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ポトフは夕食? それとも朝食?

「さてと、それじゃあ何を出してやるかな。それにしても、これは朝食なのか? それとも夕食なのか? ううん、どっちなんだろうなあ」

 寒いので、中に入って一旦テントの垂れ幕を全部下ろした俺は、羽織っているもこもこマントにくるまって腕を組みながらメニューを考えつつ、そんな馬鹿馬鹿しい事も考えていた。

 いずれにせよこの後、また一晩中寒い中をジェムモンスター狩りをするわけだから、しっかり食っといたほうが良いのは間違いない。

 だけど、今から料理をするのは面倒なので、ここは作り置きから何か出せばいいよな。

「ここまで寒くなってるんだから、やっぱり何か温かいものがいいよな。となると鍋かスープあたりか。何を出そうかな。ああそうだ! ネルケさんからもらったレシピで作ったあのシンプルポトフにしよう。あれなら絶対暖まりそうだしな。サクラ、ネルケさんのポトフの入った大鍋を出してくれるか」

「はいどうぞ。これだね」

 そう言って取り出してくれたのは、大きな寸胴鍋だ。

「おう、ありがとうな。一応、もう一回火をつけて温めておくか」

 小さくそう呟いて、寸胴鍋をコンロに乗せて弱火にかけておく。

 これは元々熱々のをそのまま収納してあるからそれ程煮立たせる必要はないよ。冷めない程度の火加減で大丈夫だ。

「これはご飯よりもパンが良さそうだな。それじゃあ、あとはパン色々とサラダくらいかな。ああ、温野菜をちょっと追加で入れてもらうようにすれば良いな。もうそれがあればいいか。ベーコンとソーセージがガッツリ入ってるから、案外ボリュームもあるもんな」

 ブロッコリーもどきと、大粒の豆を煮たのがあったので、それを取り出してお皿に盛り付けておく。各自好きに取ってもらうトッピング用だ。

「あとは、需要があればデザートくらい出してやるか」

 俺はこれだけあれば充分な気もするけど、皆大食いだからね。



「おおい、食事の準備が出来てるから来てくれて良いぞ」

 垂れ幕から顔を出して呼んでやると、あちこちのテントから返事が聞こえて出て来た。皆寒いからテントに戻っていたみたいだ。

「寒いから、ポトフにしたよ。これはクーヘンの義理のお姉さんのネルケさんが教えてくれたレシピで作ったポトフだよ。中に入ってるソーセージもクーヘン達が総出で作ってくれたんだってさ。ポトフの味付けに使ったこのスパイスも、代々伝わる秘伝のスパイスらしいよ」

 そう言って、ネルケさんからもらったスパイスの入った瓶を取り出して見せる。

「へえ、そりゃあ凄いですね。良いなあ一家総出でソーセージ作りなんて」

 笑ったアーケル君が嬉しそうにそう言って寸胴鍋を見る。蓋を開けてやると一気に湯気が出て、何となくテントの中が暖かくなった気がしたよ。

「はいどうぞ。そこの野菜と豆は好きにポトフに追加して入れてくれよな。足りなければまだあるから好きなだけどうぞ」

 いつものごとく、自分の分は自分で用意してもらう作戦だ。

 出しておいたスープ用の大きめの深皿をそれぞれが手に取り、嬉々としてポトフに群がる。

 俺も慌てて争奪戦に参加したよ。



「これにはやっぱりフランスパンが良いよな」

 少し考えて、自分が食べたいのでハードタイプの大きなフランスパンもどきを追加で取り出し、分厚く切ってたっぷりと並べておく。いつもの丸パンと食パンも出してあるから、焼きたい人は自分でオーブンで焼いてもらうのもいつもの事だ。

「フランスパンは焼き立てだから、そのままでいいな」

 まだパリパリの切ったフランスパンを見てそう呟き、交代でオーブンを使っているハスフェル達を横目に俺は先に自分の分の準備を済ませて、いつもの簡易祭壇にポトフとフランスパンもどき、それからサラダを並べた。ハスフェルが赤ワインを瓶ごと渡してくれたので、それも一緒に並べておく。

 たっぷり取ったポトフには、追加で入れたブロッコリーもどきと色んな豆が彩りを添えていてとても華やかだ。

 地味な茹で野菜と煮豆だけど、ここは良い仕事をしているよな。

「一気に寒くなったので、ポトフにしました。クーヘンの義理のお姉さんのネルケさんから教えてもらったレシピだよ。美味しいので少しですがどうぞ。この後は、一晩中雪蛍狩りをするんだって。これ以上雪が降らないようにお願いします」

 一応神様なんだから、これくらいお願いしてもいいよな。

 手を合わせて小さな声でそう呟き、いつもの収めの手が俺の頭を撫でてから、もふもふマントの縁をそっと突っつき、それからポトフやパンを順番に何度も撫でてから消えていくのを見送った。

「良いだろうこれ。すっごくあったかいんだぞ」

 笑ってそう呟いて襟元を直した。

 絶対シルヴァやグレイ達が着たら、このもこもこマントは俺なんかよりも彼女達の方が断然似合いそうだ。

「服や道具なんかは届かないのかねえ」

 そんな事を考えながら、祭壇に並べていた分を持って席へ戻り、待っていてくれた皆にお礼を言ってから、揃ってもう一度手を合わせてから食べ始めたのだった。

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