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俺のライフはもうゼロだって!

活動報告でも書きましたが、第三回アーススターノベル小説大賞にて、入選作に選んでいただきました。

三月に出版予定で、ただいま絶賛準備中です。

Amazonや楽天では早速予約も始まっているみたいです。

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「うああ、やっっぱりそうじゃんか! 一番上まで来た〜〜〜〜〜!」

 かなりの長い時間暗くて急な坂道を延々と登り続けてようやく止まったその時、目の前に広がった見覚えのある光景に俺は情けない悲鳴をあげて顔を覆った。

 そう、止まったトロッコの目の前にあったのは、閉まったシャッターのような巨大な壁。そしてギリギリと音を立ててゆっくりと上がっていく、まさしくシャッターのような壁だった。

「では今一度、安全ベルトの確認をお願いいたしますぞ!」

「は〜〜〜い!大丈夫で〜〜〜っす!」

 綺麗に返事が揃い、またしてもバンザイよろしく両手を上げる草原エルフ三兄弟。しかし、今回同じように返事はしたものの、バンザイしたのはリナさんとアルデアさんだけだった。

 それ以外は、俺を含めて全員が目の前の手すりに両手でしっかりとしがみついた。

「では、第二弾参りましょうぞ!」

「お〜〜〜〜〜〜〜!」

 嬉々としたリナさん一家の応える声が聞こえた直後、進んで行ったトロッコは開いたシャッターの外へ出ていった。


「どっへぇえええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 始めの時よりもさらに強烈な無重力感を伴って一気にトロッコが坂道を下り始める。


「ふぎゃ〜〜〜〜〜〜!」

「ひょっほおお〜〜〜〜〜〜〜〜!」

「うひょ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 背後から、これまた聞き覚えのある悲鳴が聞こえてきたんだけど、ハスフェルとギイの二人の悲鳴は音は同じだけど込められた感情が180度変っていた。

「何だよ! お前らのその嬉しそうな悲鳴は!」

 必死になって前屈みになって手すりにしがみつきながら、ちょっと後ろを振り返ってそう叫ぶ。

「だって面白ぇじゃないか!」

「全くだ。こりゃあ面白い!」

 何故か嬉々とした返事が聞こえて、その直後にアイゼンさんとリナさん一家が揃って吹き出す音も聞こえた。

「気に入ってくださって嬉しゅうございますぞ! 午前中のコースよりもさらにハードコースになりますので、どうぞお楽しみに!」

 振り返ったアイゼンさんの笑い声に、俺は気が遠くなったよ。

「あれよりすごいって、一体何するつもりですか! それより運転手は前を向いててください!」

 思わず叫んだ俺の突っ込みに、今度は俺以外の全員が揃って吹き出してた。

 なんだよ、俺、なんか間違ったこと言ったか!

「登る時は少々操作をいたしますが、下っとる時ははっきり言って運転手は何もする事が無いですからなあ」

 ゲラゲラと大笑いしながら、アイゼンさんがすごく残念そうにそう言って両手を上げる。

「だから運転手が走行中にハンドルから手を離すな〜〜〜!」

 再度の突っ込みも笑ってスルーされたよ。

 いいのか、こんなに緩くて! 異世界の安全基準はどうなってるんだ!



 ガラガラと轟音を立てて下っていくジェットコースター……じゃなくてトロッコだけど今のところ、はっきり言って午前中より少しスピードが出ているくらいでそれほど変化は無い。

 ちょと安心したその時、ずっと縦穴の壁面沿いにぐるぐると螺旋状に下っていたトロッコがまた横道へ入っていった。

 しかも今度は急に直角に近く曲がるんじゃなくて、壁面沿いに斜めに口を開けた広い通路へと突っ込んでいったのだ。

 そしてそのまま薄暗い細い通路を一気に下る。

「なんとなく嫌な予感がするんだけどなあ……」

 両手でしっかりと手すりを握りしめて顔を上げた時、トロッコは一気に広くなった空間へ、もの凄い勢いで全くスピードを殺さず突っ込んでいった。



「どっへぇえええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 はい、本日3度目の本気の悲鳴です。

 何しろそこにあったのは、さっきの竪穴ほどの広さはないけど、ちょっとした野球場くらいはありそうな巨大な空間だった。

 おそらく鍾乳洞のあった空間なのだろう。天井にはびっしりと氷柱状になった鍾乳石が見えて目を見張った。

 しかし、止まるどころか突っ込んでいったトロッコの先にあったのは、ジェットコースターのお約束、はるかに高い天井にまで届きそうな程の超巨大なループだったのだ。


 勢いをつけたトロッコは、そのまま上を向いて空中をぐるっと一回転するように設置された太いレール沿いに一気に空中へと上がって行き、そのまま巨大なループに沿って豪快に一回転したのだ。

 完全に天地がひっくり返って情けない悲鳴を上げる俺。そしてなぜか大爆笑になるリナさん一家とハスフェルとギイ。

 悲鳴もあげずに手すりにしがみついた姿勢のままで固まってるランドルさんが若干心配だけど、残念ながら俺に人を気遣う余裕なんて無い。

 そして何故か悲鳴が聞こえてこないオンハルトの爺さんも気になる。

 一気に大回転して地上へ戻って来た時、突然オンハルトの爺さんが笑い出した。

「いやあ、こりゃあ最高だな。まさかこう来るとは! これを考えたドワーフ達に心からの賛辞と拍手を贈るよ。ドワーフの遊び心と高い技術に讃えあれ!」

「おお、ありがとうございます!」

 笑ったアイゼンさんの言葉にまた皆が笑う。

「この後も楽しいですから、どうぞご期待ください!」

 嬉々としたアイゼンさんの言葉に、俺はもうこれ以上ないくらいの情けない悲鳴を上げたのだった。



「もう勘弁してください! 俺のライフはもうゼロだって〜〜!」

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