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おかえりと再会

『おおい、そろそろ到着するぞ〜〜!』

 試食も終えて後片付けをしていると、タイミングよくハスフェルからの念話が届いた。

『おう、夕食は色々仕込んだのがあるからそれを出すよ。お菓子も新作があるから楽しみにな』

『『『よろしくお願いします!』』』

 三人同時の念話が届いて思わず吹き出す。

『了解、腹ペコって事だな』

 笑ってそう言い、笑った三人の気配が途切れたのを確認してからサクラを机の上に抱き上げてやる。

「ハスフェル達がもうすぐ帰って来るから、夕食の用意をしようか。この前作った赤ワイン煮、二種類あったはずだからグラスランドブラウンブルの肉のを出してくれるか。それからもう一つ、ロールキャベツのクリームシチュー。それからパンとご飯。あとはおからサラダと師匠のお惣菜なんかを出しておいてくれ」

「はあい、じゃあ順番に出すね」

 元気よくサクラが答えて、まずは大鍋を二つ取り出してくれる。

 俺はそれを受け取ってコンロに乗せる。こういった煮込み料理は、一度冷ましてからもう一回温め直すとコクが出るし味も良くなるんだよな。

「まずは取り出したお鍋を火にかけて、温め焦がさないように中火っと」

 コンロに火をつけてゆっくりとお玉でかき混ぜながら温めていく。

「ああ、クロッシェはもう戻っててくれよな。ランドルさん達が帰ってくるぞ」

「はあい、じゃあ戻りま〜〜す!」

 料理の間はアクアから出てきて一緒に作業をしていたレース模様のクロッシェは、絶対他の人たちに見つかってはいけない超レアなスライムだ。

 王都では懸賞金までかけられてるって言うから、無用な争いを避けるためにはハスフェル達以外には極秘にしてる。うっかり人に見られないように気を付けないとな。

 別にランドルさん達やリナさん達を信用していないわけじゃあないんだけど、秘密を知る人は少ない方が良いって思ってるからさ。



 その時、ノックの音がして俺は扉を振り返った。

 いつもならノックの音の後に賑やかなハスフェル達の声が聞こえるんだけど、それが無い。

「はい、どちら様ですか?」

 警戒しつつそう答えると聞き覚えのある声が聞こえた。

「オリゴーです。ああ良かった。ケンさんはいらっしゃった」

 笑ったオリゴー君の声が聞こえて安堵した俺は、そばにいたアルファに扉を開けてもらった。

「俺たちもここに宿を取ったんですけど、まだ誰も帰ってないみたいなんで覗きに来ましたよ。スライム達はいるって聞いたから」

 笑顔の二人が扉から顔を覗かせるのを見て、俺は笑ってあちこちに転がるスライム達を見た。

「ああ、入って入って、もうすぐ皆帰って来るからさ」

「失礼しま〜す」

 二人が興味津々って感じで入って来て、すぐ足元に転がっていたメタルスライムに目が釘付けになる。

「あの……これもスライムなんですか?」

「うわあ、こんな色のスライムって初めて見た。これってあの伝説のメタルスライムってやつじゃあねえのか?」

 オリゴー君の呟きに、同じく目を見開いたカルン君もそう言って呆然としている。

 ああ、確かリナさん達もそんな事言ってたな。

「そうそう。そいつらはメタルスライムだよ。ハンプール近くにメタルスライムの湧く場所があるんだ。ギルドには報告済みだから、別に秘密って訳じゃあない。ちなみにメタルカラーのスライムは必ず出る訳じゃあないけど、ジェムは色が違うんだ。ほらこれだな」

 アクアがこっそり出して渡してくれたラメ入りの小さなジェムを見て目を輝かせる二人。

「ええ、これって……」

 言葉も無くジェムに見惚れる二人をとにかくソファーに座らせ、俺は温め終わったシチューの鍋に一旦蓋をしておく。

「あの、ありがとうございました。貴重なジェムを見せてくださって」

 そう言って返してくれたので、ラメ入りジェムは一旦自分で収納しておく。

 その時、賑やかな足音が聞こえてノックの音が聞こえる。

「おおい、開けてくれよ」

 今日はギイの声だ。

「ああ、おかえり。アルファ、開けてやってくれるか」

「はあい、開けま〜す!」

 アルファが鍵を開けて扉を開くのを見て、また二人の目がまん丸になる。

「スライムは実はすごく賢いんだよ。教えればあれくらい簡単に覚えてくれるよ」

「へえ、そうなんですね。すごい」

 まだ呆然としているカルン君の呟きとほぼ同時に、ハスフェル達が部屋に入ってくる。そして当然リナさん一家とランドルさん、そしてそれぞれの従魔達も一緒に入ってくる。



「ええ〜〜〜! あれ全部ケンさんの従魔なんですか!」

「うわすっげえ! 一体どれだけいるんだよ!」

「はああ? なんで兄貴達がケンさんの部屋にいるんだよ〜!」


 カルン君とオリゴー君の叫びと、アーケル君の叫ぶ声、それからリナさんとアルデアさんの驚く声が響くのは同時だった。

 そりゃまあ、そうなるよな。

 笑った俺は、とりあえずもう一度シチューの鍋に火をつけたのだった。

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