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この後の予定と厨房の大掃除

「これで設置は完了ですね。それで、この後ってどうしますか?」

 アーケル君の言葉に、のんびりと雪像を見上げていた俺は慌てて振り返った。

「ええと、せっかくだから俺は今から戻ってケーキでも焼いてみようかと思ってさ。アーケル君達はどうするんだ?」

 俺がケーキを焼くと聞いた途端に、アーケル君だけでなくランドルさんやリナさん達まで揃って目を輝かせてこっちを見るもんだから、思わず笑っちゃったよ。

「いや、このお祭りって創造神様の誕生日を祝うお祭りな訳でしょう? 俺の故郷では、子供はその日にプレゼントを貰えて、皆でケーキを食べる習慣があったんですよね。それを思い出したので、せっかくだから何か作ってみようかなと」

「へえ、それは素敵な習慣ですね。いいなそれ」

 アーケル君が笑顔でそう言い、オリゴー君とカルン君と顔を寄せて何やら頷き合っている。

「ええと、じゃあ俺達ちょっと見たい店があるのでこのままここで解散しても良いですか?」

「ああ、それなら俺もちょっと行きたい店があるので、ここで解散します」

 ランドルさんもそう言うので、俺はハスフェル達を振り返って頷き合った。

「それなら俺はこのまま城に戻りますから、戻ったら呼んでください」

 確か玄関に大きな鐘みたいなのがあって、紐を引っ張ったら音が鳴るようになってた。あれを鳴らして貰えば、従魔達なら聞こえるだろうから、誰か帰って来てもすぐに中から扉を開けられるだろう。

「ああ。確かに大きな呼び鈴が付いてましたね。じゃあそれでいきましょうか」

 笑顔のリナさんの言葉に皆も笑って頷き、一旦ここで解散となった。



「じゃあ、俺達はシャムエルのご希望のデコレーションケーキを買ってから戻るよ。他に何かいるものはあるか?」

 シリウスに飛び乗ったハスフェルに改めて聞かれて少し考える。

「ええと、特に足りない物は無かったと思うけどなあ」

「了解だ。もしも何かあったら念話で言ってくれればいい。それじゃあ行ってくるよ」

 笑ってそう言うと、ハスフェル達も広場に繋がる別の道へ行ってしまった。

「じゃあ俺は戻ってケーキ作りだな。さて、何を作ろうかねえ」

 俺もマックスの背中に飛び乗り、もと来た道を引き返しながら考える。

「ガトーショコラ! それからブラウニー! えっと、後はベイクドチーズケーキ! パウンドケーキも食べたい! クッキーも! それから栗を使ったケーキも食べたいです!」

 マックスの頭の上でステップを踏みながら、シャムエル様がいきなりケーキの名前を読み上げ始めた。

「あれ、新しいのじゃなくても構わないのか?」

「新しいのを作ってくれるの!」

「いや、でもそろそろネタ切れなんで、どうしようか考えてたところ」

 苦笑いしながらそう言うと、さらに高速ステップになったシャムエル様は嬉しそうに首を振った。

「もちろん新しいケーキ出来ればお願いしたいけど、ケーキ作りは難しいって言ってたでしょう。だからほら、無理はしないでね。作るのが嫌になったら大変だもん」

 何故か最後だけは小さな声でそう言われて、俺は納得した。

 俺が無理に難しいケーキを作って、失敗して、もうケーキ作りなんて嫌だ! って事にでもなったら困るから、今までに作ったお気に入りをリクエストしてくれたんだろう。

「あはは、お気遣いありがとうな。大丈夫だよ。ケーキ作りは難しいけど面白いって。まあ、失敗したらそれはその時って事にするからさ」

「大丈夫! 例え失敗作でもケンが作ってくれるお菓子は、全部美味しくいただく自信ならあります!」

 マックスの頭の上で見事なとんぼ返りを決めたシャムエル様が、何故かドヤ顔でそんな事を言ってくれる。

「あはは、そりゃあ頼もしいな。じゃあ、頑張って作るからしっかり食ってくれよな」

 笑ってもふもふの尻尾を突っつき、雪に埋もれた街並みを見回す。

「ううん。それにしても、この雪景色ももうすっかり見慣れたなあ」

 マックスの上からあちこちに並んだ雪像を眺めながら、俺はのんびりと城へ戻っていったのだった。



「おお、こっちの厨房はハンプールの別荘の厨房よりも更に立派だねえ。よしじゃあ、今日はここを使うか」

 城へ戻った俺は、俺の部屋の続きの普段使い用のキッチンじゃなく、このお城にある巨大な厨房に来ていた。

 一応、水回りを一新した時にここも一通りは綺麗にしてくれてあるみたいで、全部で三箇所ある段々になった水場には、とうとうと綺麗に水があふれて流れていた。

「ええと、一応念の為全部掃除してくれるかな」

 持っていた鞄に向かってそう話しかける。

「はあい! 全部綺麗にしま〜〜す!」

 鞄から転がり出たゴールデンスライムが元気よく返事をして、一瞬でバラけてバレーボールサイズになったスライム達が厨房中に散っていく。そして文字通り総出で大掃除を始めてくれた。

「水回り、配管の中までお掃除完了です!」

「戸棚の中、全部綺麗にしたよ〜〜〜!」

「冷蔵庫の中、お掃除完了です! 氷とジェムを入れてくださ〜〜い!」

「コンロのお掃除完了です。こっちにもジェムをお願いしま〜〜す!」

「こっちのコンロもお掃除終わったよ〜〜!」

「こっちの戸棚に食器がたくさん置いてあるよ。これも全部綺麗にしました〜〜!」

「こっちの棚には、お鍋がいっぱい置いてあったからこれも全部綺麗にしたよ! 一応、傷んでるのは、別にしてありま〜〜す!」

「ええ、鍋が傷んでるってどういう事だ?」

 驚いて見せてもらうと、いくつかの片手鍋が取っ手がぐらついていったり鍋の底が薄くなっていたりして駄目になっていたみたいだ。

「ええと、これって……」

「いらないなら頂きます!」

 何故か嬉々としたアルファの言葉に、苦笑いした俺はそのまま返した。

「おう、鍋なら俺も持ってるしな。じゃあこれはもう俺は使わないからあげるよ。ええと、もしかしてこれも食べるのか?」

「もちろん美味しく頂きま〜〜す!」

 一瞬でゴールデンスライムになった直後に、処分する鍋を全部まとめて飲み込んでしまった。

 モゴモゴとしばらく動いてる。

「ご馳走様でした〜〜〜!」

 何やらご機嫌な声でそう言った直後にバラけてまた厨房中に散ってお掃除を始めた。

 そんなスライム達を見て笑った俺は、まずは掃除の終わった冷蔵庫にジェムと氷を入れ始めたのだった。



 さて、綺麗になった広い厨房で、何から作りますかね?

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― 新着の感想 ―
どんなゴミでも消化しちゃうスライム達便利ですね(*´▽`*)ゴミデナイ
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