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賑やかな夕食とデザートの大問題

「うわあ、この赤ワイン煮、めちゃめちゃ美味しい」

「こっちの白いシチューも最高だぞ。中に入ってるこれも、野菜で肉を包んであるんだけどめっちゃジューシーで柔らかいんだ。口に入れたらとろけるぞ」

「本当だ。ううん、いつもながらケンさんの作る料理は本当に美味しいですね」

 双子が嬉々としてシチューを食べている横では、アーケル君も満面の笑みで一口大に切った白いロールキャベツの上に、赤ワイン煮の肉を乗せて茶色のシチューを混ぜながら食べている。味が混ざるとこれまた濃厚になって美味しいよ。

 ちなみに俺は、二色になったシチューに時々ご飯をスプーンですくって入れて絡めて食べてるよ。お行儀悪いけど、これがまた美味しいんだよな。

「どっちもなかなか美味しく出来たよ。これはロールキャベツっていうんだ。煮込むスープによって味がガラッと変わるよ。味の種類も色々と他にも仕込んでるからお楽しみに」

 俺もロールキャベツを食べながらそう言うと、何故か全員から拍手されたよ。ハスフェル達も野菜はあんまり食べないけど、どうやらロールキャベツは気に入ってくれたみたいだ。



「それで、一体全体何がどうなってお前が魔獣使いになったんだよ!」

「そうだぞ、詳しい話を聞かせろって!」

 アーケル君の左右に座ったオリゴー君とカルン君が、赤ワインをぐいっと飲んでばんばんとアーケル君の背中を叩いている。

「痛いって、叩くんじゃねえよ」

 文句を言いつつもなんだか嬉しそうなアーケル君が、俺達も一緒にカルーシュ山脈の奥地へ狩りに出かけ。リナさんと一緒に途中でまずはピンクジャンパーをそれぞれテイムした事。それからスライム達をテイムした事。そしてグリーンフォックスやリンクスをテイムした時の一部始終を面白おかしく実況中継さながらに、身振り手振りまで交えて詳しく話して聞かせた。

 その際に、俺の従魔のセーブルやヤミーをテイムした時の話が出て、二人はもう途中からは涙ぐんでハンカチで何度も目元を拭いながら話を聞いていたよ。やっぱり草原エルフは涙もろかった模様。

 時折俺達も話に加わり、テイムした時の様子や他の従魔達の話なんかもしながら大いに盛り上がった。

 二人は、巨大化したピンクジャンパーのもふもふっぷりに揃ってノックアウトされたらしく、アーケル君に揃って縋り付いていた。

「頼むから、頼むから俺にもテイムしてくださ〜〜い!」

「俺も俺も! 俺にも癒しを〜〜〜!」

「ええ、どうしようかなあ」

 縋りつかれた腕を振り払いもせずに、赤ワインの空になったグラスを机に置くアーケル君。

「赤ワインくださ〜〜い!」

「「はい喜んで〜〜〜!」」

 どこかの居酒屋よろしく見事に返事が重なった二人は、机に置いてあった栓の抜けた赤ワインのボトルを引っ掴んだ。

「「はいどうぞ〜〜〜!」」

 これまた綺麗に揃った声と共に、左右からグラスに赤ワインがドバドバと注がれる。

「どわあ〜〜〜! こぼれるこぼれる!」

 まるでグラスにあふれそうなビールを注がれたサラリーマンみたいに、慌ててワイングラスに口を寄せてこぼれそうになったワインを飲むアーケル君。

 それを見て、ゲラゲラ笑ってる二人。俺達も一緒になって声を上げて大笑いしたよ。



「はあ、笑った笑った」

「いやあ、しかし改めて聞くと良い話だなあ」

 ハスフェルとギイが顔を見合わせてうんうんと頷き合ってる。

 確かに。特にリナさんがリンクスをテイムした時は、俺達まで一緒になってもらい泣きしちゃったもんなあ。

 俺も残りのビールをぐいっと飲み干して新しい瓶の栓を開けそうになってデザートの存在を思い出して慌てた。

「ああそうだ。待った待った。デザートの新作ケーキがあるんだけど、どうする? 腹一杯ならまたにするけど」

「大丈夫です!」

 即座に見事なまでに揃った返事が返ってくる。

 お前らなんでそんなに息ぴったりなんだよ。ハスフェル達はオリゴー君達とは初対面だろうが。



「まあ食えるってんなら出すよ。ほら、ひれ伏せ〜〜〜!」

 そう言って取り出したのは、さっき作ったばかりのモンブラン風マロンタルトだ。たっぷりのクリクリームがタルトの上に山盛りになってる。

「うああ〜〜〜なんですかその素晴らしい黄金色の山は!」

「うわああ! 絶対食べたい、間違いなく美味しいやつだ!」

 スイーツ男子のランドルさんとアーケル君の歓喜の雄叫びが響く。

「うわあ! 俺も貰っていいんですか!」

「ケンさん! お願いだから俺にも食わせてください!」

 しかも、モンブラン風マロンタルトの山を見たオリゴー君とカルン君が、なんと揃って歓喜の雄叫びをあげたのだ。

 二人もまさかのスイーツ男子だった模様。

「あはは、もちろん……」

 ケーキ用の刃渡りの長いナイフを取り出した俺は、食べていいよと言いかけて口籠る。しばらく考えてから、今いる人数を指を折って改めて数え直した。

「ええと、俺だろう、ハスフェルとギイとオンハルトの爺さん。それからランドルさん、リナさんとアルデアさんとアーケル君と……オリゴー君とカルン君……ええと、十等分ってどうすればいいんだ?」

 いつもは八等分にしていたんだけど、今回は二人追加になったから十等分にしないといけない。



「ええと、半分に切って、それを五等分。切れるかな?」

 困ったようにナイフを持って固まる俺を見て、スイーツ男子達はこの世の終わりみたいな顔で揃って両手を握りしめて俺を見つめていたのだった

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