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モンブラン風マロンタルト!

「ご主人、急に膨れてきてるけど、これでいいのかなあ?」

 追加で出してもらった栗を大鍋で茹でていると、ゼータが慌てたようにそう言って触手を高く挙げる。

「おう、今何回目だ?」

 砂時計は一回落ちるとだいたい10分くらいなので、ひっくり返した回数で時間がわかる仕組みだ。

「今、3回目の砂が半分くらい落ちてるよ」

 ゼータの答えに頷きつつオーブンを覗き込む。って事は25分くらいか。

 見てみると、何だかブワって感じに全体に持ち上がるみたいにして大きく膨れてきている。

「うん、これはフィリングが焼けて膨れてきてるんだな。へえ、こんな風になるんだ。タルトって、もっとぺたんこのイメージだったんだけど、違ったかな?」

 お菓子自体それほど詳しくないので、タルトと言われても何となくのイメージしかないから分からない。だけど、確かにちょっと膨れすぎの様な気がする。

「ううん、だけど分量も温度も指定通りだし、半分ちょいの時間しか焼いてないなら、多分まだ中は生焼けだろうしな。まあいいや、焦げるよりはましだろう」

 って事で焼け具合の様子を見つつ、もうちょい栗クリームを作る。量は、前回の倍量を仕込むよ。残ったら置いておけばいいしな。

 茹で上がった栗は、スライム達があっという間に皮を剥いてすりつぶしてくれたので、取り出した大鍋にマロンペーストを入れて他の材料と一緒に滑らかになるまで混ぜてもらい、火にかけて水分を飛ばしていく。

「これは火を使うから俺がやらなきゃ駄目なんだよな」

 焦がさない様に木べらでせっせとかき回し、ちょうどマロンクリームが出来上がったタイミングで時間ギリギリまで焼いたタルトをオーブンから取り出す。

「あれ、さっきよりも膨れ具合が大人しくなってる。ええと、これを冷やせばいいんだよな」

 金型ごと、来てくれたガンマに預けて冷ましてもらう。隣に並んだデルタには、熱々の栗クリームを鍋ごと渡して、これも冷ましてもらう。



「ご主人大変です! めっちゃ凹んで平らになっちゃいました!」

 焦った様なガンマの叫びに、笑ってぷるぷるになって震えている紋章の辺りを撫でてやる。

「ああ、それはスフレチーズケーキと同じで、冷めたらしぼんでくるから失敗じゃあないよ。もう冷めたか?」

 コクコクと頷いたガンマが、コソコソと申し訳なさそうにタルトを取り出して机の上に置いた。

「ああ、良い感じに平らになったじゃんか。よしよし、これなら栗クリームを絞れるな。大丈夫だぞガンマ。これで正解だ」

 嬉しそうにそう呟くと、もう一度ガンマを撫でてやる。

「良かった〜〜〜、じゃあこれで良いんだね!」

 嬉しそうにくるっと回って一回跳ねたガンマは、そう言って皆のところへ跳ね飛んでいった。

「ご主人、これも冷めたよ!」

 デルタが得意気に栗クリームの入った鍋を出してタルトの横に置く。

「おお、ご苦労さん。それじゃあ仕上げをやってみるか」

 デルタも撫でてやってから、大きく深呼吸をした俺は金型に入ったままのマロンタルトをそっと持ち上げた。

 まずはマロンタルトを金型から外してお皿に乗せる。

「よし、この金型から外すのは上手くなったぞ!」

 お皿に取り出したマロンタルトは、もうそれだけで美味しそうだ。ぎっしりと並べた甘露煮は、頭を少し出しているくらいまで沈んでいて、逆にそれがまた美味しそうだ。



「良いねえ、じゃあこれにたっぷりと栗クリームを絞るぞ!」

 そう言って取り出したのは、三角の分厚い布製の袋だ。

「ええと、師匠の説明によると、使い始めの時にここの先を切って中から口金を入れるんだって書いてある。どこで切るんだ?」

 しばらく袋を広げたり中を見たりして納得した。

「ここだな。この先の2センチくらいの位置で切ればいいのか」

 少し考えて、買ったナイフを取り出して切ってみる。

「おお、めっちゃ簡単に切れた。すっげえ切れ味だな」

 思った以上の切れ味に感心しつつ、軽く拭って鞘に収める。

「一応、これ綺麗にしてくれるか。もし汚れてたら駄目だからさ」

 横で待ち構えていたクロッシェが、袋を飲み込んですぐに取り出してくれた。

「大丈夫で〜す! 別に汚れてませんでした〜!」

「そっか、ありがとうな」

 クロッシェも撫でてやってから、袋の中に穴の空いた口金を入れる。

「おお、なんかいい感じになったな。じゃあここに栗クリームを入れて絞ればいいんだな。出来るかなあ」

 若干不安もあるが、まあ何とかなるだろう。

 大きめのスプーンで栗クリームをすくって袋の中へ入れていく。

「めっちゃ入るんだけど、どれくらい入れればいいんだ?」

 加減が分からないので、半分くらいまでで止めておく。

「で、上から押し込むみたいにして先まで入れて、袋の端はねじって止めるのか。なるほどなるほど」

 師匠のレシピの道具の扱い方のところに、これの詳しい使い方が載っていた。

「ふむふむ、このねじった部分を止めるみたいにして持って、握れば中身が出てくるのか。よしやってみよう!」

 ちょっと工作してるみたいな気分だ。

 お皿に乗せたマロンタルトの真ん中部分に試しにちょっと絞ってみる

「おお、案外力がいるんだな。でもいけそうだ!」

 ゆっくりと握りながら、端から縁に沿って大きく縁を描くみたいにして絞り出していく。

「うおおお〜〜〜これ面白え! めっちゃ絞ったら出てくるじゃんか!」

 何だかハイテンションになり、体ごと円を描くみたいに動かしながらどんどん絞っていく。

「中身が無くなれば、袋を開けて追加すればいいんだよな」

 半分ちょいくらいで袋の中の栗クリームが無くなったので、追加の栗クリームを入れてまた絞り始める。

「豪快に真ん中側を山にしてみよう。もう一周すればいいな」

 とりあえず一面に渦を巻いた栗クリームが絞り終わる。だけどまだまだあるので二段目に突入だ。

 鼻歌まじりに絞り出す作業を続け、真ん中部分が山になる様に少しずつ円を小さくして絞り出せば完成だ。



「よっしゃ〜〜〜〜〜! 栗たっぷりモンブラン風マロンタルトの出来上がりだ〜〜〜!」

 予想以上に上手く出来上がったそれを見て、大満足の俺はガッツポーズでそう叫んだ。

 そのモンブラン風マロンタルトのお皿の隣では、シャムエル様も大興奮状態で高速ステップを踏んでいたのだった。

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