ラッキー続きな俺!
「はいよ、毎度あり〜〜!」
満面の笑みのおっさんがお皿に山盛りになった肉団子を渡してくれた。
一回金を払って、全部で三回分のくじを引いて、出た数字の合計の肉団子をもらえるくじ引きタイプの肉団子屋さんらしい。ちなみにこれはシンプル塩味らしく、そのまま摘むとお酒のアテに最高なんだってさ。何それ素晴らしい。是非ともやらせていただきます!
他にくじ引きが見つからなかったので、せっかくだからとその肉団子屋のくじ引きをやってみたら、なんと大当たりを引いたらしい。
それで俺が取り出して渡した大きなお皿に、おっさんが山盛りの肉団子を入れてくれたわけだ。
「なんだか悪いな」
これって思いっきり大赤字じゃあないんだろうか。受け取ったはいいけどちょっと申し訳なくなってそう言うと、そのおっさんはニンマリと笑って首を振った。
「そりゃあ兄さんの分だけを考えたら大赤字だけどよう。兄さんのおかげで、ほら、あんなにくじ引き待ちの行列が出来てるんだよ。だから全体で見れば俺様は大儲けって訳だよ」
言われて振り返れば、俺が持っている山盛りの肉団子を見て、我も我もと店の前に人が並び始めているのだ。
そりゃあ目の前でこれだけの大当たりが出たら、自分だって当ててやる! って考えて並びたくなるのが真理ってもんだろうからな。
「なるほど。それなら遠慮なくいただいていくよ。ありがとうな」
「あいよ〜! 言っとくけどそれは俺の愛しい奥さんが丹精込めて作ってくれた肉団子なんだからな。粗末にしたら許さんぞ〜!」
「あはは、もちろんありがたく全部美味しくいただきますって。何しろうちは大食漢揃いなもんでね。こういう肉類はいくらあっても足りないんだよ!」
お皿ごと一瞬で収納した俺が笑いながらそう言うと、おっさんは驚いたみたいに目を瞬いてからいきなり笑い出した。
「おお、すげえ。兄さん収納の能力持ちかよ。羨ましい限りだなあ。じゃあまあ、俺んとこの自慢の肉団子をたらふくその大食漢どもに食わせてやってくれよな〜〜! でももう大当たりは勘弁してくれよな!」
最後の一言に、少し離れて聞いていたハスフェル達まで大笑いになり、皆で次のお客の相手をし始めたおっさんに手を振ってからまた歩き出した。
うう、ここにもリア充がいたよ。
その後も、ジュースを買えばおまけだと言って割れたクッキーを幾つも貰うし、お好み焼きみたいなのを見つけてお願いしたら、試作だと言って分厚いモダン焼もどきまでもらってしまう展開に、もう途中から何だか申し訳なくなってきたよ。ちなみに、屋台で何か買うたびに人気投票用の券をもらっているので、その投票券だけでもかなりの枚数になってるよ。よし、全部自分達のところに入れてやる。
「いやあ、なんだか今日はケンさんはおまけをもらう日、みたいですねえ」
最後には、ランドルさんに笑いながらからかい半分でそんな事まで言われてしまい、俺はもう笑って誤魔化し続けていたよ。
しかし、基本的に小心者なもんで、普段慣れないラッキーがあまりに続くと、後で悪い事が起きるんじゃないかとビビっちゃうんだよなあ。あはは……。
「だから創造神の祝福なんだから、そんな揺り返しがある訳ないだろうが。せっかくの滅多にない機会なんだから、素直に楽しめ」
若干ビビってる俺を見て呆れたハスフェルにそう言われてしまい、もう乾いた笑いをこぼす俺だったよ。
「うわあ、昨日以上に雪像が増えてるなあ。こりゃあ凄い」
そんな感じでようやく到着した、俺達が雪像を飾った広場には、他にも昨日よりも更に大勢の人たちが雪像を作って参加していて、なかなかに豪華なことになっていた。
とにかく、大小様々なドラゴン、ドラゴン、ドラゴン。見渡す限りドラゴンだらけだ。
もちろん他の雪像を作ってる人も大勢いるんだけど、基本的に一番多いのがドラゴンだ。そしてその次に多いのは、恐らく作りやすいからだろう、犬や猫、馬や鳥などの動物。それからいろんな建物。
真っ白なそれらの中に時折色がついていたりして、それはそれでとても綺麗だ。もう俺達も皆笑顔で、どの雪像の出来が良いとか、あのドラゴンはそっくりだとか言って、完全に観客気分で見て回ったよ。
それぞれの雪像の前にある、参加チームの名前が書かれた看板には郵便ポストみたいな箱が設置されていて、そこに投票券を入れる仕組みみたいだ。
俺はとりあえず手持ちの投票券を綺麗に半分に分けて、俺のところとリナさんのところに投票した。見ると、ハスフェル達やリナさん一家やランドルさんも、同じように半分に分けて自分達と俺達のところに投票していたよ。
最後に顔を見合わせてにっこりと笑い合い、最後の一枚を投票したのだった。
ううん、これってお祭りが終わるまで毎日屋台巡りしてもらった投票券を全部自分達の所へ投票したら、合計するとかなりの数になるんじゃあないかねえ? 思いっきり身内投票でそんな事して良いのだろうか?
若干良心が咎めて周りを見ていると、すごい分厚い束になった投票券を一箇所にぶっ込んでる人が何人もいて安心したね。
よし、じゃあ俺達も明日からも遠慮なく投票させてもらおう!
明日からも屋台巡りができる大義名分を得た俺は、小さく笑って自分の作ったマックスとニニの雪像をそっと撫でてたのだった。