突然の宣言!
「マックスお待たせ〜〜! さあ、帰るぞ」
フクシアさんとファータさん姉妹と別れた後、何やら言いたげなハスフェル達の視線に気づかないふりをして、しばらくのんびりと街歩きを楽しんでからようやく冒険者ギルドへ到着した。
マックス達は、一塊になってすっかり寛いでいたみたいだったんだけど、俺達が帰ってきた途端に全員揃って一瞬で飛び起きて、そりゃあもう大歓迎してくれたよ。
「わかったわかった。嬉しいのは分かったからちょっと落ち着け! ステ〜〜〜イ!」
大興奮状態で飛び掛かってきたマックスに豪快に押し倒された俺は、マックスの涎まみれになりつつ必死になってそう叫んだ。
俺のステイの叫び声を聞いて、慌てて後ろに下がって良い子座りになるマックス。
しかし、尻尾は完全に扇風機状態だ。寝藁が飛び散ってなんだか大変な事になってるよ。
「はあ、全くお前は……以前と違って体が大きくなってるって事を忘れないでくれよな」
苦笑いしながら、マックスの大きな顔に抱きついてやり、むくむくの毛並みを思う存分楽しんだよ。
皆もそれぞれ自分の従魔達と思いっきり戯れていたよ。
それから俺達はそれぞれの従魔に乗って、ひとまずお城へ帰って行ったのだった。
「それで、明日からはどうする?」
すっかり暗くなった中を街灯に照らされた道をのんびりと進みながら、ふと思いついて皆にそう聞いてみる。
俺は毎日屋台三昧でも楽しいし嬉しいんだけど、ハスフェル達やリナさんファミリーそれにランドルさんの意見も聞いておかないとな。
それに、雪まつりのある市街地と俺達が住んでるお城まではかなりの距離があるんだよな。
まあ、マックス達に乗っていけば全然気にならないくらいの距離なんだけど、あの人の多さを考えるとまたギルドの厩舎で留守番してもらわなければならないだろう。せっかく一緒に出掛けているのにそれはそれでなんだか寂しい気もする。
「ううん、まあ、だけどせっかくですから日中は投票券集めを兼ねて屋台巡りをしたり買い物をしたりして、夕方はどこかで食べてから戻ってくればいいんじゃあないですかね?」
「居酒屋も色々ありますから、おすすめの店を案内しますよ」
「そうそう、こんな時くらいケンさんもゆっくりしてくださいよ」
笑ったアーケル君達が、何やら嬉しい事を言ってくれる。
「ああ、確かにそれも良いなあ。この時期しか来ない屋台なんかもあるから、それを回るのもいいんじゃないか?」
ハスフェル達も、笑いながらそんな事を言ってくれる。
「いいのか? 俺は楽でいいけどさあ」
「じゃあ決定だな。ああ、それと俺は悪いが、明日からしばらくメンバーから外れるけど気にしないでくれ」
突然のオンハルトの爺さんの言葉に、俺は慌ててマックスを止めて振り返った。
「ええ、それって……」
まさか、突然だけど帰っちゃうのか?
そう考えた途端に割と本気で涙が出そうになって、慌てて鼻を啜って誤魔化したよ。
そんな俺の様子をオンハルトの爺さんは優しい目で見て、それからゆっくり首を振った。
「バイゼンから南へ街道を下ったところにあるウォルスの街へ、俺の古い知り合いが来ているらしくてな。ちょっと久し振りなんでゆっくり会って来ようと思っとるんだよ。だがまあ、春までには戻って来るさ。春の早駆け祭りには出なければならんからな。その時は一緒に行くぞ」
笑ってそう言うのを聞き、なんとなく納得した。
俺の右肩では、シャムエル様も真剣な顔でうんうんと頷いている。
恐らくだけど、本当にウォルスの街へ行くんじゃなくて、シルヴァ達のいる、いわゆる神様の世界へ戻るのだろう。
何しろ、オンハルトの爺さんは鍛治と装飾の神様で、それなのに前回の早駆け祭りからずっと一緒にいてくれてるんだから、もしかしたら神様としての仕事とかが山ほど溜まっているのかもしれない。
そう考えたらなんだか申し訳なくなってきた。
「そんな顔をするな。大丈夫だよ。ちゃんと戻ってくるから心配するな」
笑ったオンハルトの爺さんにそう言われて、俺は何とか笑って頷いて見せた。
多分、ちゃんと笑えてたと思う。
それからオンハルトの爺さんは、ランドルさんと何やら顔を寄せて相談して、笑って手を叩き合ったりしてたから、きっと次回の早駆け祭りも一緒に参加するって話をしてたんだと思う。
うん、ちゃんと戻って来てくれるって神様ご本人が言ってるんだから、ここは信じて待つべきだよな。
見えてきた俺には分不相応なほどの大きなお城を見ながら、せっかくだからシルヴァ達にもここのお城を見て泊まって欲しいなあ、なんて考えていたのだった。