し返されて完全に体勢を崩していた俺は、防具の上からがら空きの脇腹に打ち込まれてそのまま横っ飛びに吹っ飛ばされてゴロゴロと転がってしまう。

「げふう!」

 妙に空気が漏れたような悲鳴と共に勢いよく転がった俺は、そのまま砂場に顔から半ばめり込むみたいにして止まった。

「待って待って、口の中ジャリジャリだよ。ちょっとは加減してくれって」

 そう叫んで上体を起こして座り込んだまま咳き込む俺を見て、木剣を下ろしたハスフェルが苦笑いしながら駆け寄って来る。

「あはは、悪い悪い。まさかそこまで綺麗に決まるとは思わなかったよ。だけどこれで一回死んだな」

 笑って木剣でペチペチと頬を叩かれて、大きなため息を吐いた俺は硬鞭を持ったまま両手を上げた。

「はい、確かに一回死んだ〜〜〜!」

 笑って降参するようにそう言って仰向けに倒れて、少し離れたところでまだ打ち合っているランドルさんとギイを見た。

「おお、ランドルさんも頑張ってるじゃん。さすがは上位冒険者だなあ」

 座り込んだまま口の中の砂利をなんとか吐き出そうともごもごしつつ、その後は二人の激しい戦いを横でのんびりと見学していたのだった。



 結局、健闘虚しくランドルさんも最後は俺みたいに横殴りに吹っ飛ばされて顔面から砂にめり込んで終わってたけど、ランドルさんもギイもめっちゃ笑顔だったからどうやら双方納得出来る良い戦いだったみたいだ。

「お見事、さすがは上位冒険者様だな」

 見ていたヴィッテンさんが、もうこれ以上ないくらいの良い笑顔で拍手をしてくれた。

「あはは、最後は一方的に叩きのめされましたけどね。ええとちょっとすみませんが、うがいの出来る水場があったらお借りして良いですかね。砂場に顔面から突っ込んだせいで、口の中まで砂だらけのジャリジャリなんですよ」

 さすがに口の中はスライムに頼むわけにはいかないので、そうお願いして砂場の横にあった水場を借りてランドルさんと並んで口をゆすいで顔を洗った。それからサクラにお願いして服の中に入った砂も全部綺麗にしてもらったよ。



「ええと、それじゃあ素晴らしかったので、おすすめのこれをいただきます!」

 すっかり綺麗になったところで一旦店へ戻り、俺とランドルさんはそれぞれの硬鞭を買う事にしたよ。

 それ以外にも、それぞれもう一つづつやや短めの硬鞭も見繕ってもらって一緒に購入する事にした。

「ううん、自分で武器を一から選んで購入したのって、考えてみたら初めてかも。そういえばオーダーしてる武器や防具の出来も気になるので、一度ギルドで聞いてみても良いかも。防具は試着とかするって言ってたからなあ」

 まとめて支払い手続きをしてもらっている間に、俺はのんびりとそんな事を考えていたのだった。

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