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雪まつりの雪像準備と風呂の事

「おうおう、早駆け祭りの英雄様御一行じゃあねえか。嬉しいねえ。今度は雪まつりに参加か」

 着膨れてもっこもこになった、ドワーフにしては大柄な男性が、俺の顔を見て笑顔で手を振ってくれる。

 ギルドを出てすぐの所に大きな机が出ていたのは、どうやら雪まつりの参加者に渡す台の準備をしていたみたいだ。

「おう、面白そうだから参加させてもらおうと思ってさ。ええと、これが引換券だって言われたんだけど、ここで貰えばいいんだよな?」

 さっき貰った引換券を差し出しながら尋ねると、そのドワーフは驚いたように目を見開いた。

「おお、さすがは早駆け祭りの英雄だねえ。作る雪像の大きさも違うな」

 にんまりと笑ってそう言い、背後にいたスタッフさんに何やら指示を出し始めた。

 これまた笑顔のスタッフさん達が、一斉に動き始める。

 嫌な予感に身を震わせた瞬間、運ばれてきたそれを見て俺は思わず吹き出したよ。

 だって、運ばれて来たそれは台の下にスキー板みたいな平たい棒がセットされた木製の台だったんだけど、それが何と全部で九個も運ばれて来たんだよ。しかもパッと見た感じ、一つが3メートル角は余裕である大きさだ。

「ええと、それって……」

「おう、これがお前さんが参加したランク用の台だ。これを三個ずつ縦横に並べて正方形にするんだよ。この横の部分に連結用の金具がついてるから、組み立てた時に必ずしっかりとはめておく事。それじゃあ頑張ってな!」

 笑ったそのドワーフは、それだけ言うとまたやって来た次の人の対応を始めてしまった。

 積み上がった土台の山を見て、俺達はもう笑いが止まらない。

「あの、どうなさいますか? ご依頼いただければ指定された場所まで別料金になりますが運びますよ」

 遠慮がちにスタッフさんが積み上がった土台を見てそう教えてくれる。

「いやいや、ケンさんは収納の能力をお持ちですよね。それならこのままお持ちいただいても構いませんので、どうぞ」

 もう一人のスタッフさんがそう言ってくれたので、俺はサクラが入った鞄に黙って積み上がった土台をとにかく全部収納したよ。



「なあ、これって今思ったんだけど、出来上がった雪像も別に無理して引っ張って運ばなくても、台ごと収納して運べば良いんじゃね?」

「ああ、確かにそうだな。それなら俺が運んでやるよ。ケンだと鞄からこれを取り出すのはちょっと大きさ的に無理がありそうだからな。せっかく作っても、取り出す時に壊れたら大変だ」

 笑ったハスフェルがそう言ってくれたので、出来上がった雪像を運ぶのはお任せする事にした。

 確かに、普段鞄から取り出してる獲物や素材の巨大なやつは、無理やり引っ張って引きずり出してるって感じだもんな。

「それならリナさん達の分は俺が運んでやるよ」

 笑ったギイが、同じく大きな台を九個渡されて途方に暮れていたリナさん達を見て台を一瞬で収納していた。

「それじゃあ、受付も済んだし一旦戻ろう。それで、お城の庭でそれぞれ雪像の制作開始だな。それなりにまだ日にちはあるけど、初めて作るんだから試作とかも必要だろうからな」

 笑った俺の言葉にハスフェル達が驚いたみたいに振り返る。

「なんだなんだ。ずいぶんとやる気になってるじゃないか」

 妙に嬉しそうなオンハルトの爺さんの言葉に、俺は満面の笑みでサムズアップしたよ。

「俺の元いた世界でも、こんな感じの雪まつりがあったんだよ。俺は参加した事は無いけど、話には聞いていたからちょっと楽しみなんだ」

 爺さんに顔を寄せながら小さな声でそう言うと、納得したみたいで頷いてくれた。当然、声が聞こえていたハスフェルとギイも納得したらしく、うんうんと頷いていたよ。



「お待たせ。それじゃあお城へ戻るよ」

 待っていてくれた従魔達に声を掛けて、俺はマックスの背中に飛び乗った。

 ここ数日、従魔達の岩豚狩りに付き合って郊外に出ていたから、久々のお城だ。

「ああ、やっと風呂に入れる〜〜!」

 マックスの背中の上でそう叫ぶと、同じくそれぞれの従魔に飛び乗ったハスフェル達まで大笑いしながら何度も頷いていたよ。



 ちなみに、リナさん一家とランドルさんはお風呂初体験の時、まあ、予想通りに全員揃って大喜びだったよ。

 一応、最初に泊まった日は男性陣は、共同の広い風呂に順番に入り、リナさんは部屋に備え付けのちょっと小さめの湯室を普通に使ったらしい。要するに、サウナと水風呂だね。だけど、お風呂初体験だったアルデアさんから湯に浸かる楽しさを力説されたらしく、その後やってみて彼女も完全にお風呂の虜になったらしい。

 俺も広い風呂を使ったんだけど、もう最高だったよ。

 注文通りに湯船は高くしてくれてあるだけでも満足だったのに、何と全部の湯船に、熱湯だけが流れ出るようになっていた給湯装置の横に真水の出る別の蛇口を新たに設置してくれていたんだよ。

 工事をお願いした際に、俺がここに体温より少し高いくらいのお湯を張ってそこに浸かるんだって力説したので、その温度のお湯が簡単に使えるように考えてくれたらしい。

 もう最高! おかげで風呂に入る度にいちいち氷を幾つも作って用意しておく必要が無くなったよ。

 今度ハンプールに戻ったら、あっちの風呂にも水の出る蛇口を追加で作って貰おう。

 これのおかげで、それぞれの部屋に備え付けられている湯室でも、いつでも好きに寛いで風呂に入れるようになったんだよな。

 分不相応なお城を買ったと思ってたけど、この風呂にいつでも入れるってだけでも、ここを買った値打ちがあるってもんだよな。

 寒い冬は、やっぱり風呂と炬燵だよ。それからもふもふ達もね!

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