表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1058/2066

宿泊所への帰還と暇つぶし

「うああ、やっぱり寒いぞ〜〜!」

 走るマックスの背の上での俺の叫びに、後ろを走るハスフェル達も揃って苦笑いしつつ何度も頷いていた。

 何しろとにかく寒い!

 大急ぎで、木陰で作り置きの食事を済ませた俺達は、小雪がちらつく中をなんとかバイゼンの街まで戻って、とにかく宿泊所へ駆け込んでひとまず暖を取ったのだった。

 湯を沸かして緑茶を入れてやると、ハスフェル達だけで無くランドルさんやリナさん一家も大喜びしていた。

 その後は、ハスフェル達は取り出したお酒を飲んでいたよ。まあ暖を取るなら断然そっちのほうが早そうだな。



 宿泊所には、一応ジェムを入れて使う暖房器具が置いてくれてあるので、部屋はそれほど時間をかけずにそれなりに暖かくする事が出来る。

 まるでガスファンヒーターのように勢いよく温風が出てくる大きな箱型のそれの前には、小さくなった猫族軍団と、ニニとカッツェが占領していてとろけている真っ最中だ。

「あはは、やっぱり冬はこうでなくちゃあなあ。そうそう、猫は寒がりだもんなあ」

 笑う俺の言葉にニニ達は一斉に振り返って、揃って声の無いにゃーをしてくれたよ。

 なんだよそれ。俺を萌え殺す気か!



 だけど、俺達に温風が全然来ないと言って笑っていると、何故かギイが同じような暖房器具を収納して持っていたらしく、それを出してくれたおかげで俺達も暖かい思いをする事が出来たのだった。

「じゃあ、もう今日は休憩でいいな」

 二杯目の緑茶を飲み干した俺の呟きに、ハスフェル達も顔を見合わせて頷き合った。

「まあ、これだけ気温が下がって雪が降れば、積もるまであっという間だろうからな。もう春まで狩りは休憩だな」

「って事は、春まで冒険者家業はお休みって事だな」

 笑った俺の言葉に、ハスフェル達が揃って頷く。

「まあ、場合によっては雪の中でも出る狼系のジェムモンスターの討伐依頼が来る事もあるから、たまにはギルドへも顔出しはすべきだがな」

「これだけの従魔を連れている俺達なら、いざとなれば雪の中でも出られるからな。早々は無い依頼だが、一応覚えておくようにな」

 真顔のハスフェルとギイの言葉に、ランドルさんやリナさん一家も真顔になる。

「確かにその通りですね。万一何かあった場合、我々に緊急出動の指名依頼が来る可能性は高いですね」

「そっか。そんな場合もあるんだ。了解。気をつけておくよ」

 そう言われたら知らん振りは出来ない。俺も真顔になって頷いたのだった。

「まあ、そうは無いからなあ。ただ、今はまだ例の岩食いの件が完全に終わったと確信出来ていないだけに用心が必要だよ」

「あれ、そうなんだ。賢者の精霊が出て来てくれた時点で、俺はもう終わってると思ってたよ」

 急須代わりのポットから、すっかりふやけた茶葉を取り出しながら驚いて顔を上げる。

「まあ、もう大丈夫だとは思うがな。完全に地下に潜られたら、出て来るまで感知出来ないからなあ」

 ため息と共にハスフェルがそう言い、嫌そうにギイも頷いている。

 どうやら、何種類かあるモンスターの中でも、あの岩食いってのが最悪の奴みたいだ。

「まあ、それに関しては正直言って今の俺に出来る事なんて無いからさあ。悪いけどそっちは賢者の精霊殿にお任せだな」

 ニニ達と一緒になってこっそり暖を取っているベリー達をこっそり横目で見つつ、苦笑いした俺はそう言って取り出した茶葉をスライム達にまとめてあげた。

「ほら、食っていいぞ。じゃあどうする? もうちょい何か食ってから休むか? それとも、ゲームでもして遊ぶか?」

 確かハンプールのホテルでカードゲームやボードゲームみたいなのをして遊んだ記憶があるので、何か考えても良いかも。

「それならいくつか持ってるから、食事の後は皆で遊ぶか。俺たちのおすすめは、立身出世だぞ」

 あの、某人生ゲームみたいなアレか。確かにこれだけの人数がいれば面白いかも。

「確かに面白いけど、あれって何人まで出来るんだ?」

「確か最大十人までだったはずだから、この人数なら出来るぞ」

 にんまりと笑ったハスフェルが、見覚えのあるボードゲームを取り出すのを見て、リナさん一家が揃って吹き出す。

「それは凄い。そのボードゲームは大人気でなかなか手に入らないんですよ。一体どうやって手に入れたんですか!」

 目を輝かせるアーケル君の叫びに、ハスフェルとギイが揃って吹き出す。

「おう、ホテルハンプールに世話になった時に、部屋に置いてあって遊んだら面白かったんで、支配人に聞いたんだよ。面白かったから買いたいんだけど、どこで売ってるんだってな」

「そうしたら、翌日には一式届けてくれたんだ。しかもそれだけじゃ無くて、支配人お勧めのボードゲームやカードゲームを幾つも持って来てくれてな。言っておくが、きちんと金は払ったぞ」

 最後は俺を振り返りながら何故かドヤ顔の二人が揃ってそんな事を言う。

「あはは、もしかしてあのホテルハンプールの支配人さんってゲーマーなのかも。お仲間が出来て嬉しかったのかもな。じゃあ次回お世話になる時は一緒に遊んでもいいんじゃないか」

「確かに、このカードゲーム辺りは、ゲームマスターがいないと出来ないみたいだしなあ」

 おお、もしやそれはいわゆるリアルロールプレイングゲームってやつですね。俺も実際にカードではやった事無いよ。

 って事で、昼食は作り置きをいろいろ出してやり、そのままその日はゲーム三昧になったのだった。

 まあ、たまにはこんな日があってもいいよな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ