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雪のバイゼンのデザートプレート!

「ブラボ〜ブラボ〜〜!」

 目の前に置かれたお皿を見て、シャムエル様の興奮度は爆上がり状態だよ。

「あはは、そんなに喜んでくれたら、作りがいがあるってもんだ」

 ドヤ顔になった俺は、笑いながらそう言って飛び跳ねるシャムエル様のもふもふな尻尾を横から突っついてやった。だけど大興奮状態のシャムエル様は全く気付く様子も無い。よしよし、グッジョブだよ俺。



 シャムエル様が見つめる大きなお皿の右側には、真っ白な箱型の街を表現したケーキが並んでいて、建物の間には果物をカットして飾り付けたり二色の甘露煮も飾り付けてある。栗クリームの道にも雪代わりの粉砂糖が散らされて、全体に綺麗に白くなってる。

 そして、アッカー城壁を表したスポンジ生地は、細長く切ったのをこれまたクリームを塗り重ねて積み上げてあるのでなかなか立派に出来たよ。

 その横にカットした三角の頂点を突き合わせるみたいにして置かれたガトーショコラとベイクドチーズケーキが左右に広がるお城全体を、その前に置いたやや大きめの四角いブラウニーは広い庭を表してる。

 当然、間には生クリームをたっぷりと落として随所に雪を積もらせ、庭の植木部分の位置には果物を飾り、通路はまたしても栗クリームだ。

 そして仕上げには全体に粉砂糖たっぷり。特に雪がうず高く積もっている部分には、まだ作り置きがあったアイスクリームもディッシャーで大きくすくって豪快に生クリームと一緒に盛り合わせたよ。

「ううん、俺には絶対食えないすごい量になったな。だけどシルヴァ達はこれなら絶対喜びそうだ」

 先程から後頭部の髪をものすごい勢いで何度も何度も引っ張られていて、もう笑いを堪えるのを必死に我慢してたんだよな。



 スライム達が用意してくれたいつもの簡易祭壇に、まずは作ったばかりの雪のバイゼンとお城と城壁のお皿を置いた。それから一応ホットコーヒーもピッチャーを取り出してマイカップに注いで一緒に並べる。

「雪のバイゼンと、このお城と城壁をイメージしたデザート盛り合わせです。味も色々なので楽しんでもらえると思うよ。少しですがどうぞ」

 笑って小さくそう呟いた俺の頭を何度も収めの手が撫でてくれて、それから嬉々としてケーキを撫で回し、コーヒーの入ったカップとお皿を持ち上げてから消えていった。

「じゃあ、試食タイムかな」

 お皿を手に振り返った俺は、ものすごい勢いで高速ステップを踏んでいるシャムエル様の前に笑ってお皿を置いてやったのだった。



「ああ、しまった。後でクッキーを作ろうと思ってて忘れちゃったよ。どうする? もう明日でもいいか?」

 俺の声に急にステップを踏むのをやめたシャムエル様が、目を瞬いてケーキのお皿を見る。

「ああ、言われてみればそうだね。うん、クッキーは今度でもいいよ。じゃあ、出来たらまた新しいクッキーをお願いします!」

 そう言ってまたしても空中とんぼ返りを決めたシャムエル様の横では、当然のようにカリディアもとんぼ返りを見事に決めている。

 二人ともすげえな。さすがにあれは俺には出来ないよ。多分、普通のバック転でも無理だと思うよ……。



「さてと、それじゃあ試食といきますかね」

 大興奮状態のシャムエル様の尻尾をこっそりともふりつつ、一応ナイフとフォークとスプーンを取り出しておく。

「飲み物は?」

「ここにお願いします!」

 いつもの小さな盃を出されてたので、スプーンでコーヒーをすくって入れてやる。

 それから俺は、一瞬で大きなお皿を取り出したシャムエル様の手から笑ってお皿を受け取った。

「ええと、じゃあこっちに俺の分を取ればいいんだよな」

 もらったお皿に、俺はナイフとフォークを使ってガトーショコラやブラウニーなどを一口ずつ取り分けていく。一応イチゴの花は一つ丸ごともらったよ。

 アレンジスポンジケーキは、少し考えてアッカー城壁の部分を少しだけ切ってお皿に乗せ、後はもうそのまま全部シャムエル様に進呈する。

「はい、どうぞ。俺はこれだけあればいいからさ」

「ええ、そんなちょっとでいいの?」

 驚くシャムエル様に、俺は笑って肩を竦める。

「普通、試食って言ったらこれくらいだぞ」

「大丈夫。私は全部食べられます!」

 ドヤ顔で胸を張るシャムエル様。ううん、ここは作った俺がドヤるところなんだけどなあ。

「まあいいや。それでは、いっただっきま〜〜〜す!」

 雄々しく宣言したシャムエル様は、やっぱり頭からバイゼンの街並みを模したスポンジケーキの山に突っ込んでいったのだった。



「ああ、大事な尻尾が生クリームまみれだぞ」

 態とらしくそう言って、以前栗クリームを食べる時にしてやったみたいに、尻尾を引っ張って後ろ足が立つくらいの位置で止めてやる。

「ああいいねそれ。ちょっとそのまま持っててね!」

 嬉々としてそう叫んだシャムエル様は、その体勢のままでものすごい勢いで両手で掴んだスポンジケーキを齧り始めたのだった。

「相変わらず豪快だなあ」

 こっそり尻尾をもふりつつ、俺も自分用に取り分けたスポンジケーキを半分に切って口に入れた。

「おお、思ったよりもモッチモチの生地になったな。ううん、これは美味しい。パンケーキなんかとは、また違った柔らかさだよ。これはちょっと癖になりそうなモチモチ具合だ。ああ良い事思いついた! 後で、これを使って某コンビニで売ってた真ん中がクリームたっぷりになったロールケーキとか、作ってみてもいいかもなあ」

 一口ずつのケーキを味わいつつ、ふと懐かしい事を思い出してそう呟く。

「何それ! それも食べたいです〜〜〜〜〜!」

 いきなり振り返ったシャムエル様が、生クリームまみれの顔でそう叫ぶ。

 何そのもの凄い食いつきっぷり。

「あはは、聞こえてたのかよ。おう、まだこの生地は焼いたのが沢山あるから、じゃあ今度はそのロールケーキを作ってやるよ。ああ、それなら栗クリーム入りとか、激うまジャムとかも使えそうだな。よしよし、また俺でも作れるケーキ発見だ」

「じゃあ期待してます!」

 キラッキラに目を輝かせたシャムエル様は、それだけ言うとまた今度はブラウニーを両手で引っ掴んでものすごい勢いで食べ始めたのだった。

「誰も取らないから落ち着いて食えって。喉に詰まらせても知らないぞ」

 最後のベイクドチーズケーキを口に入れた俺は、その後は両手を使ってシャムエル様の大事な尻尾をホールドすると言う、ある意味俺的にはケーキを食べるよりも大事なお役目を務めさせてもらったのだった。

 いやあ、やっぱりシャムエル様の尻尾は最高だね。

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