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それぞれの雪像作り

「うおお、寒いけど出来上がってくると何だか楽しいなあ」

 時折体を温める為にぴょんぴょんと飛び跳ねながら、俺はそう言ってようやく形になってきたドラゴンの雪像を見上げた。

 今は、四人がかりで背中に取り付ける大きな翼を別途製作中だ。



 ヴァイトンさんとエーベルバッハさんに雪像作りの基礎を教えてもらった俺達は、頑張ってドラゴンの雪像作りに励んでいた。

 ある程度形になってくると、俺の氷の能力が大いに役に立つ事が分かって、作業が一気にはかどったんだよ。

 何しろ、定期的にハスフェルとギイが交代で作ってくれる、レンガくらいのサイズの雪のブロックを追加で積み上げていく際や、ちょっと失敗して作り直しの為に雪のブロックを付け直したりする時、俺の氷の能力があれば凍る時間を待たなくても作業が続けて出来るんだからさ。

 作業効率大幅アップだよ。

 一応リナさん達の方の雪像も、俺が必要な時には呼ばれて凍らせてあげたりもした。



「氷の能力者って、珍しいみたいであまり見た事ないんですよね。へえ、意外に便利そうでいいなあ」

「いやいや、あのめちゃくちゃ強力な過剰重力の能力持ちが何言ってるんだよ。俺にはあんなすごい事なんて出来ないんだからな」

 アーケル君が俺が雪のブロックを凍らせているのを見て心底羨ましそうにそんな事を言うもんだから、俺は苦笑いしながら顔の前で手を振る。

「ええ、ケンさん。こいつの過剰重力の技、見たんですか?」

 スコップでドラゴンの背中をせっせと削っていたオリゴー君が、驚いたようにそう言って顔を上げる。

「こいつの過剰重力の技ってえげつないでしょう? だから使い所を間違えると周囲への被害が甚大なんですよね。何度酷い目にあったか!」

「あはは、それは否定しない」

 誤魔化すように笑うアーケル君を見て、俺も遠い目になる。

 あの術はマジでやばい。ハスフェル達でさえ、あれを不意打ちでまともに食らったら絶対に逃げられないと断言していたもんなあ……。

「リンクスのパルフェをテイムした時に使ったんだ。一応、上から圧をかけただけで空気は抜いてないぞ」

「いやいや、何言ってるんだよお前。空気抜いたらテイムする前に死んじまうだろうが! 冗談でもあれはやめろ」

 真顔のオリゴー君のツッコミに、アーケル君は肩を竦めて苦笑いしてたよ。何したんだよ、アーケル君……。



 そんな感じでワイワイと楽しく雪像作りに精を出し、数日後には思った以上に立派なドラゴンの雪像が無事に二体出来上がった。

「へえ、案外俺達もやるじゃんか」

 並んだドラゴンの雪像はブロックを追加で積み上げて大きくした事もあり、最終的に背の高さはハスフェル達よりも少し大きいくらいになり、背中の翼を加えるとそれなりの大きさに仕上がったのだった。これならまあ、それなりの見栄えになるだろうと思えた。

「ええと。だけどこの土台に乗せてもこの二体だけだとちょっと貧相だからな。他にも並べるとしたら、あとは何を作る?」

「それなら、このドラゴン二体を真ん中に置いて、言ってたみたいにその周りに、それぞれが作る雪像を並べればいいんじゃないですか? もう作り方の手順やコツは分かったわけだし、もうドラゴンじゃなくて、各自が好きに作ってみたらいいのでは?」

 笑ったアーケル君の言葉にハスフェル達も笑って頷いているので、ここからは個人で何か一体ずつ作る事にした。

 とはいえ、俺は絵なんて描けないしなあ……。

 途方に暮れて何を作ろうかと考えていると、少し離れたところで雪遊びをしているマックス達を見るとはなしに眺めていた。

「あ、そっか。やっぱり俺が作るならこれだよな」

 にんまり笑って作るものを決めた俺は、いそいそと木箱を組み立ててまずは雪のブロックを作り始めたのだった。



「それで何を作るの?」

 俺と一緒になってぴょんぴょんと木枠に乗って飛び跳ねていたシャムエル様とカリディアが、雪のブロックを積み上げ始めた俺を見ながら興味津々でそう尋ねる。

「ふふふ、まあ見ててくれって」

 頑張っていくつも作った雪のブロックを、俺は一日かけていい感じに積み上げていった。

「あれ、二体作るの?」

 積み上がった雪の塊を見て、シャムエル様は不思議そうにしている。

「だって、どっちか一体なんて決められないからさ」

 笑ってそう言った俺は、まずは型取りをするために大体の形を専用のインクと筆で描き始めたのだった。

「ああ、そう言う事なのか。ううん、これは確かにどちらかなんて選べないね」

 雪の塊に描いた俺の絵を見たシャムエル様は、納得したようにそう言うとうんうんと何度も頷いていたのだった。

「な、そういう事。さてと、それじゃあ始めるとするか」

 胸を張ってそう言った俺は、まずは大まかな形を彫るために大きなシャベルを取り出して、いらない角の部分からせっせと削り始めたのだった。

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