表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1056/2066

新たな武器の発見!

「ううん、やっぱり目標が小さいと斬りにくいぞ!」

 ふわふわと目の前に飛んで来る、この世界にしては小さな雪蛍を俺は文句を言いつつもひたすら持っている剣で斬り続けていた。

 ランドルさんも、最初のうちは俺と同じで剣を使って戦っていたんだけど、途中から剣を収納して不思議な武器に持ち替えていた。

 それは二本ある棍棒みたいな武器で、両手で一本ずつ持って振り回しては雪蛍を大量に叩き落としていた。

 しかもその武器は、ちょっと変わっていて金属製なのだ。

 一見すると細い棍棒みたいにも見えるけど、よく見ると肝心の棒の部分にいくつもの凹凸があり、あれで殴られたら相当に痛いだろうことが容易に予想出来た。

 しかも、その凸凹になった部分はどうやら少しだけ稼働するらしく、振り回すと少しだけ鞭のようにしなって見える。何とも不思議な武器だ。

 長さは、ハスフェルやオンハルトの爺さんが持っているいわゆる革製のしなやかな鞭よりもかなり短めで、多分武器になる棒の部分は1メートルもないくらいだと思う。

 だけど、振り回しても鞭みたいに大きく弧を描くわけではないので、近くにいる俺もそれほど怖くはなかったよ。



「へえ、そんな武器もあるんだな」

 ちょっと雪蛍の出現が収まったところで、俺は剣を手にしたまま何度か深呼吸して息を整えてからランドルさんを振り返った。

「ああ、これは硬鞭(こうべん)と呼ばれる武器で、まあ珍しいでしょうね。俺は昔バッカスに作ってもらったこれをずっと使っています。基本はこうやって両手で持って振り回して使いますが、鞭ほどの長さは無いので両手剣と同じ感覚で扱えますよ。まあ、攻撃範囲もほぼ剣と同じで、これは斬るのでは無く、打撃を目的にした時に主に使う武器になりますよ」

「いやいや、だけど今みたいに小さいのがたくさん出てきた時なんかは、絶対剣よりも攻撃範囲は広そうだな」

 ちょっと興味があったので覗き込みながらそう言うと、笑ったランドルさんがその武器を見せてくれた。

 一旦剣を鞘に収めてから両手で受け取る。

「へえ、意外に重いんだ。でも、これは良いかも……」

 さっき、ランドルさんがやっていたのを真似て、両手で一本ずつ持ち少し振り回してみる。

「おお、これは素晴らしい。しっかりと扱えているのはさすがですね。良いですよ。お貸ししますから一度使ってみてください。剣よりも少し重いので、取り回す際には体を持って行かれないように、こんなふうにして少し腰を落としてやるといいですよ」

 笑ったランドルさんがそう言って構えのポーズを取ってくれたので、それを真似て少しいつもよりも低めに腰を落として構える。

「上手く出来ていますよ。では頑張ってください」

 笑ってそう言うと、ランドルさんは今度はハスフェル達が使っているみたいな長い革製の鞭を取り出した。

「近いと危険なので少し離れますね。ケンさんはここでどうぞ」

 下がってくれたランドルさんにお礼を言って、俺は両手で改めて硬鞭を構えて息を止めた。



「よしこい!」

 ちょっと多めに出現した雪蛍の塊を俺は左手で持った硬鞭で大きく叩き斬るみたいにしてまとめてジェムに変える。転がるジェムと素材には見向きもせず、そのまま振り返る勢いで右手に持った硬鞭でこっちに向かって来た数匹の雪蛍を一気に叩いた。

「ランドルさん! これ良い。俺、これ気に入りました! 何より両手を自由に使えるのが良い!」

 笑ってそう叫んで、また次の雪蛍の群れをまとめて叩き落とした。



 俺は元々右利きなんだけど、実は左手もかなり使えるんだよな。

 ちょっとしたメモ書きだったり、印をつけたりするくらいなら左手でも書けるんだよ。

 これは多分、もともと左利きだったのに、子供の頃に覚えてないけど直されたんだろうと思っている。だからなのか、ジャム瓶の蓋を開けたりするのっていつも無意識に左手で開けてるんだよな。

 まあ、ナイフや短剣は扱った事が無いから、実戦で使うのはちょっと難しそうだけど、これならほぼ無意識で使える。単なる棒だから、武器の向きを気にしなくていいのも大きい。

 ううん、これはハンプールへ戻ったら、バッカスさんに作ってもらえないか聞いてみてもいいかも。

「おやおや、気に入っていただけましたか! それならここの職人でも言えば作ってくれると思いますよ。珍しい武器ですが、扱う人がいないわけではありませんから、もしかしたらここなら探せば売っているかもしれませんね」

 嬉しそうなランドルさんの言葉に俺も笑顔になる。

「いいですね。じゃあバイゼンヘ戻ったら、この硬鞭って武器を売ってる店がないか探してみる事にしますよ!」

「いいですね。その際には俺も是非ともご一緒させてください! 実はもう少し長めのも欲しいと思っていたんですよね!」

 そう言って、手にした硬鞭で久々にランドルさんの目の前に大量に出てきた雪蛍をまとめて叩き落とした。

「是非お願いします! 一緒に探しましょう!」

 笑った俺がそう答えて、こちらはちょっとだけしか出てこなかった雪蛍を順番に叩き落としていったのだった。



 いいねえいいねえ。これぞ異世界って感じがする。

 せっかくなんだから、剣だけじゃなくて、やっぱりいろんな武器で戦ってみたいって思うよな!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ