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冬のお祭りについて

「うわあ、寒い」

 吹き付けてくる冷たい風に思わずそう叫んだ俺は、マックスの背の上でマントの前をかき合わせつつ少しでも暖かくなるように小さく首を竦めた。



 しばらく天気が良さそうだったので、従魔達の食事と憂さ晴らしを兼ねた狩りの為に、俺達も一緒に街の外まで出て来たところだ。

 まあ、炬燵に潜り込んでばかりだと確かに体も鈍るから、たまには外に出るのも悪くはないんだけどね。とにかく外は寒い。そして寒い!

 当然、もう何処も見渡す限りの雪景色。一面の銀世界だよ。目に入ってくるのは空の青さと雪の白さだけ。

 森の木々も全部積もった雪に埋もれていて、白いモンスターの群れみたいになってる。そう言えば確か以前スキー場での写真で、こんな感じの光景を見た記憶があるよ。



 さすがにこんな状態では、いつものようにジェムモンスター狩りなんて出来ない。仕方が無いから従魔達が交代で狩りに行ってる間は、とにかく俺達は防寒優先、安全優先で大人しく過ごしている。

 もう、着膨れてもっこもこになった俺達は、雪の中で無理に狩りをするのは早々に諦めて、スライム達が雪を固めて作ってくれた平らな場所にテントを張って雪中キャンプ状態だ。

 持参した視覚的にも暖かいダルマストーブもどきが、ただいま広いテントの真ん中で稼働中。その上部ではシュンシュンとヤカンが音を立ててお湯を沸かしてくれているし、もう一台持って来た温風が吹き出す暖房器具もフル回転状態だ。

 なので、一応テントの中はそれなりの暖かさが保たれている。

 だけど、ただ待っているだけっても退屈なので、俺は気晴らしに料理を作ったりもしている。

 それにしても煮込み料理や鍋料理って、寒い時期になるとどうしてあんなに美味しくなるんだろうね。



 リナさん一家やランドルさんは、一緒に狩りに出かける時もあるし、別行動で街に残ってギルドやお店を見て回ったりもしている時もある。

 ちなみに今日は、全員一緒に出掛けているよ。

 それから、リナさん達が依頼していた従魔達に乗せる鞍や手綱も出来上がっていて、これで乗りやすくなったと三人はずいぶんと喜んでいた。

 騎獣がいないオリゴー君とカルン君は、郊外へ出る時には俺の従魔のテンペストとファインの狼コンビの背中に乗っている事が多い。

 だけど彼らも、出来れば騎獣になりそうな従魔が欲しいと言っているらしい。これに関しては俺の出番は無いよ。アーケル君とリナさんが彼らの分もテイムする気満々になっているから、冬の間に何か見つけてテイム出来るといいな。



 そして、噂の岩豚狩りに従魔達が向かった時に、ちょっと裏では困った事態が起こっていた。何しろ、スライム達が収納出来るんだって事はランドルさんやリナさん達には話していない。なので、従魔達が狩ってきた獲物をどうするか困ってしまったのだ。

 あんなに大きな複数の獲物をスライム達が確保してずっと持っていられるのは、物理的にちょっと無理がある。

 それでハスフェル達と相談の結果、彼が持っていた収納袋をスライム達に持たせて狩りに同行させる事にしたよ。

 こうすれば、集めた獲物は収納袋の中にスライム達が入れて確保しているんだって事に出来るからな。

 まあ、普通ならスライムが鞄に物を入れられるわけないだろうがって言われそうだけど、料理のお手伝いを色々見せたおかげで、俺のスライム達ならそれくらいやっても不思議はないって感じに、リナさん達やランドルさんに普通に受け入れられて逆にこっちが驚いたくらいだ。

 まあ、有り難いので特に否定もせずにそのままにしてるんだけどね。



 それから、年末年始に何かしたりするのかって何となく思いついてハスフェル達に聞いたら、驚きの答えが返ってきた。

 何と、十二月の二十三日はシャムエル様の誕生日らしく、この日から年末年始を挟んで一月の八日までずっとお祭り騒ぎらしい。

 一応、二十三日には神殿では一日中蝋燭を灯し祈りを捧げたり、お菓子や料理を祭壇にお供えしたりもするらしいんだけど、基本的には街中お祭り騒ぎなんだって。

 具体的には、神殿では大人達への振る舞い酒や、子供達へのお菓子の配布があるし、もちろん屋台も大量に出る。

 そして、バイゼンならば広場に雪像を作るし、雪が無い地方では木彫り細工や藁細工、あるいは紙や布製など、様々な素材でドラゴンの像を作って荷馬車に乗せて街を練り歩くんだって。

 バイゼンの場合は、大きなソリに雪で作ったドラゴンの像を乗せたり、逆にもっと大きな雪像だと土台ごと動かせるようにして馬に引かせたりもするんだって。

 何それ、面白そうじゃん。



 聞けば、雪像を作るのは誰でも参加出来るらしいので、せっかくだから参加して皆で雪像を作ってみようぜって話になった。

 一応、各ギルドの窓口で祭りへの参加申し込みをして、街の中の何処かの広場に場所を確保してもらってそこで作るらしい。

「いいねえ、めっちゃ面白そう」

 そこからは全員やる気満々になって、外に出て雪を丸めたり固めたりしてどうすれば綺麗に作れるかを延々と相談し始めたのだった。

 せっかく本人が目の前にいるんだから、ドラゴンの雪像はそっくりに作りたいよな。

 北海道の雪祭りの石像ってどうやって作ってるのか、割と真剣に思い出そうとしたよ。確か、固めた雪を積み上げて作って、削るんだよな。それで最後に水をかけて凍らせるんだって聞いた覚えがある。

 まあそこは俺が凍らせれば一瞬で済むから、多分雪像作りをするなら、俺がすごく有利だと思うぞ。

 そして俺達は、雪像作りの為に郊外に積もった真っ白な雪を大量に収納したのだった。

 街の中の雪は、どうしても汚れてたりするから、ここの雪を使えば、本当に真っ白な雪像が出来ると思うんだよな。ふふふ、これは楽しみだよ。

 大量の真っ白な雪を確保して、既にやる気満々になっている俺達だったよ。

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