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従魔達とムービングログの出番

「うわあ、予想以上のすごい人出だぞ。マックス達を連れたままで大丈夫かなあ」

 マックスに乗って早足で進んで到着した街の道路は、早朝にも関わらず大勢の人達でごった返していた。

 明らかに観光客とわかる人達だけでなく、街の人達や職人さん達も大勢出て来ているので、本当にものすごい人混みだ。

「ううん、確かにこれはちょっと不味いな。じゃあ冒険者ギルドへ行って従魔達を預けてくるか。宿の厩舎は別料金にはなるが宿泊しなくても使わせてもらえるからな」

 ギイの声に俺も頷く。ギルドの宿泊施設にある厩舎はかなり広いので、マックス達でも余裕があるから、預けるなら確かにあそこだろう。

「確かにそれが良さそうだな」

 顔を見合わせた俺達は、そのまま人であふれているメインストリートを避けて、バイゼンの街を知り尽くしているアーケル君達の案内で裏路地伝いに移動して、何とか冒険者ギルドへ到着する事が出来た。とはいえ、朝食の時間にはやや遅めの時間になっちゃったんだけど、これはまあ仕方がなかろう。



「おはようございます」

 受付にいた若い男性スタッフさんが、俺達に気付いて笑顔で対応してくれた。

「おはようございます。ええと、すごい人出なので、危険かと思いまして従魔達を厩舎に預けておきたくて来たんですけど、厩舎って空いていますか?」

 全員分の従魔だとそれなりの数になる。急にお願いして大丈夫か心配だったんだけど、スタッフさんはにっこり笑って後ろにいた別のスタッフさんに素早く指示を出した。

 ギルドカードを渡して口座からの支払い手続きをしてもらい、別のスタッフさんの案内で厩舎へ皆を連れて行く。

「ああ、ここって泊まっていた間に使わせてもらってたところだな。よかったな。ここならゆっくり出来るぞ」

 お願いして敷き藁をもう少し追加してもらい、それぞれの従魔達を中へ入れていく。

「これでよしっと。それじゃあ、迎えに来るまでここでゆっくり待っててくれよな」

 マックスの大きな首に抱きつき、何度も撫でてやってから手を離す。ファルコも知らない人が見たら怖がりそうなので、ここで一緒に留守番していてもらう事にしたよ。

「確かに、あの人出では体の大きな私達は怖がられるでしょうし邪魔でしょうね。ではお留守番していますので、楽しんできてくださいね」

 少し寂しそうにしつつも、マックス達はそう言って見送ってくれたよ。

 だけど、出て行く時に振り返ったら、すぐに皆で集まって団子になってめっちゃ寛ぎモードになっていたから、まあこれはこれでよかったのかもな。



「はあ、すっかり遅くなっちゃったけど、それじゃあまずは朝食だな」

 ギルドを出たところで立ち止まった俺は、大きく伸びをしながらそう言ってハスフェルを見上げた。

「おう、ちょっと広場まで距離があるから歩かなきゃならないけどな」

 苦笑いするハスフェルの言葉に、歩き出した俺は思わず足を止める。

「おう、どうした。いきなり止まるんじゃないよ」

 すぐ後ろにいたギイの文句を聞きつつ無言で周りを見回す。

 確かに人出は多いが、皆ゆっくりと歩いているのでこれなら恐らく大丈夫だろう。

「なあ、今こそこれの出番じゃね? お前らも買ったんだろう?」

 そう言って、スライム達が入ってくれている背中の鞄を下ろして、俺は満面の笑みでムービングログを取り出して見せた。

「ああ、それなら土産用に買ったのをリナさん達やランドルに貸せば、皆で移動出来るなあ」

 ハスフェルも笑顔で自分のムービングログを取り出しながら頷く。

「それなら大丈夫です!」

 何故かアーケル君が嬉々としてそう言うと、いきなり収納袋からムービングログを取り出したのだ。

 それだけじゃなく、リナさん一家とランドルさんまでが全員揃って同じくそれぞれにムービングログを取り出したもんだから、俺達は揃って吹き出したよ。

「ええ、いつの間に買ったんですか?」

 驚く俺に、ランドルさんが取り出したムービングログを撫でながら満面の笑みで振り返った。

「ケンさんから話を聞いて、俺達もすぐにお願いしたんですよ」

「それで昨日が引き取りの予定日だったんです」

「無事に全員分のムービングログを引き取って来ましたよ!」

 しかしランドルさんが答えるより早く、草原エルフ三兄弟が口々にそう言ってムービングログに飛び乗る。

「確かにこれならスピードもゆっくりで良いし、人ごみの中でも広い視界が保てる。俺達的には最高の乗り物ですよ!」

 まあ、確かに背が低い彼らならこの人ごみの中に埋もれてしまうだろうから、ムービングログに乗って視界が高くなると見晴らしもいいだろうし、安全度も増すだろう。

「いいねえ、それじゃあここからはこれで移動だな」

 笑って全員ムービングログに飛び乗り、何となく俺達とランドルさんチームと、リナさん一家の二手に別れて移動を開始したのだった。

 まあ注目度で言えば従魔達に乗ってる時とどっこいどっこいだっただろうけど、場所の専有率って意味ではこっちの方がはるかに小さくコンパクトに済んでいたと思うよ。まあ、もうこれ以上ないくらいの大注目だったけどね。あはは……。



「はあ、ようやく広場に到着だ〜〜〜! 腹減ったよお」

 ムービングログのハンドルにもたれかかって思わずそう呟く。

 ちなみに、いつもなら操作板の上にシャムエル様がいるんだけど、今日は一日神殿の祭壇にいて参拝してくれる人達を眺めて過ごすらしく、お城を出てすぐにいなくなっちゃったんだよな。

 まあ自分の誕生日を祝いに来てくれるんだもんな。そりゃあせめて座っているくらいはするか。

 それぞれムービングログを収納袋に片付けた俺達は、まずは朝食を食べる為に各自屋台へ突撃して行ったのだった。

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