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武器探しの開始!

「それじゃあまずは、一番のおすすめの所からですね」

 アーケル君の得意げな言葉に頷き、俺達はそれぞれのムービングログに乗ってアーケル君を先頭にして列になってゆっくりと人の流れに沿って進んで行ったのだった。



 そして到着したのは、冒険者ギルドに程近い通りだった。

「うわあ、すごい。どこも店中に武器や防具があふれてるぞ」

 道沿いに並んでいる店を見て思わずそう叫ぶ。どこの店も店先に武器や防具をいくつも見えるように並べていて、見ているだけでも一日中過ごせそうだ。

 きっと、ここにオンハルトの爺さんがいたら、どれが良いのか詳しく解説してくれただろうな。

「この通りに、出来合いの武器や防具を探すなら絶対ここって言われている店があるんですよ。ちょっとマニアックな装備なんかの在庫も豊富だし、俺は見たことが無いけど、きっとここならお探しの硬鞭だってあると思うんですよね」

 おお、なんだか知らないけどいきなり在庫が有りそうな店へ連れてきてくれたぞ。さすがはバイゼンに詳しいって言うだけの事はあるね。

 密かに感心しつつ、とにかくアーケル君おすすめの店へ向かった。

 そこは店頭に様々な武器と防具を装備した全身コーディネート(?)の木製の人形を展示していて、店内の左右の壁一面には様々な武器がフックに取り付けて飾られている。そして突き当たり奥のカウンターの後ろは全面に渡って横長の大きな引き出しになっているので、武器の在庫はあそこに収められていると見た。

「いらっしゃい」

 無愛想なドワーフの爺さんが一人、カウンターの奥で何かの作業をしていたらしく、手を止めて、団体で店に入って着た俺達をチラッと見て、それだけ言ってまた作業に戻ってしまった。

 ううん、接客する気まるで無し。まあ、愛想笑いでべったり張り付かれるよりは良いけどね。

「気にしないでください。話をするとすごい人なんですけど、人見知りが激しくてね」

 申し訳なさそうなアーケル君の言葉に、思わず吹き出したよ。

 接客商売で人見知りは色々と大変そうだ。かなり立派で大きな店なんだから、接客用の人を雇えば良いのにねえ。

「今、人を雇えば良いと思ったでしょう?」

 にんまりと笑ったアーケル君の言葉に、まさにそう思っていたので素直に頷く。

「だってそうだろう? あの爺さんが製作をしてるのなら、接客は誰かを雇えば済むと思うんだけどなあ」

 どう考えてもそう思うんだけど、アーケル君は苦笑いして首を振った。

「あの人がここの店主でヴィッテンベルクさん通称ヴィッテンさん。彼は研ぎ職人で、ここに並んでいる武器や防具は、全てバイゼンの職人達の作品です。ね、つまりここへ来れば、バイゼン中の主だった職人達が作る武器や防具をほぼ見る事が出来るってわけですよ」

「うわあ、そりゃあまたすげえな」

「バイゼンにいて、ヴィッテンさんと取引していない職人は見習いかモグリだなんて言われるくらいですからねえ。ケンさんのように、自分に合わせて個別に注文するのは、やはりそれなりのお値段になりますから、やっぱり店に並んでいる武器や防具を選ぶ人も多いんですよ。でもまあこれは気に入ってるから、俺はもう剣はいらないですけどね」

 そう言って、腰に装着しているヘラクレスオオカブトの剣を軽く叩く。

「確かにそれは良い剣だよな。だけど予備の剣は幾つあっても良いわけだし、俺も良さそうなのがあれば何か剣も買ってみようかな」

 店内を見回し、とにかく武器が展示してある壁面へ向かう。

「ご覧のとおり、とにかく武器や防具の種類が豊富なんです。買う方にとってはありがたいんですけど、これら全てに対応出来る人なんて、いくらバイゼンでも、どれだけいると思います?」

 苦笑いしたアーケル君にそう言われて納得した。さすがにこれだけの武器や防具を全て網羅して、お客の個別の相談にまで乗れる人……まあそうはいないだろうな。



 ちなみに、一口に武器と言っても様々な種類があり、一応種類別に分けて展示してあるみたいだ。

 ハスフェルとギイは反対側の防具が展示してある方へ行ったし、リナさんとアルデアさんも武器コーナーの短剣のところへ行って真剣に見ているし、カルン君とオリゴー君は、杖の並んだコーナーに張り付いている。

 俺とランドルさんは、キョロキョロと壁面を順番に見て周り、硬鞭が並んでいないか必死になって探した。

「ないみたいだなあ。鞭は色々あるんだけどな」

「そうですねえ。やっぱりありませんねえ」

 アーケル君も一緒になって探してくれたんだけど、やっぱり硬鞭は見当たらない。

「何だ、何か探しもんか?」

 俺達以外にも数人が店に入って来ていて、ああだこうだと好きに武器や防具の感想を大声で言い合っている人達がいたんだけど、そっちには爺さんは無反応だ。

 だけど俺達が小さな声で無い無いって話していた声は聞こえていたみたいで、いきなり話しかけてきた。

 ええ、人見知りはどこへいったんだ?

 大声で話していた人達も、驚いたみたいにこっちを見ている。



 立ち上がった爺さんがカウンターから出てきたのを見て、ランドルさんが持っていた収納袋からあの硬鞭を取り出して見せた。

「硬鞭を探しているんですが、ここでは取り扱いはありませんか?」

「ほう、これはかなり使い込んでおるなあ。だが少々軋みが出ておるなあ。良ければ油を差して磨いてやるぞ」

「是非お願いします!」

 ランドルさんの持つ硬鞭を見るなり、爺さんは苦笑いしながらそう言いランドルさんの硬鞭を受け取った。

「在庫はあるが、これは今ではあまり使う奴がおらんので展示はしておらんのだよ。ちょっと待っててくれ。奥から在庫を持ってきてやる」

 カウンターに置いてあった木製のトレーにランドルさんから預かった硬鞭を置いたヴィッテンさんは、ぶっきらぼうにそれだけ言うとさっさとカウンターの奥へ行ってしまった。

 店番は! って脳内で突っ込んだらヴィッテンさんと入れ違いに奥から小柄な子供が一人出てきた。

 店内へ向かって一礼すると、カウンターの前まで進み出てそこに立った。

 どう見てもまだ子供のドワーフみたいだけど、見ていると店にいた人達が目を輝かせてその子供に話しかけ始めた。

「彼はリガルド君、ヴィッテンさんのお孫さんです。まだ子供なんですけど彼の研ぎの腕もそりゃあすごいんですよ。武器への造詣も深くて、彼に相談すれば間違いなく自分に合った武器が買えるって評判ですね。だけどまだ防具は勉強中らしくて、そっちは時々、まだ分からないからそれは爺さんに相談してくれって断られるらしいですね。だけどそれでも、すごい知識量なんだとか」

 嬉々として解説してくれるアーケル君の言葉を聞いて、俺はひたすら感心していたのだった。

 やっぱり、すごい街にはすごい専門の職人さんがたくさんいるもんなんだなあ、ってね。

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