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水晶樹のまさかの使い道

「おおい、ニニ! カッツェもそろそろ起きてくれよ〜〜〜!」

 一応見えるところにあるマタタビ石はありったけ全部回収したのだが、未だに猫族軍団全員完全にマタタビに酔っ払って討ち死に状態。もう屍累々の惨憺たる有様だ。

 迂闊に近寄ってガブリとやられるのは絶対に勘弁願いたいので、充分な距離を取った状態で大声で話しかけてやる。

「ああそうだ。なあなあ、さっきの水晶樹の葉っぱって使えないかな?」

 先程お椀に張った水に浸した水晶樹の葉っぱは、オンハルトの爺さんがお椀ごと収納してくれている。当然時間停止の収納だから、葉っぱのマナがこれ以上無くなる事もない。

 あれは大量のもの凄く濃いマナを放出しているわけで、その純粋なマナを一気に浴びせてやれば、いわば気付け薬みたいにならないかと考えたんだよ。

「ああ、確かにあれなら何とかなるかもしれんな」

 俺の言いたい事を即座に理解してくれたオンハルトの爺さんが、収納していた葉っぱ入りのお椀を取り出してくれる。そして、急かすように軽くお椀を揺すって水面を揺さぶった。

 またしても吹き抜ける草原のような爽やかな空気。ううん快適〜〜〜!

 思わず全員揃って深呼吸していたよ。



 そして、予想通りに酔っ払っている従魔達にも水晶樹の放出するマナの効果はてきめんだった。



 いきなり目を見開いてがばりと勢いよく起き上がるニニとカッツェ。そしてそれに続くティグ達。

 半ば呆然としたままの全員が起き上がると、クンクンと周囲の匂いを嗅ぐようにして、それから大きく欠伸をしたり伸びをしたりし始めた。

 ニニとカッツェは、揃って照れたようにお互いの身繕いを始めた。

 そうそう、とりあえず落ち着くには身繕いだよな。

「もう復活してるから大丈夫みたいだな」

 苦笑いしながら近寄って、ニニとカッツェの首元を叩いてやる。

「えへへ、ちょっと酔っ払っちゃった」

 これ以上ないくらいの可愛い声でニニがそう言いながら俺のお腹に頭をこすりつけてくる。

「笑って誤魔化しても駄目だぞ〜〜お前は今まで何をしていたんだ〜〜〜?」

「よく覚えてませ〜〜ん」

「私も覚えてませ〜〜〜ん!」

 ニニとカッツェだけでなく、ティグをはじめとした猫族軍団達が、巨大化したまま次々に復活して俺にじゃれついて来た。

「誤魔化しても〜〜〜無〜〜駄〜〜だぞ〜〜〜俺は〜〜〜見〜〜た〜〜ぞ〜〜〜〜〜〜」

 笑いながらそう言い、捕まえたティグの頬を両手で掴んで言葉に合わせながら引っ張ったり揉んだりしてやる。

「誰か助けて〜〜〜〜ご主人が〜〜〜私を〜〜〜いじめる〜〜〜〜!」

 全くの無抵抗で揉まれ放題のティグが、妙に嬉しそうな声でそう言って喉を大きく鳴らす。

「ご主人、ティグばっかりずるい〜〜〜!」

「私も私も!」

「ええ、ずるい! 私も〜〜〜!」

 ヤミーに続いてマロンやソレイユ達も次々に俺の腕の中に頭を突っ込んだり、甘えて背中に頭をこすりつけたりする。

「どわあ、待て待て。巨大化した状態で一斉に押し寄せるじゃあねえよ! 順番〜〜! ってか、とりあえず撫でてやるから小さくなれって」

 苦笑いしつつ、集まってきた子達が小さいいつものサイズに戻ったのを見て、その場に座って抱き寄せて揉みくちゃにしてやる。

「このサイズなら、負けないもんな〜〜〜〜!」

 ソレイユとフォールを二匹まとめて抱き寄せで膝に乗せてやり、両方の手で二匹の顔を捕まえてモミモミ……。

 うん、これも中々に良きもふもふだね。

 密かに頭の中でそんな事を考えつつ、従魔達が満足するまで撫でたり揉んだりしてやったよ。



「どうやら、もう大丈夫そうだな」

 それぞれ、レッドクロージャガーのスピカとベガを撫でていたハスフェルとギイが、大きな安堵のため息を吐いてそう言っている。

「おう、もう大丈夫だぞ。いやあ、しかし水晶樹のまさかの使い道が分かったな。俺も水を入れたお椀に葉っぱを一枚浸したのを作って収納しておこう。万一、従魔達が今回みたいに理性を失うような事態になった時には絶対必要だもんなあ」

「そうだな。これはリナさん達やランドルにも知らせておくべきだな。それなら葉を一枚渡して持たせておくか」

「良いんじゃないか。これは安全の為にも絶対に持たせておくべきだよな」

 右肩に座って、もの凄い勢いでうんうんと頷いているシャムエル様を横目で見つつ、俺達は顔を見合わせて大きなため息を吐いた。

「じゃあさあ、もう俺達はここで待ってるから、先行しているマックス達を呼び戻して来てくれないか」

「分かった! じゃあすぐに戻って来るわね!」

 嬉しそうにそう言うと、ニニとカッツェが並んで颯爽と奥へと続く坑道を走っていってしまった。

 苦笑いしつつ二匹を見送り、顔を見合わせた俺達はほぼ同時に全員揃って大きく吹き出した。

「どうして毎回、こうも事件が続くのかねえ」

 腕を組んだ俺がしみじみとそう呟くと、ハスフェル達だけでなくヴァイトンさん達までがまたしても吹き出してる。

「いやあ、どうなる事かと思いましたが、さすがですね。世界最強の魔獣使いの名は伊達ではなかったようですなあ」

 笑ったヴァイトンさんの言葉に、エーベルバッハさんとアードラーさんもものすごい勢いで頷いてる。

「まあ、原因が解れば対処の仕様はありますって」

 誤魔化すように笑いながら肩を竦めた俺だったよ。

「はあ、マックス達が戻ってきたら、一旦戻ろう。それで宿泊所を撤収して、すぐにでもこっちへ引っ越して来よう。俺は今切実に風呂に入りたいよ」

 もう一度ため息を吐いてそう言うと、ハスフェル達が笑いながら俺の背中を叩いた。

「そうだな。俺も何だかものすごく疲れたよ。とりあえず順番に風呂に入ろう」

 ハスフェルのしみじみとした呟きに、今度は俺達も一緒になって揃って吹き出したのだった。

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