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炬燵に食われた面々ともう一つの問題

「なあ……これ、いいな……」

「うん、確かにこれはいいなあ……」

「ふむ、暖かくてよさそうだとは思っていたが、まさかこれほどだったとはなあ……」

 完全に炬燵に食われた状態のハスフェルとギイの呟きに、オンハルトの爺さんのしみじみとした呟きが続く。

「だろう。俺がここから出たくないって言った意味……分かっただろう……?」

 俺も完全に炬燵に潜り込んだままで、半ば意識を飛ばしそうになりながらそう答える。

「おう、確かにこれは素晴らしい……もう、絶対に動きたくないですなあ……」

「確かにこれは素晴らしいですが……まだ勤務時間だと言うのに、こんな事してて良いんでしょうかねえ……」

「確かに。これは良すぎて危険ですなあ……何と言うか……やる気が完全にどこかへいってしまいそうです……」

 エーベルバッハさんとアードラーさんだけでなく、途中からは遠慮して後ろに下がっていたヴァイトンさんまでが炬燵に食われて全員揃って討ち死に状態だよ。

 でもまあこれは当然の結果だよな。何しろ、冬の和室で炬燵だぞ。しかもわざわざこれ用に作ってくれたふかふかの綿入り布団までがもう暖かくて手触りも良くて、本当に何もかもが最高だよ。

 結局、かれこれ一時間近く俺達は炬燵に食われたままで意識を飛ばしていたのだった。



「ケンさん! これ! これもギルドで買い上げさせてもらってもいいか! これは絶対に売れるぞ!」

 ようやく復活したところで、ヴァイトンさん達が目を輝かせながら俺に詰め寄り、俺はもちろん快諾したのだった。

 聞いてみるとどうやらこれに近いものはあるらしく、聞けばいわゆる、やぐら炬燵的なものらしい。

 要するに30センチ角くらいのサイコロ状に組んだ木枠の中に、暖房用の装置を入れて椅子の足元に置いて膝掛けをして使う、いわゆるミニサイズの箱型炬燵だ。

 だけど、こんなふうに机の中に装置を入れて布団を掛けて自分が入る仕様は聞いた事がないらしい。ましてや掘り炬燵みたいに床に穴を開けてそこに座るなんて、発想自体なかったらしい。まあ、これは畳生活していないと出てこない発想かもな。

 ううん、どうなんだろう。これは単にシャムエル様が炬燵を知らなかったって事なのかね?

 ちなみに当のシャムエル様は、俺の隣で完全に炬燵に食われてノックアウト状態です。完全に爆睡してます。いいのか、神様がこんな事で。

 まあ色々と内心で突っ込みつつ、何とか炬燵から這い出した俺は気分を変えるように大きく伸びをしてから、もう一つのアイデア、いわゆる椅子に座って入れる背の高い炬燵の説明を始め、全員から歓喜の悲鳴を上げさせたのだった。

 そして俺は、追加で同じ大きさの炬燵と炬燵布団を合計三個、それから椅子用炬燵セットもお願いした。それから座椅子と座布団もね。

 だって、最初は俺と従魔達だけが入る予定だったんだけど、この様子だとハスフェル達だけじゃなく絶対ランドルさんやリナさん達も入りたがるだろうし、ニニやカッツェをはじめとした猫族軍団も絶対炬燵に入りたがるだろう。となると、ここだけでは絶対に大きさ的に足りない。

 なので、従魔達用には、床に分厚いラグを敷いて炬燵を二台並べてセットして使ってもらい、こっちの和室にももう一台並べて皆に使ってもらう作戦だ。

 まあ椅子用炬燵が用意出来れば、そっちにハスフェル達には座って貰っても良いかもな。



 その後で、改装してもらった風呂場も確認して皆で大喜びとなり、もう宿は引き払ってこっちへ引っ越そうって事に決まったのだった。

「でも、わざわざ一冬の約束で宿を確保したのに何だか申し訳ないなあ」

 ギルドの宿泊所はかなりの争奪戦だと聞いていたので、こんな時期になって宿を解約するのもなんだか申し訳なくてそう呟いたら、何故かヴァイトンさん達に笑われたよ。

 聞いてみると、まあ当然だけど聞いたようにギルドの宿泊所は人気が高く、一冬通して部屋を確保するのは早い者勝ち状態らしい。なので、確保出来なかった人達は街の宿を取るんだけど、まあそれなりの値段になるからほとんどの場合は一人一部屋ってわけにはいかず、大人数で部屋を使ってるなんて普通にあるらしい。

 もしも俺達だけでなく、リナさん一家やランドルさんまでがこっちに移動して宿を引き払ったら、当然それだけ多くの部屋が空きになる訳で、恐らくだけど抽選会が開催されるくらいの大人気になるだろうって事らしい。

 なるほど。それなら遠慮せずに早々に引っ越すことにしよう。

「ってか俺達、ランドルさんやリナさん一家までこっちへ来る事前提で話してたけど、もしかして迷惑じゃないよな?」

 不意に我に返ってそう呟くと、何故だかハスフェル達に笑われたよ。



「さて、それではここの最大の売りである、庭にある鉱山跡へ参りましょうか」

 にんまりと笑ったヴァイトンさんの言葉に、俺は悲鳴を上げて顔を覆い、ハスフェル達は大喜びで飛び上がって拍手なんかしていたのだった。

 そうだったよ。風呂と炬燵で考えがいっぱいだったけど、ここって地下にダンジョン付きの家だったんだよなあ……。

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