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まずは初心者講習会の開始!

「それでお前さん達、もしかして一番デカい台を頼んだのか」

 庭の左右に置かれた大きな台を見て、あきれたようにエーベルバッハさんが笑う。

「うう、もっと簡単かと思ったんですけどねえ」

 誤魔化すように笑ってそう言うと、まあ頑張れと背中を叩かれた。

「まずは練習がてら、それぞれ自分の身長くらいの大きさの雪像を作ってみるといい。そうすればコツが分かるからな」

 そう言って、周囲を見回して二人は揃って無言になる。

「で、道具は?」

「へ? 道具?」

「そこからか!」

 不思議そうな俺の言葉に二人が揃って覆って叫ぶ。

「この台を渡していた横に、道具を貸し出している場所があったはずなんだが、お前さん達見てこなかったのか?」

「うう、すみません。全然気が付いてませんでした」

 眉を寄せて謝る俺を見て、苦笑いした二人は肩を竦めた。

「悪い事言わんから、とりあえず急いでギルドへ行って道具を借りて来い。最低でも雪の塊を作るための木枠と板の大小のセット。それから先端が尖ったスコップ大小と、先が平たくなった大きいスコップ。要するに、貸し出しているやつ一通り、人数分借りて来い」

「了解、じゃあちょっと行ってくるから待っててくれるか」

 庭を走り回っていたマックスを捕まえて、鞍を装着する。

 スライム達の入った鞄を持って、俺は大急ぎでギルドへ向かった。



 マックスが早足で行くと、ギルドまでなんてあっという間だ。

 改めてよく見ると、確かに台を貸し出している横に道具を貸し出してる場所があったよ。ううん、ギルドの職員さん、それも併せて教えて欲しかった……。

 一応確認すると貸し出しはどれも有料だったんだけど、聞いていた通りにありったけ人数分まとめて借りたよ。それでその際にスタッフさんに、雪像作り初心者なんだけど、他に道具はいらないのか聞いてみた。

 今なら必要な道具があれば、なんでも街で探せるからね。

「そうですね。貸し出している道具は一通りお持ちいただきましたから……あとは、水を汲むバケツや水をかける柄杓くらいでしょうか。作る場所はあるんですよね?」

 少し考えたスタッフさんに聞かれて、それは大丈夫だって言っておく。

 バケツや柄杓くらいならお城の倉庫に色々ありそうだから、それを使おう。

 って事で、そのまままたマックスに乗ってお城までとんぼ帰り。

 大量の道具を待っていてくれた皆に渡して回った。



「それじゃあ、まずは初心者講習会を始めるぞ〜〜」

 若干投げやりなエーベルバッハさんの言葉に、聞いていた俺達は揃って拍手をする。

「と言ってもする事は単純だ。まずはその雪だるまみたいに大きな雪の塊を作って固めて、削る。それだけだ」

 断言されて、思わず絶句する俺達。

「……へ? それだけっすか?」

 そう聞いた俺は間違ってないと思う。

「おう、それだけだ。だけどこれが意外と奥が深いんだぞ」

 にんまりと笑ったエーベルバッハさんは、俺が借りて来た木枠と板を取り出して見せた。

 大きい方の木枠は一本が1メートルくらいで、小さい方が50センチくらい。どちらも棒の両端に何やら組み立て用の金具みたいなのが付いているだけのシンプルなものだ。それがワンセット六本。

 板は大きい方が1メートル角くらいで、小さいのは50センチ角くらいのがそれぞれ四枚セットだ。



「まずはこれを組み立てて行くぞ。やり方は簡単。こんな風にして両端の金具を合わせて引っ掛けて正方形を作るんだよ。そして地面にしっかりと置いたら縦になってる壁面の部分にこの板を嵌めるんだ」

 言われるままに、俺達も一緒に自分の木枠を組んで箱を作っていく。

「で、出来上がったらその中に雪を入れていくんだ。ほら。でっかい方のスコップを使ってとにかく雪を入れろ」

 借りてきた大きい方のスコップというかショベルを使ってせっせと箱の中に雪を放り込んでいく。

「で、半分くらいまで入れたら箱の中に入って雪を踏み固める。こんな風にしてな。うまく固めるコツは、端まで全体に踏めるように飛び跳ねる事」

 そう言うと軽々と木枠を飛び越えてジャンプして箱の中に飛び込んだエーベルバッハさんは、子供みたいにその場でぴょんぴょんと飛び跳ね始めた。

「そっちの草原エルフの皆さんは若干不利かもなあ。これは自重のある奴の方が仕事は早いぞ」

 大柄なハスフェルとギイを見ながら笑っている。

「あはは、確かにそうだな。じゃあ後で手伝いますよ」

 笑ってそう言ったハスフェル達も、軽々とジャンプして箱の中に飛び込んで飛び跳ね始める。それを見た俺達も、負けじと一斉に箱の中へ飛び込んで行った。

 だけど、大の大人が揃いも揃って大真面目な顔で箱の中でぴょんぴょんと飛び跳ねているなんて、考えたらなんだか段々おかしくなってきた。もう途中からは、皆でゲラゲラと笑いながら高さを競い合うみたいにして何度も飛び跳ね、足元の雪が硬くなったら、また雪を放り込んでは飛び込んで飛び跳ねて踏み固めるのを繰り返した。



 途中から、どこかへ行っていなくなっていたシャムエル様が戻って来て、それを見てすっ飛んで来たカリディアと一緒になって、木枠の上でぴょんぴょんと飛び跳ねてなんとも複雑なステップを踏んでいたよ。

 だけどごめんよ、どう見てもそのステップは俺には踏めないから、そんな期待に満ちた目で俺を見ないでくれって!

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