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鉱夫飯を食べるぞ!

「では、いただきます!」

 声を揃えてそう言った俺達は、嬉々として鉱夫飯の取手を外して蓋を開いた。

「うおお、今日は豚肉かあ。これは美味そうだ」

 いつものごとく三段になった弁当箱の一段目には、ちょっとしたステーキくらいはありそうな大きさの豚肉が全部で五枚、焦茶色の多分照り焼きのタレっぽいのに絡めて焼いたのが入っていた。それから前回も入っていた、大きなウインナーが二本丸ごと焼いたのが並んでいた。

 肉の隙間には半分に切ったゆで卵が全部で四個、つまり二個分が若干無理やり押し込まれていて、端っこにアスパラガスみたいなのが数本だけひっそりと入っていた。完全におまけレベル。でもまあゆで卵の白と黄色、それからこのアスパラもどきの緑があるおかげで、茶色一色にはならなくて済んでた。

 うん、彩りって大事だよな。

「確か前回も、こんな感じでブロッコリーが申し訳程度に入ってたよなあ」

 栄養バランスは! って頭の中で突っ込みながらちょっと遠い目になる俺。

 小さく笑って首を振ってから一段目を取って二段目を見る。

 予想通り、二段目には今回は普通サイズのおにぎりがぎっしりと詰まっていた。やっぱりこれで余裕三人前。

 そして三段目には安定のデザートがぎっしり。

「さてここで問題です。これ全部で一体何千キロカロリーあるんでしょう」

 小さく呟き吹き出したけど、当然だよな。

 まあ、本来これは肉体労働である鉱夫達の為の腹持ちとカロリー重視の弁当だもんな。一般人である俺達が食べきれないのは当然……いや、多分今日のメンバーでこれを残すのは俺だけっぽい。

 やっぱりこの世界の奴らは、皆食う量がおかしいって!



 隣では、当然のように弁当箱を開けて大喜びのハスフェル達やリナさん一家を見て、近くの机に座っていたドワーフの鉱夫達が揃って大笑いしていたよ。

「大きい兄さん達も、エルフの皆さんも、しっかり食ってくれよ!」

 誰かの大声に、ハスフェル達がサムズアップを返すので、俺ももちろん一緒にサムズアップを返した。そして草原エルフ三兄弟が、揃って満面の笑みで拳を突き上げる。

「おう、これを楽しみにいつもツアーに参加してるんだぞ〜〜!」

「鉱夫飯最高〜〜〜!」

「もちろん残さず頂きま〜〜〜す!」

 大声で返事をした三人に、食堂中が大爆笑になってたよ。

 いやいや、俺は悪いけど絶対残すよ。

 そして机の上では三段目の弁当箱を見たシャムエル様が、それはそれは大はしゃぎで大きなお皿を取り出して嬉々として飛び跳ねてステップを踏んでいたよ。

「ええと、これはまずはシルヴァ達にお供えだな」

 小さくそう呟いて笑った俺は、収納していた祭壇用の敷布を取り出して机に敷いて、そこに鉱夫飯を並べた。

 一応水は用意してくれてあったので、それも一緒に並べておく。

「今日は皆で、鉱山見学に来てるんだ。暴走トロッコのおかげで午前中で若干寿命が縮んだ気もするけど、なんとか無事に昼飯の時間になったよ。午後も無事に乗り切れますように」

 多分見ていただろうけど、一応報告しておかないとな。

 そっと手を合わせていつもの収めの手が頭を撫でるのを待ってから顔を上げる。

 現れた両手が、嬉々として鉱夫飯を順番に撫でてまわり、弁当箱を順番に両手で持ち上げてから消えていくのを見送った。



「それでどれだけ食うんだ?」

 敷布を片付けた俺は、まだステップを踏んでいるシャムエル様に小さな声で尋ねる。

「ここに入れてください! おにぎりとお肉いっぱい! デザートは後でもう一回貰います!」

 どう見てもさっき持って踊っていた時よりも大きなお皿を出されて、苦笑いしてお皿を受け取る。

「では、おにぎりを一個……二個?」

 うんうんと頷くのを見て、もう一つ乗せてから豚肉は大きめのを丸ごと一枚入れてやる。ゆで卵も二個、つまり卵一個分取って肉の横に並べる。

「ウインナーは?」

「半分ください!」

 手で切る振りをするので、ナイフで半分に切って大きい方を乗せる。ちなみにアスパラもどきはいらないらしい。いっぱい食っても良いから野菜も食べなさい。

「はいどうぞ」

 山盛りになったお皿を渡してやり、俺は、弁当箱の蓋をお皿代わりにしておにぎり三個と豚肉一枚、半分に切ったソーセージを取り出す。ゆで卵は半分だけ取り、アスパラもどきは全部取っておく。

 フォークはついてるんだけど、これはお箸で食べたいのでマイ箸も取り出してそれを使う事にした。

 予想通りに豚肉はてり焼き風のかなり濃いめの味付けになってた。これはご飯が進みそうだ。

 顔を上げてみると、他の皆も大喜びでガッツリ食べてたよ。

 いやあ、やっぱり食う量がおかしい。



「ああ、デザートまで辿り着かないって」

 取り出した分でほぼお腹一杯になった俺は、小さなため息を吐いて三段目の弁当箱を見る。

 真ん中に四角いチョコレートケーキがどんと入っていて、その周りにも焼き菓子がぎっしり入っている。前回はガトーショコラみたいな真っ黒のシンプルな焼き菓子だったんだけど、今回入っていたのは何と、チョコレートクリームを上部全面に絞った生ケーキだったのだ。

「この敷紙を引っ張って持ち上げればそのまま取り出せるわけか。へえ、これはちょっと俺も食べてみたい」

 当然さっき渡した分は全て完食して、俺がデザートを取るのを待っていたシャムエル様が、これまた嬉々として飛び跳ねながらお皿を振り回している。

「はいはい、ちょっと待ってくれよな。これは俺も食ってみたいから半分こな。焼き菓子は好きなだけ取ってくれて良いぞ」

 そう言って、取り出したナイフでケーキを半分に切る。

 汚れたナイフは、そのまま鞄に入れれば合体したアクアとサクラが一瞬で綺麗にしてくれたよ。

「じゃあ、これとこれとこれとこれとこれとこれとこれをください! あとクッキーも全部一枚ずつください!」

 そう言いながら、目を輝かせたシャムエル様が次々に弁当箱に並ぶ焼き菓子を指差していく。

 俺にわかるのはマドレーヌとカップケーキだけで、あとは平たいアーモンドがぎっしり並んだのとか、パイっぽいのとか、刻んだフルーツが入ったパウンドケーキみたいなのとか、とにかく前回同様色々入ってたよ。

「了解。要するに全部一個ずつなわけだな」

 若干呆れたようにそう言い、笑いながら言われた通りに一つずつ一通り取り出してお皿に並べてやる。クッキーは俺も一枚だけ取り出し、三種類入っていたので一枚ずつ一緒に並べた。

 ちなみにクッキーは定番のバニラっぽいのと、多分ココア味とジャムが乗ったのだった。俺が取ったのは定番のバニラ味だ。

「はいどうぞ。腹が痛くなったなんて言わないでくれよな」

 目の前に置いてやり、当然のようにチョコケーキに頭から突っ込んでいくシャムエル様をみて和みつつ、俺も自分のケーキを食べ始めたのだった。

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