表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1072/2066

積もる雪!雪!雪!

「ふう、ご馳走さま。お腹いっぱいだ」

 残りのコーヒーをのんびりと飲みつつ、最後のサンドイッチを食べ終えた俺はそう言って大きく伸びをした。

「さて、今日は何をするかねえ。もう郊外への狩りは終了かな?」

 俺の声にハスフェル達が振り返る。

「まあ、ジェムも素材も山ほどあるんだし、良いんじゃないか?」

 ハスフェルの言葉に、皆も苦笑いしつつ頷いている。

「じゃあ、もう今日はのんびりかなあ。ああそうだ。後でいいから、これにコーヒーを淹れておいてくれるか。もう作り置きがあんまり無いんだよ」

 忘れないうちにハスフェル達にコーヒー豆と道具を一式と、空になっているコーヒー用のピッチャーをありったけ取り出して渡しておく。もちろんスライム達が綺麗にしてくれてるから、どれもまっさら同然にピッカピカだよ。

「ああ、これは俺たちでも手伝えるからな。了解だ、じゃあせっかくだからゆっくり入れるとするか」

 そう言いながら、ギイが立ち上がって水場へヤカンを持って水を汲みに行ってくれた。

 一応ランドルさんやリナさん一家がいる時は、基本的に大量の水が必要な時には水場の水を使ってるよ。

 別に、いくらでも水が出る水筒も、珍しいけど無いわけじゃあないと言っていたから、構わないだろうとは思うんだけど、彼らがあえてそうしているって事は、やっぱりあまり見せびらかすようなものじゃあないって事だよな。

 俺は以前の世界では、基本的に隠し事とかはまずやらないタイプだったので、こんなふうに仲間だと思ってる人達に言えない事があるってのは、なんだか色々と思うところがないわけではない。

 でもまあ、話したところでどうなるものでもないしね。なのでこの辺の事に関しては明後日の方向にぶん投げると言うよりは、そもそも見ないふりをしてるって感じだ。

 君子危うきに近寄らず。

 あれ? ちょっと違うかも……?



「さあて、じゃあ何か料理でもするかなあ」

 そんな感じで、なんとなくのんびりと過ごしているのにも飽きて来たので、料理でもしようかと立ち上がったところで部屋にノックの音が響いて飛び上がった。

 ちょっと、今ノックの音には敏感です。

「ケンさん。いらっしゃいますか〜〜?」

 あれは冒険者ギルドのギルドマスターのガンスさんの声だ。

「はあい、今開けます」

「俺もいるよ〜〜」

 笑いながら聞こえたのは、ドワーフギルドのギルドマスターのエーベルバッハさんだ。

 一応、彼らなりに気を遣ってくれてるみたいだ。

「はあい、どうしました?」

 扉を開けて中に招こうとしたんだけど、二人は笑って首を振った。

「買い取る数が決まったんでな。ケンさんさえ良かったらお越しいただけんかと思ってな」

 エーベルバッハさんの言葉に俺は笑顔になる。

「ああ、ジェムの買い取りですね。了解、じゃあちょっと行ってくるよ」

「おう、ご苦労さん」

 そのまま行きかけて慌てて部屋に戻る。

「待て待て、鞄がいるって」

 一瞬でアクアとサクラが鞄に飛び込んでくれた。それからファルコが羽ばたいていつもの定位置に、大型犬サイズになったセーブルがいそいそと俺の隣に来てピッタリとくっついた。

「なんだ、一緒に来てくれるのか」

 笑ってセーブルの頭を撫でてやると、嬉しそうに目を細めてグーグーって感じに低く唸った。これは喉を鳴らす真似だ。

 その唸り声に、ガンスさんとエーベルバッハさんが驚いて飛び上がってるよ。

「ああ、大丈夫ですよ。こいつはいつも猫族軍団と一緒にいるんで、これは他の子達の真似をして喉を鳴らしているつもりなんですよ。驚かせてすみません」

「お、おう……成る程。熊は喉は鳴らせないのか」

 苦笑いしたエーベルバッハさんの言葉に、俺も苦笑いしながら頷いたのだった。

 まあ、いくら従魔とはいえ、すぐ近くで熊のジェムモンスターが唸る声を聞いたらそりゃあ驚くよな。俺も初めて聴いた時は、何を怒っているのかってマジで驚いたもんなあ。

 もう一度大きな頭をガシガシと指を立てて掻くみたいにして撫でてやり、それから二人と一緒に隣にあるギルドの建物へ向かった。



「うわあ、めっちゃ積もってる!」

 外に出た俺は、開口一番そう叫んで二人に笑われたよ。だって、裏庭が真っ白になっていたのは屋根から落ちた雪が積み上がってるんだと思っていたけど、表も予想以上に積もってたんだよ。

 ううん、これって一晩で積もる量なのか?

 一応、道路はそれなりに雪かきしてくれていて、石畳が見えているけど、道沿いには避けた雪がまだそのまま積み上がっていてちょっとした小山になってる。

「うわあ、呑気に雪合戦するとか言うレベルじゃないかも」

 大勢の人達が出て来て大きなシャベルを手にせっせと雪かきをしているのを見て、雪国の大変さを垣間見た俺は、軽率にあんなデカい別荘なんか買って大丈夫だったかなと密かに不安になるのだった。

 だって、あの超豪邸の屋根の雪下ろしをするだけでも、絶対に人を雇わないと駄目なレベルじゃね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ