今後の相談?
「いやあ、思った以上に楽しいなあ、これは」
「全くですね。これは絶対に流行りますよ」
それぞれ山ほど食べてはいるものの、どちらかというと大喜びしている草原エルフ三兄弟やハスフェル達を眺めては感心したようにそう言って頷いているエーベルバッハさんとヴァイトンさん。
彼らは、すでにこれを使って何をするのかを考えているみたいだ。
「店でするのなら、チョコタワーの前にいろんな具材を並べて、順番に好きに取ってもらうようにすべきでしょうかね」
「ふむ、或いは今のようにある程度人数を絞って、貸切りでするのもありではないか?」
「ああ、それは良い考えですね。部屋を貸切りにして時間貸しにすれば良いんですよね。装置が量産出来たらぜひやりましょう」
嬉しそうにうんうんと何度も頷きつつ、顔を合わせて相談をしている。
だけど当然その合間に何度もチョコレートソースをつけてはいろんなものを口に入れて、その度にまたしても満面の笑みで頷いている。
結局、用意したチョコレートソースと具材が全部綺麗に無くなるまで、皆して大はしゃぎでチョコレートフォンデュを楽しんだのだった。
「いやあ、楽しかったよ。しかも手早くこれだけの具材を用意してくれたケンさんにも感謝を。これは素晴らしい道具がまた一つ誕生したな。この冬の間に、まずは量産することにしましょう」
もう満面の笑みのエーベルバッハさんがそう言い、部屋は拍手に包まれたのだった。
「そうそう。雪が本格的に降り始める前に終わらせようと、まずは屋敷の外装の作業にとりかかっていて、そろそろ仕上げがもう終わるそうだよ。同時進行で内装も準備と湯殿の仕上げもしているそうだから、近いうちに引っ越してもらえると思うぞ。せっかくなんだから冬の間に少しでもあの家へ住んで欲しいからな」
笑顔のヴァイトンさんにそう言われて、俺は驚いて振り返った。
「ええ、工事の見積もりにサインしてから、まだそんなに時間って経っていませんよね?」
おそらく手作業だろうからもっとかかると思っていたので驚いてそう尋ねる。
すると笑顔のヴァイトンさんとエーベルバッハさんが教えてくれた。なんでも別注の内装と違い、外装工事などはある程度決まった作業工程なので、ジェムさえあれば様々な道具を使ってかなり早く作業が出来るのだそうだ。しかも、俺は予算は必要なだけ十分用意すると言ってあるので、ある意味作業をしてもらう職人さんの人数も最大限にまで集まってもらう事が出来ていて、あちこち同時進行で改装作業が進んでいるんだって。
素晴らしい。さすがはドワーフの職人さんだよ。
出来上がるのを楽しみに待ってるから、早くあそこに住ませてくれ。
俺は、あの広い湯船で足を伸ばして風呂に入りたいよ。だって、これだけ寒くなれば絶対に風呂の良さがいつも以上にありがたく感じられると思うんだけどなあ。
「出来上がるのを楽しみにしていますね。あれ? それじゃあもっと普段使い用のジェムとかってギルドに渡した方がいいかな?」
考えてみたら、ここへ来て買い取りに出したのってレアな素材やジェムばかりで、一割引バーゲンやってないじゃんか。岩食い騒動ですっかり忘れてたけど、もっと渡しておくべきだよな。
「ええと、ちょっと質問なんですけど、それほど高価じゃない日常使いのジェムはどうですか? 足りてます?」
するとヴァイトンさんとエーベルバッハさんは揃って顔を見合わせてから首を振った。
「まあなんとか、カツカツってところだなあ。ここは元々日常使いのジェムと同時に、様々な工具や補助動力用のジェムが普通の街よりも多くいるんだよ。一応職人兼冒険者達が交代でジェム集めに行ってくれているんでな。まあなんとかなってる状況だよ」
「余裕があるわけじゃない?」
「まあ、余裕があるとは、まだまだ言い難い状況だな。それでも少し前の、あのジェムモンスターが激減していた時期に比べたら相当良くなってるよ」
『なあ、例の一割引セール、ここでもやってあげていいよな?』
『ああ、お前が構わないならいいと思うぞ』
ハスフェルの答えに満足して、俺はピンクジャンパーのジェムと、飛び地で集めたハズレジェムと言われたアメンボもとい、ウォーターストライダーの普通のジェムも取り出した。
「こんな感じで、普段使い用のジェムが色々と大量にあるんですよね。それでハンプールや西アポン辺りでは、相談してギルドの買取評価価格の一割引で大量に販売したんですよ。一応数量限定なんで、無くなれば終わりにしようとは思ってるんですけど、今のところまだ相当数がありますので……要りますか?」
「い、一割引だと!」
二人同時にそう叫んで俺の腕を左右から掴む。
「それを一割引で、一割引で売ってくれるのか?」
真顔のヴァイトンさんの言葉に、俺はにっこりと笑って大きく頷いた。
「ええ、いいですよ。じゃあこの後で冒険者ギルドへ行って、またギルド連合でまとめて商談しますか?」
壊れたおもちゃみたいにぶんぶんとものすごい勢いで頷く二人を見て、俺はもう笑いそうになるのを必死で我慢していたのだった。
よしよし、これでまた手持ちのジェムが少しは減りそうだな。