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夕食と雪蛍狩りの再開

「うわあ、あったまるなあ」

「うん、確かにこれはいいね。すっごく美味しいです!」

 俺の呟きに、お皿からソーセージを引っ張り出して丸ごと齧り付いていたシャムエル様が、嬉しそうにそう言ってうんうんと頷いている。

 新作のポトフは、どうやらシャムエル様も気に入ってくれたみたいだ。

 もちろんソーセージだけじゃあなくて、入っていた具は一通り希望されたので、結局俺は、食べ始める前に先に自分用のお代わりを取りに行ったよ。

 まあ、大量に作ってたからまだまだ有るんだけど、ハスフェル達の食べっぷりを見ていると、先に確保するのが正解だと思ったんだよ。

 それにしても、このネルケさん直伝のレシピで作ったポトフは確かに絶品だ。特に、こんな寒い日に食べるには最高だよ。スパイスも効いてて体が芯から温まる気がする。

 ハスフェル達やリナさん一家、ランドルさんも、それぞれ一口食べて笑顔になった後は、もう全員が黙々とものすごい勢いで食べ始めていた。

 もらったソーセージはまだまだあるから、また時間のある時に色々具を変えて作っておこう。カブだって探せばありそうだし、ロールキャベツを入れても良いと思う。

 そんな事を考えながら、俺も黙々と温かいポトフを美味しく頂いたのだった。



「ふう、ご馳走様。美味しかったよ」

 余裕で一人前はあったポトフを完食したシャムエル様は、今はご機嫌で尻尾のお手入れの真っ最中だ。

「自分で作って言うのもなんだけど、確かに美味しかったよな。いいレシピとスパイスをもらったよ。今度ハンプールへ戻ったら、また何かお礼をしないとな。ううん、ワンパターンだけど、ハイランドチキンとか熟成肉辺りかなあ」

「ご主人、それなら今度は、このバイゼンの鉱山の奥地にいる岩豚を捕まえて来てあげますね。あれはすっごく美味しいんですよ。特に冬場の岩豚は絶品なんですから。ぜひご主人や仲間の皆さんにも食べていただきたいです」

 俺の呟きを聞いたヤミーが、得意気にそう言って俺の足元に頭を擦り付けてくる。

 今は警護のために巨大化したサイズのままなので、手を伸ばして太くて大きな首元をそっと撫でてやった。

「へえ、それは初めて聞くけど、普通の豚とは違うのか?」

 急に雪豹のヤミーと話を始めた俺を見て、皆が不思議そうにしている。

「豚? 何の話だ?」

 不思議そうなハスフェルの質問に、顔を上げた俺は笑って、ヤミーから聞いた岩豚の話を皆に教えた。

「岩豚ですって!」

 すると、何やらリナさん一家とランドルさんが大興奮状態になってる。ハスフェル達も揃って拍手なんかしてるし。

「あの、是非捕まえた暁には俺達にも食わせてください! 冬の岩豚って手に入らない事で有名な超高級食材なんですよ」

 アーケル君がそう言って、ヤミーに真剣な顔でお願いしている。

「もちろん。ご主人が良いって言えば私は構わないわよ」

「それなら私も狩りの時には手伝いましょう。冬の岩豚は、確かに絶品ですからね」

 今はトラックサイズになってるセーブルも、テントの外でヤミーの声を聞いて嬉しそうにそんな事を言ってる。

「へえ、そんなに美味しい高級食材なんだ」

 皆がそこまで言うのなら、脂がたっぷりの猪みたいな感じなんだろうか?

 グラスランドブラウンボアよりも美味しいのなら、俺も是非食べてみたい。

「じゃあ、無理のない範囲で捕まえられるなら、お願いしてもいいかな」

 目を細めて喉を鳴らすヤミーを撫でてやりながらそう言うと、狼コンビとマックスとシリウスも張り切り出した。

「待て待て、今夜は今から皆で雪蛍狩りに行くんだからな。期間限定の貴重な素材と色付きジェムが落ちるんだから、今日のところは雪蛍優先で頼むよ」

 放っておいたら、今すぐにでもその岩豚狩りに行ってしまいそうなマックス達を慌てて止めて、順番に言い聞かせながら撫でてやる。

「仕方がありませんねえ。それじゃあ今日は雪蛍で我慢しましょう。でもあれは、全然抵抗して来ないから、あまり面白くないんですよねえ」

 すっごく残念そうにそんな物騒な事を言われてしまい、俺は慌てて首を振った。

「待て待て、お前ら何物騒な事言ってるんだよ。安全にジェムモンスター狩りが出来るんだから、いいじゃないか!」

「ええ、せっかくだからもっといっぱい戦いたいです! ねえ!」

 何故かニニまでが嬉々としてそんな事を言い出し、他の従魔達も岩豚狩りに行きたいとか言ってるよ。

「だから、それはまた今度な。急がないから! 今日のところは雪蛍狩りでお願いします! ほら、もう行こう。日が暮れてきたよ」

 何とかそう言って従魔達をなだめて、俺達は大急ぎでテントを撤収してまたあのサッカー場みたいな広い岩場へ向かった。



「おお、もう出ているじゃないか。それじゃあ、昨日と同じ配置でいいな」

 まずは、大急ぎであちこちに取り出したランタンに火を入れて置いて回り、光源を確保する。

 それから鞭を取り出したハスフェルの言葉に、皆口々に返事をして昨日と同じ場所に散って行った。従魔達は先を争うようにして足場の悪い水場へ散って行った。

「気をつけてな。そっちは任せるよ」

 笑って手を振りながらそう言ってやると元気な返事が返ってきたよ。皆、なんだかんだ言っても目の前にジェムモンスターが出たら、張り切ってくれるんだよな。

 今回は草食チームも参加しているので、まさに総力戦状態だ。

「ううん、どう考えても過剰戦力だけど、まあ、安全第一だよな」

 苦笑いした俺は、手にした剣で目の前にふわふわと飛んできた小さな蛍を叩き斬ったのだった。

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― 新着の感想 ―
獣魔たち、岩豚と雪蛍の二手に分かれて狩に行ったら良いのに〜って思うけど、獣魔たちにとっては退屈な蛍よりも豚にみんな行きたくなっちゃうよねʬʬ
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