改装工事の確認開始!
「え、もう出来上がったんですか? めちゃくちゃ早くないですか?」
さすがにこの冬の間には出来るだろうとは思っていたけど、あれだけの改装工事をこんな短期間で仕上げてしまえるものなんだろうか?
残念ながら、俺に土木工事の経験は全くないので実際どれくらいで工事が終わるかなんて正直言ってさっぱりだ。
だけど、出来上がったというのなら見せていただこうじゃないか! って事で、知らせに来てくれたエーベルバッハさんとヴァイトンさんと一緒に、俺達は久し振りに従魔達も全員連れてあの別荘、いやお城へ向かったのだった。
ちなみにランドルさんとリナさん一家には、今日のところは遠慮するので後日改めてお披露目してください。と笑って言われてしまったので、見に行くのは俺とハスフェルとギイ、それからオンハルトの爺さんの四人だけだ。
ニニとカッツェを始めとした猫族軍団は、初めのうちこそめっちゃ寒い外に出て不満そうにしていたんだけど、だんだん雪を蹴散らしながら進むのが楽しくなってきたらしく、貴族達の豪邸が立ち並ぶ一角を抜けて古びたアッカー城壁をくぐった途端に、先を争うみたいにして一斉に走り出したのだった。
城壁の内部は一面の銀世界だけど、一応雪かきはしてくれているのでそれなりに道は出来ている。まあ、工事するにもこれは必要だったんだろうけどさ。
当然、俺達を乗せたマックスやシリウス達も一緒になって走り出したもんだから、馬に乗っていたエーベルバッハさんとヴァイトンさんは完全に置いてけぼりを食らってたよ。
「おお、早駆け祭りの英雄殿の従魔達は、さすがに違うなあ」
呆れたように笑いながら、二人の乗った馬がようやく追いついて来るまで、先に到着した俺達は、それぞれの従魔に乗ったままでポカンと口を開けて自分のお城を眺めていたのだった。
「うわあ、すっげえ。まるで別のお城になったみたいだ」
「おお、これは素晴らしいのう。ふむ。見事な腕前だな」
俺の呆然とした呟きに、何やら嬉しそうなオンハルトの爺さんの呟きが続く。
「いやあ、これは素晴らしい。さすがは超一流と呼ばれるバイゼンのドワーフ達だな」
「全くだ。ここまで綺麗になるとはなあ」
ハスフェルとギイも一緒になって感心している。
だって、一部の外壁が剥がれて傷んだりしていたのが何箇所もあったって言ってたもんな。だけど、ここから見る限りそれらは完璧に修理されていて、どこが傷んでいたかなんて全く分からない。
それに、聞いていた通りでお城の屋根に雪はなく、広い庭のあちこちに雪が山になって積み上がっていた。
「へえ、本当に雪かきしなくていいんだ。すげえな」
感心したように呟き、マックスに乗ったままで軽く外回りを一周した。
先に来てくれていた工事責任者のドワーフのアードラーさんと握手を交わし、時々エーベルバッハさんと二人して修理した箇所の説明をしてくれるのを俺はひたすらうんうんと頷きながら聞いていたのだった。
「では、中をご案内いたしますぞ」
アードラーさんの言葉に従魔達も一緒に入ろうとしたんだけど、ニニやカッツェも含めて全員が外で遊びたかったらしく、サクラとアクアだけは残ってもらって、他の子達はスライム達に至るまで全員が庭に出て行ってしまったのだった。
まあ、敷地はあの巨大な城壁で囲まれてるから、万一にも勝手に外へ行くことは無いみたいだし、安全確認を兼ねて敷地内は好きに見てもらう事にした。
鞍を外したマックス達は、そりゃあもう尻尾扇風機状態で駆け出していったのだった。
うんうん。あの従魔達の喜びようを見ただけで、ここを買って良かったなって気になるよな。
今回はまずは外装を最優先で直してもらい、あと頼んだのは各自の部屋とリビングに決めた部屋それから風呂場、じゃ無くて湯室くらいだ。
客室側はまだ今回は手付かずなので、リナさん達やランドルさんに泊まってもらうならこっちの棟にある空いている部屋を適当に使ってもらう予定だ。
一応掃除もお願いしてあるので、こっちの住居用の棟はどの部屋もそれなりに綺麗になっている。
ハスフェル達三人の部屋は、家具をいくつか入れ替えてもらったのと、床の補修をしてもらったくらいだから簡単に確認も終わった。
そりゃまあ、大柄な彼らが寝るんだからベッドは新しいのにするべきだよな。
それぞれの部屋を見てまわり、湯船を高くしてもらった湯室を見て大喜びし、まずは三人が自分の部屋の改装工事の書類に確認のサインをするのを俺は笑顔で眺めていた。
「それで、ケンの部屋はどんなふうになったんだ?」
興味津々と言った具合で、サインを終えたハスフェル達が揃って振り返る。
「ふ、ふ、ふ。それは俺もめちゃめちゃ期待してる。どうなりましたか?」
アードラーさんとエーベルバッハさんが満面の笑みで二人揃ってサムズアップをする。
「いやあ、最高の仕事をさせてもらったよ。集まった職人達も皆大喜びだったからな」
嬉しそうなアードラーさんの言葉に俺は思わず拍手したよ。
「では、ご案内いたしましょう。もしも気に入らぬところがあれば、どうぞ遠慮なくおっしゃってください」
笑顔で頷き、二人の後に続いて当主の部屋、つまり俺の部屋へ全員揃って向かったのだった。