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おはようと冬将軍のお出まし?

 ぺしぺしぺし……。

 ぺしぺしぺし……。

 ふみふみふみ……。

 ふみふみふみ……。

 ふみふみふみ……。

 カリカリカリ……。

 カリカリカリ……。

 つんつんつん……。

 チクチクチク……。

 ショリショリショリ……。

 ふんふんふんふん!

 ふんふんふんふん!

 ふんふんふんふん!

「うん、起きる……」



 俺達が寝ている間に狩りに行っていた子達も、いつの間にか戻って来ているみたいだ。

 半ば無意識に返事をした俺は、そんな事を考えながら大きな欠伸をして、胸元にピッタリとくっついて抱き枕になってくれているフラッフィーのもふもふ尻尾を腕を伸ばして撫でた。

 だけどからかうように逃げる尻尾を無意識に追いかけようとして、ずり落ちた毛布のせいで袖がまくれた腕が外に出て震え上がる。

「うわっ、何だこれ。めちゃめちゃ寒いぞ。ニニとマックスの間にいたら暖かくて気が付かなかったけど、めっちゃ冷え込んでるじゃんか」

 毛布を引き上げながら、そう呟く。

 ちなみにかなり明るくなってから寝たから、当然だけどそろそろ日が傾き出している時間だ。

「ええと、今何時だ?」

 眠い目を擦りつつ、顔を上げてそう呟く。

 時計なんて無いので郊外では正確な時間は分からないけど、今から何か食べれば、夜の雪蛍が出る時間には現場に行けるだろう。



「ううん、それにしても寒いなあ。次に寝る時はあの冬用のもこもこマントを羽織って寝るか。あれなら背中側や腕もあったかいもんなあ」

 さすがにこれだけ冷えると、いくら従魔達が温めてくれるとはいっても、郊外で寝る時にそれなりの防寒装備はしたほうがよさそうだ。

 そんな事を考えながら、冬毛になって絶賛もふもふ倍増中のニニの腹毛の中へ潜り込む。

「うああ、やっぱりここが一番幸せだよ〜〜〜〜あったけえ〜〜〜〜!」

 もふもふに顔を埋めて大きなため息を吐く。

「ああ、この至福の時……」

 そして当然、そのまま二度寝したよ。

 もふもふの癒し効果、相変わらず凄い。



 ぺしぺしぺしぺし……。

 ぺしぺしぺしぺし……。

 ふみふみふみふみ……。

 ふみふみふみふみ……。

 ふみふみふみふみ……。

 カリカリカリカリ……。

 カリカリカリカリ……。

 つんつんつんつん……。

 チクチクチクチク……。

 ショリショリショリショリ……。

 ふんふんふんふん!

 ふんふんふんふん!

 ふんふんふんふん!

「うん、起きてる……起きてるってば……」

 また無意識に返事をしつつ、内心で大いに焦る。



 待て待て、今朝の最終モーニングコールは、お空部隊じゃんか。

 まずい、起きろ俺〜〜〜!



 内心では大慌て状態なんだけど体の方は相変わらず寝起きはグダグダ。何とか起きあがろうとゴソゴソしていると、軽い羽ばたきの音と共に額の生え際と耳たぶ、それから上唇をギリっとまるでペンチでひねられたみたいにちょびっとだけ噛みつかれた。

「痛い痛い痛い〜〜!」

 情けない悲鳴を上げて、あったかパラダイス空間から転がり落ちる。

「ご主人起きた〜〜〜!」

「そろそろ起きる時間だもんねえ〜〜!」

「やっぱり私たちが起こして上げないとねえ〜〜〜!」

 得意気に、嬉々としてそんな事を言ってるお空部隊の面々を、起き上がった俺は両手で捕まえて順番におにぎりの刑に処してやった。

「上唇を噛んだのは誰だ〜〜〜〜冗談抜きで痛かったぞ〜〜〜〜!」

「はあい、それは私で〜〜〜す!」

 悪びれもせずに返事をする、真っ白なオウムのブランを追加で逆毛の刑に処してやった。

 要するにやってて俺が楽しい、胸元のあたりから顎の下まで、横に当てた指を上下させて羽根を逆立てては戻す撫で方だ。この後に目の横の耳の部分を指を立てて掻いて頭全体を撫でてやるまでがお約束のコースだ。

 ブランの全身は真っ白なんだけど、冠羽と呼ばれる頭頂部にある長くて綺麗な羽は黄色い色をしている。これをわざと起こしてやるのもなかなかに面白い。

 この立ち上がった冠羽の根本部分って、実は禿げてるんだよな。隣にくっついて来たモモイロインコのローザの額部分も、長くはないけど冠羽が立ち上がるようになってて、やっぱり頭頂部にハゲがあるんだよなあ。なかなか面白いので、いつもここを撫でて遊んだりしている。

 二匹揃って嬉しがって頭を下げて後頭部をこっちに向けてくるので、指先でガシガシと擦ってやったよ。



「さて、それじゃあ寒いけど起きるとするか」

 何とか起き上がって、毛布を体に巻きつけたままゆっくりと立ち上がってスライムベッドから降りる。

「顔洗ってくるよ」

 身支度を整え、剣も装備してから収納していたもこもこの縁取り付きのマントを取り出して羽織り、テントの垂れ幕を引き上げた俺は思わず声を上げた。

 薄暗い空から、小粒の雪がちらほらと降り始めていたのだ。

「うわあ、雪だよ!」

 関西の中心地出身で、そのまま関東の大学に入って就職した俺は、いわゆる雪国の生活ってのを全く知らない。

 どちらの都市も、数センチ雪が降っただけで都市機能が麻痺してトップニュースになるくらいだったからな。

 なので、雪が降っただけで超テンション上がるよ。通勤の心配しなくて良いここなら尚の事だって。

 子供みたいにポカンと口を開けて降り始めた雪を見上げていると、ハスフェルとギイがテントから出て来て同じように空を見上げた。

「おお、ついに降り出したか。思ったよりも早かったな。寝ていても寒いくらいにかなり冷え込んでいたからなあ」

「だけど、すぐ止みそうだぞ。まあ、初雪ならこんなものだろうさ」

 苦笑いする二人の会話を聞きながら、氷みたいな湧き水で顔を洗う。

「うひゃあ〜〜冷たい!」

 慌ててサクラに助けてもらう。

「おはよう、でいいのかな。ええと雪が降ってるみたいだけど、どうする?」

 ハスフェルと水場を交代しながらそう尋ねる。

「おう、おはようさん。まあ、これくらいなら問題無いさ。逆に今狩っておかないと、本格的に雪が降り出したら雪蛍の出現が終わるからな」

 同じくスライムに水を拭ってもらったハスフェルの言葉に納得して空を見上げる。

 確かに雪雲っぽいのが広がっているけど、所々雲が切れてまだ青い空が見え始めている。

「じゃあ、予定通り、飯食ったら雪蛍狩りだな」

「ああ、それで行こう。とりあえず今夜はまだ天候は保ちそうだから、狩れるだけ狩って帰ろう」

 同じく顔を洗ったギイがそう言うのを聞き、俺は食事の準備をする為にテントへ戻ったのだった。

 はあ、このもこもこマント、めっちゃあったかいよ……。

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