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グッジョブスタッフさん!

「おう、おはようさん。昨夜は大変だったらしいな」

 通された部屋には商人ギルドのギルドマスターのヴァイトンさんが待っていて、机の周りには見覚えのある猫車や大きな折りたたみ式の木箱が山ほど積まれていた。そして壁面に陣取るスタッフさん達……。

 もうこれを見ただけで、どれだけ買う気になってるかが分かり、俺も笑顔で頷いたよ。

「おはようございます。あはは、昨夜は従魔達と仲間の有り難さを思い知った日になりましたね」

 苦笑いしながらそう言うと、ヴァイトンさんも苦笑いしながら俺の背中を慰めるみたいに軽く叩いてくれた。

「おお、準備万端って感じですね。いいですねえ。何でも言ってくださればありったけ出しますよ」

 気分を変えるように出来るだけ明るい声でそう言うと、アクアとサクラが入っている鞄を足元に置いて言われた席に座る。

「いやあ、ギルド連合は頑張ったぞ。って事で、まずこれが一割引してくれる分のこちらの合計の希望数だ。もし足りなければ有るだけでいい。それでこっちはそれ以外の珍しいジェムや素材の希望数だよ」

 前回もらったのと同じ、リスト化された依頼書の束を受け取る。

「ええと何々? こっちは五万個ずつで亜種が二万個ずつ。おお、頑張ったねえ」

 昆虫系や小動物系の、いわゆる少し小さめの一般向けのジェムはなかなかの数字だ。それから他の貴重なジェムや素材もほぼ千個単位、トライロバイトの素材は五万個になっててちょっと驚いた。

 何でも、今までは武器や防具になる程の上位の素材そのものが少なかったために、錬成に必須であるトライロバイトの素材もそれほどの需要はなかったらしい。だけど俺達が色んな素材を大量に持ち込んだし、他の冒険者さん達も頑張っているみたいで、最近ではそれなりに珍しい上位の素材がこのバイゼンに集まりつつあるらしい。

 これは良い事だね。冒険者の皆さんには是非とも頑張ってもらいましょう。俺の右肩でそれを聞いて、張り切って色々出すよ! とか言ってステップを踏んでるお方がおられますので。



「ええと……多分全部あると思うので、じゃあ、順番に出していきますね」

 苦笑いしながら立ち上がってアクアとサクラの入った鞄を椅子の上に置く。

「思っとったんだが、どうしてわざわざ鞄から出すんだ? 自分で収納してるんだから、サッと出せるんじゃないのか?」

 ガンスさんの不思議そうな質問に、俺は内心で冷や汗をかきつつ鞄を叩いた。そして自分で収納しているミスリルの槍を取り出して見せる。

「ええと、武器一つくらいなら普通に出し入れ出来るようになったんですけど、俺はどうにも出し入れが下手でね。特に大量に取り出そうとすると、途中で何を出してたか分からなくなっちゃうんですよね。なので素早く大量に出す場合は、こんなふうに鞄から出したり入れたりする動作と紐付けるのが一番楽なんですよ」

 誤魔化すように笑いながらそう言い、まずは並んだ猫車の上に昆虫系のジェムを順番に取り出し始めた。

「なるほどなあ。一口に収納の能力と言っても色々と苦労はあるんだな。とは言え、どんな風にするのかはさっぱり分からんがのう」

 俺の若干無理のある説明に、ガンスさんは苦笑いをしつつも納得したみたいで笑って頷いてくれたのだった。



「さあ、どんどん出しますよ〜〜」

 気を取り直してそう言いながら、リストを確認しては次々に取り出して山積みにしていく。

 しかし、今回は待ち構えていたスタッフさん達もすごかった。

 どうやら事前にかなり入念な打ち合わせをして各自の役割分担を決めていたようで、まず俺が出したジェムを手早く下げて別の机へ移動させる人、そしてそれを専用の道具を使って鑑定しつつ数える人。数える横では預かり票にその数を記入する人、そして数え終わったジェムを持って出ていく人。

 いやあ、見惚れそうなくらいの見事なまでの連携プレイで、俺の目の前に取り出したジェムが、あっという間に撤収されて処理されていく。とにかく全然机の上に残ってないんだよ。

 バイゼンのギルドのスタッフさん達、優秀すぎだよ。

 それでもかなりの時間をかけて、まずは一割引のジェムを全部取り出して引き渡した。

「おお、かなり減った気がするぞ。よしよし、いい感じだ」

 クーヘンの店にも委託で大量に渡しているけど、それでもまだまだ在庫があったんだよな。だけどちょっと全体的に減った気がする。よしよし。

 まあ、無くなるにはまだ程遠い数があるんだけどね。あはは……。



 その後は、恐竜のジェムをはじめとした貴重なジェムの数々と素材を、これもリストを確認しながら順番に取り出していく。

 何だか、段々と俺が取り出すタイミングとスタッフさん達との息が合ってきて、楽しくなって来たよ。なにしろ俺がジェムを取り出すタイミングで、猫車をぴたりと出しやすい位置に横付けしてくれるし、ジェムが山になるとさっと下げてすぐに新しい猫車にチェンジしてくれる。

 時々ドヤ顔のスタッフさんと目が合うと俺は笑ってサムズアップを返し、時にはハイタッチを交わしつつ、また次々に流れ作業でジェムを取り出しては山にして引き渡していった。



「はい、これが最後です!」

 そんなわけで全部の引き渡し作業が終わる頃には、何だか現場全体にものすごい一体感が生まれていて、俺が最後の一つを取り出しておいた瞬間、部屋は大きな拍手に包まれたのだった。

 俺も笑って一緒になって拍手をして、スタッフさん達全員と最後に順番にハイタッチを交わしたのだった。

 ううん、何だか今日はものすごくいい仕事をした気がするよ。

 いやあ、お疲れ様でした〜〜〜〜!

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