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到着〜〜〜!

「わざわざ机や布団を買ったんですか?」

 支払いを済ませて戻って来てマックスの背に飛び乗った俺を見て、ランドルさんが不思議そうにそう訪ねて来る。リナさん一家もその背後で同じく不思議そうにしている。

 まあ、炬燵を知らなかったらそうなるか。

 笑った俺は、収納した鞄を軽く叩いて胸を張った。

「ふふん、言っておきますがこれはただの机じゃあないんですよね。もう最高なんですよ。まあ、どんな風なのかは家へ行ってみてのお楽しみって事にしておきましょう」

 満面の笑みでそう言った俺の言葉に、さっぱり訳が分からないとばかりに、ランドルさんとリナさん一家は顔を見合わせて揃って首を傾げている。

 ゆっくりとマックスを進ませると、全員がそれに続いた。



 しばらく雪を眺めながらマックスの背に揺られていたんだけど、ふと思いついてランドルさんを振り返る。

「ねえランドルさん。ええと、ちょっとお尋ねしますけど、ランドルさんって実家がカデリー平原の米農家だって言ってましたよね」

「ええ、そうですよ。まあしばらく帰っていませんけどね。それが何か?」

「じゃあ、畳って知ってますか?」

「タタミですか? ううん、確かに名前くらいは聞いた事はありますが、俺が住んでいた辺りではほとんど使われていませんでしたよ。あれはもっと海岸沿いの辺りの地域で使われている、植物を使った分厚い絨毯みたいなものだと言うのは、聞いた事がありますね? ですが、実物を見たことはありませんよ」

 顔の前で手を振るランドルさんを見て、ちょっと意外だった。

「あれれ、そうなんだ。へえ、それはちょっと残念だ。実家が米農家のランドルさんの家なら、もしかして畳の部屋もあるかと思ったんだけどなあ」

「わざわざそれを俺に尋ねるという事は、あの屋敷にはタタミの部屋があるんですか?」

「あるってか、作ってもらったんです。俺の部屋の中に」

 その言葉に目を見開くランドルさん。

「部屋の中に部屋を作った?」

「そうそう」

 笑いながら頷く俺を見て、ランドルさんが心底不思議そうに首を傾げている。

「ううん、どうもよく分かりませんねえ。まあ、お披露目の際に見せていただきましょう」

 肩を竦めたランドルさんの言葉に、俺も笑って頷いて前を向いた。



「って事で、ここからが家の敷地で〜〜す!」

 巨大なアッカー城壁をくぐったところでそう言うと、見事にランドルさんとリナさん一家が揃って目を見開いて固まった。

「はあ、この城壁から中が敷地〜〜〜?」

 アーケル君の悲鳴のような声が響く。

「正確には、この城壁を含めた部分から中が全部敷地なんだそうだよ」

 俺の言葉に、もうランドルさん達の見開きすぎた目が落っこちそうになってる。

 その様子を見て、俺達はもう笑いを堪えきれずに大笑いなったよ。



 一応雪かきはしてあるんだけど、狼達が大はしゃぎしながら道沿いに塊になっている雪を崩しながら走り周り、俺達は笑いながらその後を追いかけて別荘までの道を走った。

「うわあ! すっげえ予想以上にデカい!」

「すっげえ! これってもうお城じゃんか!」

「うわあ〜! 本当に噂以上だ! すっげえすっげえ!」

 アーケル君達、草原エルフ三兄弟の歓声が聞こえて俺は堪えきれずに吹き出したよ。

「まあ、確かにこれはお城だよな」

 若干乾いた笑いをこぼしつつ、一応建物の周囲をぐるっと一回りしてから中に入った。

 しかしどうにもデカ過ぎて、まだここを何と呼んでいいのか俺の中でいまいち決まらないんだよな。別荘って呼ぶ予定だったんだけど、なんだかちょっと違う気がするしなあ。



「うわあ、すっげえ!」

「すっげえすっげえ!」

 建物の中に入ってから、草原エルフ三兄弟はさっきからこのセリフしか言ってないし、リナさん夫婦とランドルさんは、驚き過ぎて完全に無反応になってる。これはこれで面白いぞ。

「あの……ケンさん。本当に、ここに住むんですか……?」

「そうですよ。まあ、慣れればどうって事ないですって。廊下も部屋も広いですから、従魔達も伸び伸び出来ますよ」

 笑いながらそう言った俺の言葉の通り、スライム達に足を綺麗にしてもらった従魔達は、皆大喜びで俺達の周りを歩き回っている。

 居住区の廊下は、絨毯が敷いてあるので石の床だけどあまり冷んやりした感じはない。無駄に豪華そうに見えるけど、石が敷き詰められた廊下は絶対冷えるだろうから、分厚い絨毯の意味ってあるんだよな。なんて、俺は密かに感心していたのだった。



 一通り部屋を案内して周り、空いている部屋に適当に入ってもらった。来年には客間の方も改修予定だけど、なんとなくこっちに泊まってもらう方が良いような気がして来た。何しろ広すぎるので、行き来するだけでも大変だもんな。

 苦笑いしつつ、俺は和室のある俺の部屋へランドルさん達を案内して行ったのだった。

 さて、彼らは炬燵にどんな反応を示すだろうね?

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