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早起きした朝

 ぺしぺしぺし……。

 ぺしぺしぺし……。

 ふみふみふみ……。

 ふみふみふみ……。

 ふみふみふみ……。

 カリカリカリ……。

 カリカリカリ……。

 つんつんつん……。

 チクチクチク……。

 ショリショリショリ……。

 ふんふんふんふん!

 ふんふんふんふん!

 ふんふんふんふん!

「うん……今朝は起きるぞ」

 若干寝ぼけているが、何とかそう言って起き上がった俺は大きな欠伸をしながら伸びをした。



「ふええ! ケンがこんなに簡単に起きるなんて、どうしたの? せっかくの私の誕生日を祝うお祭り初日なのに、何か起こったらどうしてくれるんだよ! ほら寝て!」

 何やら理不尽な事を言ってるシャムエル様が、慌てたように右肩にワープしてきて俺の頬をぐいぐいと押して無理矢理横にならせようとしている。

「そうよそうよ!」

「私達の仕事を取らないで下さいってば!」

「まだ起きちゃ駄目ですって! ほら幸せ二度寝タイムですよ〜〜〜!」

 シャムエル様だけじゃなく、今日の最終モーニングコールチームのお空部隊の面々が集まって来て、妙に楽しそうにそんな事を言ってる。

「ええ、起こされたから起きただけなのに、そんな事言われるのはちょっと酷いと思うんだけどなあ」

「あはは、確かにそうだね。でもやっぱりびっくりするよ、一体どうしたっていうのさ?」

「どうしたって? そりゃあ今シャムエル様が言った通りさ。今日はシャムエル様の誕生日でお祭りの初日だろう?」

「うん、そうだよ」

「だからだよ。朝飯食ったらそのまま街へ行って、神殿で蝋燭捧げたらそのあとは屋台巡りだよ。そりゃあ楽しみだから早起きもするって」

「なんだ。私のお祝いの為に早起きしてくれたのかと思ってちょっと密かに感動していたのに〜〜! ケンの目的は屋台巡りだったか!」

 笑いながら、今度はぺしぺしと俺の頬を叩く。

「いや、一応神殿への参拝予定も入ってるって」

「一応! 今一応って言った〜〜〜〜!」

 笑ったシャムエル様が、一応一応と何度も言いながら俺の耳たぶをちっこい手で掴んで引っ張る。

「あはは、ごめんごめん。それは痛いから勘弁してください」

 俺も笑いながら右肩にいるシャムエル様を捕まえて、両手でせっせとおにぎりにしてやる。

「きゃ〜〜〜おにぎりにされてるよ〜〜〜誰か助けて〜〜〜」

 妙に嬉しそうなその悲鳴に、俺だけじゃなくてベリーとフランマとカリディアの吹き出す声が聞こえた。

「おはよう。今日はベリー達はどうするんだ?」

 まだシャムエル様をおにぎりにしつつ、俺は笑ってベリー達を振り返った。

「おはようございます。せっかくですから、私達もお祭り見物させていただきます。仲間のケンタウルス達も、密かにこのお祭りを楽しみにしていたようですので、交代で見学させていただきますね」

 笑ったベリーの言葉に俺も笑顔で頷く。

 ケンタウルス達は、まだバイゼンに留まったまま周辺地域を回って岩食いへの警戒を続けてくれているらしい。

 まあ、そっち方面は俺では何の役にも立たないので、信頼して全面的にお願いしている。

 一応、雪解けまで問題が無ければ大丈夫との事なので、多分俺達が春の早駆け祭りの為にハンプールへ向けて出発する頃には、彼らもここを引き上げるみたいだ。

「じゃあ、春まで無事に過ごせたら、ケンタウルス達を招いて果物パーティーとかならしても良いかもな。まだ茹でた栗や焼き栗も大量にあるし、飛び地のリンゴと葡萄だけじゃなくて、俺の手持ちの果物を放出するよ。もし無くなれば、また色んな街で仕入れたら良いんだからさ」

「おや、嬉しい事を言ってくださる。それならもう一度スライムちゃんをお借りして、飛び地へ果物の収穫に行ってきますね。この間行ってかなり集めたんですが、皆よく食べているので、在庫が春まで持つかどうかギリギリなんですよ。もし余れば、スライムちゃん達に持っていてもらえますからね」

「あれ、そうなんだ。食事は重要だからな。いいよ、いつでも言ってくれたらスライムを預けるからさ」

「はい、その時はお願いしますね」

 にっこり笑ったベリーに俺も笑顔で頷き、まずは顔を洗って急いで身支度を整えた。

 当然冬仕様なので防具は無し。一応、自分の剣は自分で収納してあるよ。



『おおい、もう起きてるか?』

 ちょうどその時ハスフェルから念話が届き、マントを羽織った俺は急いで返事を返した。

『おう、おはようさん。今ちょうど支度が終わったところだよ』

『おはようさん。珍しくちゃんと起きてたな。早朝から雪まつりの会場周辺には暖かな食べ物中心に屋台が出てるんだ。せっかくだから行って屋台で食おうぜ』

 笑ったギイの念話の声に、思わず拍手をする俺。

『いいねえいいねえ。じゃあせっかくだからこのまま行くか。ええと、従魔達はどうする?』

 お祭りって事は、人の出は多いだろうから従魔達を全員引き連れて行くのは周囲の迷惑になりそうだ。

『お前はマックスだけ連れて行けばいい。他の子達は申し訳ないけど留守番だな』

『了解、じゃあそれで行くよ』

『おう、じゃあもう行くから出て来てくれ』

 そう言って気配が途切れる。

「なんだってさ。じゃあマックス。よろしくな」

 手早く収納していた鞍と手綱を取り出して装着させる。

 しかし、ファルコが当然のように羽ばたいて俺の肩の定位置に収まる。

「ファルコは一緒に行ってくれるのか。まあ、ここなら邪魔にならないよな」

 手を伸ばしてファルコを撫でた俺は、そのままマックスと一緒に部屋を出て行った。

「いってらっしゃ〜〜い」

 留守番チームの、思いっきり気の抜けた見送りの言葉に吹き出した俺だったよ。

 俺の右肩には、いつの間にか当然のようにシャムエル様が座って身繕いなんかしてるし。



「さて、それじゃあ行くとしますか」

 緩く左右に動いているふかふかな尻尾をこっそりと突っついて、俺はマックスの手綱を引いて広い廊下を歩いて玄関へ向かったのだった。

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