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シャムエル様への差し入れと加護の話

「それじゃあ、留守番よろしくな」

 冒険者ギルドで手続きをして厩舎にマックス達を預けた俺達は、ムービングログに乗ってアーケル君の案内でバイゼンの街へ出て行った。

「ああ、ちょっと待ってくれよ。良さそうな店発見」

 途中の道沿いに良さそうなパン屋さんを見つけたので立ち寄ってもらって色々買い込み、シャムエル様への差し入れのタマゴサンドをまとめて包んでもらう。これはもうこっそり物陰に置いて来る作戦だ。

 それから甘党のアーケル君達にお願いして、彼らおすすめのお菓子屋さんを教えてもらって焼き菓子をまとめて購入。ちなみに、生クリームやチョコレートなどのカットしたケーキが色々あったので、これもまとめて買っておく事にした。お祭り限定の真っ白なクリームとホワイトチョコの雪だるまが乗った四角いケーキは、収めの手が突然現れて御指名だったのであるだけ買わせていただきました。

 分かった、後でまとめてお供えするからもうちょっと待っててくれ。

 この店はハスフェル達が買った店とはまた違うらしいし、こういう綺麗にデコレーションしたプロの作るケーキは俺は作れないから、お店で買うに限るよな。

 お祭り限定のケーキやお菓子も色々あるみたいなので、せっかくだから探してみてもいいかも。



「よし、それじゃあまずは神殿へ行って、それからお店巡りだな」

 そう言って神殿へ向かおうとする俺をアーケル君達は不思議そうに見ている。

「ええ、昨日参ったでしょう? また行くんですか?」

「え? 行かないの?」

 逆に驚いて聞き返すと、アーケル君達だけでなくリナさんやアルデアさん、ランドルさんも苦笑いして俺を見ている。

『ええ、来てくれないの〜〜〜?』

 シャムエル様のこの世の終わりみたいな悲しそうな声が頭の中に突然聞こえて、俺はもうちょっとで吹き出すところだったよ。

「ええと、創造神様にはちょっとした縁があってさ。普段はまあ然程熱心に信心してるって訳じゃあないんだけど、このお祭りの時期くらいはせっかくだから真面目に参拝しておこうと思ってさ」

「ええ、創造神様とのちょっとした縁?」

 興味津々って感じに聞かれてしまい、マジで困ってしまう。

 まさか、創造神様と一緒に旅をしてるんです! なんて言えるわけもない。

『それなら、私からの加護をもらってるって言えばいいよ!』

 頭の中に聞こえた得意気なその言葉に思わず無言になる。

『それ、言っても問題無い?』

 超珍しい加護だったりすると、逆に怪しまれたりしないか?

 若干警戒しながらそう尋ねると、シャムエル様の呆れたようなため息が聞こえた。

『もう、本当にケンは尽くし甲斐のない子だねえ。私達がどれだけ君に加護をあげてると思ってるんだい? 大丈夫だよ。普通の人にはそんなの見えたりしないから』

 逆に言うと、見えるとまずい事とかあるのかよ! って声には出さずに突っ込んでおき、小さく笑った俺はアーケル君達を振り返った。

「加護をね、頂いてるからさ」



「ええ、創造神様直々の加護なんですか!」



 驚くリナさん一家とランドルさんの声が綺麗に揃う。

 幸い、ちょうど裏路地に入った辺りだったので、それほど周りに人がいなくて助かったよ。だけどまあ、周りにいた人達はほぼ全員振り返ってたけどさ。

「あれ、そんなに驚くような事か?」

 オンハルトの爺さんだって加護持ちだって言ってたから、加護持ち自体はそんなに驚くほど珍しいとは思ってなかったんだけど、そうじゃあないのかな?

 その辺りの一般常識がまだいまいち理解しきれていない俺は、首を傾げつつハスフェル達を振り返って視線で助けを求めた。

「ああ、俺も創造神様からの加護を頂いてるよ。だけど、正直言って闘神の加護の方が俺には有り難いなあ」

「俺も頂いてるけど、ハスフェルと同意見だな。確かに創造神様の加護ってあんまり実感が無いんだよなあ」

 苦笑いしたハスフェルとギイが、揃ってそんな事を言い出したよ。

『待って待って! そもそも創造神様の加護ってどんな効果があるんだよ。頼むから俺を置いて話を進めないでくれって!』

 焦って念話で突っ込むと、笑ったハスフェルが首を振った。

『運が良くなる。これに尽きる。ただし、早駆け祭りの時に与えたみたいな期間限定の強い加護と違って、普段はまあはっきり言って大した効果の実感は無いよ。そうだな。いざって時の運が良くなる程度だ』

『ほうほう、だけどそれって、いざって時にめっちゃ頼れる加護じゃね?』

『そうだよ。だから創造神様の加護なのさ』

 笑った答えに何となく納得した。

『成る程ねえ。だけどまあ、それなら毎日参拝に行く理由になるよな』

『そうだな。加護を理由に強引に参ればいいさ。参拝自体はそれほど時間がかかるわけでなし、いいんじゃないか』

『だよな。じゃあそれでいくよ』

 苦笑いした俺は、とりあえずそういう事にしてリナさん一家とランドルさんを振り返った。

「ええと、どうしますか? 別に参拝自体は強制するようなものじゃあないから、俺だけ行ってきます。どこか途中の店で待っててくれたら、ささっと行ってお参りしてくるからさ」

 一応気を遣ってそう言ったんだけど、結局全員一緒に来てくれる事になった。なんだか申し訳ない。



 何でも、他の神様の加護持ちはたまにいるみたいでそれほど珍しくは無いらしいんだけど、創造神様の加護はあまり効果が実感出来ないからなのか、加護持ちだと言う人自体が少ないんだって。

『ええ、他の皆と変わらないくらいには、それなりの人数に加護を与えてるんだけどなあ』

 納得出来ないとばかりにぶつぶつ言ってるシャムエル様の声に、俺は小さく笑った。

『なあ、それって俺達みたいに冒険者なんかをしてたら、運不運って結構重要だったりするから分かるだろうけど、普通に街の中で穏やかに生活してたら、加護があっても気付かれてないってパターンはないか?』

 そもそもちょっと運が良くなる程度なら、わあいラッキー! で済まされてる気がする。



『ええ〜〜〜! そんな事って……あ、有るかも……』



 ガーンって擬音が聞こえてきそうなシャムエル様のショックの叫びが聞こえて、また吹き出しそうになって揃って誤魔化すみたいにして咳き込んだ俺達だったよ。

 何と言うか、加護まで大雑把だったみたいです。

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