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冬のバイゼンでの暮らし

 その後も雪は降ったり止んだりを繰り返して、数日の間に街の中はもうあっという間に一面の雪景色になってしまった。

 結局俺は、あの後も合計三回に分けてギルドから依頼を受けて大量のジェムと素材を納品した。おかげでせっかく少しは減った口座に、またしても大金が入金される事になったのだった。

 一応、もう遠出はせずに街の周辺にある森へ、従魔達の食事と気晴らしをかねて日帰りの狩りに行く程度で、基本的に冒険者家業は休業状態だ。

 まあ、普段やってる事も冒険者らしいと言われれば……あれ?



 ハスフェルとギイは、今もまだ郷に帰っていないケンタウロス達と定期的に連絡を取り合っているらしく、時折やって来るケンタウロスとともに、オンハルトの爺さんも一緒に三人で出掛けて行く事が何度かあった。

 まあ、例の岩食いに関しては正直言って俺に出来る事なんて何も無いので、ここは素直にお任せしている。

 一応、弁当が欲しい時にはあらかじめ言ってくれるので、そんな時にはあの鉱夫飯のストックを渡したり、空いた大きな重箱みたいな鉱夫飯の弁当箱に大量の作り置きを入れてやったりもしたよ。

 それから、商人ギルドのヴァイトンさんに紹介してもらって、噂の滑らない冬用ブーツを幾つか購入した。

 カワウソのジェムモンスターの素材の毛皮で作られたそのブーツは、中側全体が底まで毛皮になっていてめちゃくちゃ暖かい。分厚い底にはごく小さな針が仕込まれている、いわゆるスパイク仕様らしく、買う時に『人の足を踏まないようにな』なんて店の人に言われてちょっと遠い目になったよ。

 そりゃあスパイク付きの靴で、人の足は絶対に踏んじゃあ駄目だよな。



 雪が降り出して以降、街の朝市は開催されていない。

 代わりに、吹雪いていない日の昼前後の一番暖かい時間帯に、街のメインストリートである広い大通り沿いにいつもの屋台とは違って、馬車や荷車を改造した移動式店舗やキッチンカーみたいなのが並んだ昼市が開催されている。

 品揃えはそれなりだけどいわゆる生野菜の類がほぼ無くて、代わりに店に並んでいるのは、何処も保存の効く根菜類やドライフード、それから乾燥豆などが殆どだったよ。

 それ以外だと、あの朝市でも何度もお世話になった鶏肉を丸ごと焼いてる店舗や、塊肉を焼いている肉料理の専門店が、簡易の屋台の店舗じゃなくて、キッチンカーやフードトラックみたいなしっかりした移動式店舗になって同じように一箇所に固まって営業していた。

 どうして屋台じゃなくなったのか聞いてみると、要するに、急に日中にどか雪が降ると、屋台のテントが積もった雪の重みで潰れてしまうらしい。確かに言われてみればその通りだ。

 なので雪が降る間は、しっかりした箱型の移動式店舗が主流になってるんだってさ。言われてみれば納得だね。成る程成る程。

 果物は、りんごが少し出回ってるくらいでほぼ壊滅状態。ほとんどがドライフードか、砂糖漬けや蜂蜜漬けなどの保存食になって売られていた。

 まあそりゃそうだよな。ビニールハウスなんてないだろうし、仮に温室みたいなのを作って暖房をジェムに頼って何らかの作物を無理して作ったとしても、その作物の値段はそれこそとんでもない金額になるだろう。

 もしかして王都の貴族達ならやってるかもしれないけど、一般の人達がそこまでして季節外れのものを高いお金を払って無理に食べる意味は無いだろうし、そうなると当然保存出来る食材が中心になる。

 これは、自然と共に生きる人達の食生活としては当然の事なのだろう。

 でも近郊に農場はそれなりにあるらしく各種肉類や卵や乳製品はあるので、まあそれほど不自由はしていない。俺はまだまだ生鮮食料品も大量に在庫を持ってるから大丈夫だよ。

 ちなみに、俺のお気に入りの栗の屋台はすっかり数が減ってしまい、数軒が甘露煮や砂糖漬け、干した栗、それから保存が効くらしい小粒の焼き栗を売っているくらいで、あの大粒の生栗はもう売っていない。まあ、あれは旬のものなんだから、季節が終われば販売終了なのは当然と言えば当然だね。販売終了しちゃったのは残念だけど、これも俺はまだまだ大量に持ってるから大丈夫だよ。

 だけど一応、見かけたら甘露煮や砂糖漬けはお店に迷惑にならない範囲で買うようにしている。もちろん焼き栗もね。そりゃあ、自分の好きな物くらい遠慮なく買うよ。



 そんな感じで、冬のバイゼンでの暮らしをのんびりと満喫していたある日、待ちに待った連絡が俺達の元へ飛び込んできた。

 そう。あの豪邸の補修と改築がひとまず終了したという知らせだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここ数十話、春夏モノ着替え3着と下着を3着と、あったかいマント一着だけなんでしょうか?(ガンバレ、セレブ買い) 周りは樹海出身者って、某北欧ジョークみたく、きっと特性があって寒さを感じないん…
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