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岩豚の解体依頼

「おお、これは素晴らしい……」

 従魔達が雪の中を捕まえてきてくれた噂の岩豚を捌いてもらう為に、街へ戻った俺は冒険者ギルドへ来ている。

 だけど、作業台の上に取り出した巨大な岩豚を見て、さっきからギルドマスターのガンスさんが何やらぶつぶつ呟きながらプルプルと震えてるよ。大丈夫か?



「ケンさん! お願いします! 少しでもいいので、肉をギルドにも売ってください!」

 いきなりものすごい勢いで腕を両手で掴みながらそう言われて、苦笑いした俺は取り出した巨大な岩豚を振り返った。これ、有り得ないくらいにデカいんだよな。

 ちょっとした軽自動車ぐらいありそうなその巨体は、全体に薄茶色をしていてどちらかというと豚よりも猪に近いように見える。だけど牙は無くて、顔はややマンガチックな豚に近い。何だか妙に愛嬌のある顔をしてるよ。

 かなり沢山狩って来たと聞いているし、無くなればまた狩りに行ってくれるとも聞いているので笑顔で頷いて腕を掴んだ手を離してもらう。

「良いですよ。それじゃあ、何頭要りますか?」

 鞄を引き寄せながらそう言うと、ガンスさんは驚いたように目を見開いて絶句している。

「ええと、どうしました?」

「何頭? まさか、頭単位で分けてくれるのか!」

 ものすごい勢いで駆け寄ってきて、さっき以上の力で腕を掴まれてそう叫ばれ、思わず悲鳴を上げる。

「ガンスさん、待って、痛いって! 腕、腕!」

「あ、ああ、失礼した!」

 俺の悲鳴に、慌てて掴んだ手を離してくれる。

 ううん、さすがはドワーフだね。握力半端ねえっす。

 腕をさすりながら苦笑いした俺は、とりあえずもう一匹取り出して、さっきの岩豚の隣に並べる。

「まだ要ります?」

「あと一頭お願いします!」

「了解、それじゃあ、こっちの二頭はこのまま丸ごとお譲りします。こっちの俺の分は……ええと、ちなみにこれって何か素材は取れたりするんですか?」

 俺の質問にガンスさんは嬉しそうな笑顔になる。

「皮と骨だな。あと内臓も一部は食材になるぞ。要るか?」

 俺は、ホルモンはあんまり得意じゃないから、そっちはいつも全部丸ごとお譲りしてるんだよな。

「ああ、そっちは遠慮しときます。それじゃあ、内臓も含めて買い取りしていただけるところがあればお願いします。肉だけ全部戻してください」

「おう、了解だ。いやあ、超貴重な岩豚を譲っていただけて感謝するよ。それじゃあ肉の準備が出来たら知らせを寄越すよ」

「はい、普段はあの例の巨大なお屋敷と言うかお城に住んでますので、引き取れるようになったらそっちに連絡をお願いします。従魔達の食事の為に郊外へ出る時は、ギルドに知らせるようにしますね」

「わはは、確かにあれはお屋敷っちゅうよりは城だよなあ。俺達も、あれの事はお城って呼んでいたなあ」

 俺の言葉に、ガンスさんはそう言って大笑いしている。

「おう、それじゃあ郊外へ出掛ける時はそれで頼むよ。まあ、こいつの熟成期間は三日もあれば充分だから近いうちには渡せると思うからな」

「はい、それじゃあ楽しみにしてますので、よろしくお願いしますね」

 ううん、やっぱり捌いてすぐには食べられないんだ。残念だけど、牛よりは熟成期間は短いんだな。

 密かに感心しつつ、笑顔で頷く。



 そのまま一礼して出ていきかけて。もう一つの用事を思い出して足を止める。

「ああそうだ。もう一件お願いと言うか、聞きたい事があるんですけど、よろしいですか?」

 振り返ってそう言うと、集まってきたスタッフさん達と何やら真剣な様子で相談していたガンスさんが慌てたように振り返った。

「おう、なんでも聞いてくれ」

「ええと、ハスフェル達から聞いたんですけど、十二月の二十三日から始まるお祭りについてなんですけど」

「降誕祭だな。なんだ、もしかして雪像作りに参加してくれるのか?」

 嬉しそうにそう言われて、俺も笑顔で大きく頷く。

「はい。なんだか面白そうなんで、是非参加したいんですけど、どうしたらいいですか?」

「ああ、それなら受付で言ってくれたら、もう申し込みが始まってるよ。お前さん達なら、城の庭で作業出来るだろうから、展示場所だけ聞いて、申し込みをして台だけ受け取ってくれればいいよ」

「台、ですか?」

 どうやら、申し込む金額に応じて色んな大きさの移動式の土台があるらしい。それでその上に乗る範囲で雪像を作るんだって。成る程、これは後でハスフェルともう一度相談して、どんなふうに作るか考えてから申し込むべきだな。

 一人ずつ別のものを作って、全員分並べて展示したり行進させても面白そうだし。北海道の雪まつりみたいに、皆で協力して一つの大きな雪像を作ってもいいかもしれない。

「分かりました。ありがとうございます。それじゃあ後で、受付で詳しい話を聞いてみます」

 笑ってそう言うと、とりあえず詳しい説明を聞くために俺は急いで受付に向かったのだった。

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